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コロナウイルス・パンデミックの忘れられた犠牲者の援助

2020年3月27日、バングラデシュのダッカのサダーガット・ローンチ・ターミナルでCOVID-19の予防策として手を洗う子供。(APの写真)
2020年3月27日、バングラデシュのダッカのサダーガット・ローンチ・ターミナルでCOVID-19の予防策として手を洗う子供。(APの写真)
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27 May 2020 10:05:36 GMT9
27 May 2020 10:05:36 GMT9

自分たちより恵まれない人たちへの思いやりは、私たちの世界で全てがうまくいっているときには簡単に見せることができる。もちろん、現在のところ、世界中の数百万の人々は全てがうまくいっておらず、最も裕福な国のいくつかは、最悪の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を目の当たりにしており、彼らの分以上の、これまでに確認された世界の感染者約560万人と死亡者35万人の苦しみを味わっている。今回だけは、先進国の市民は、その名に値する第一世界の問題を抱えている。

そのため、ユニセフの73年の歴史の中で最大の訴えである「Save Generation Covid 」へ資金と支援を集めることは容易ではないとユニセフ(国連児童基金)は強烈に認識している。この訴えは、今後6カ月の間に世界中で毎日、最大6000人の子供たちが死亡する可能性があるという衝撃的な予測を受けたものだが、コロナウイルスによるものではなく、世界の最貧国の一部でパンデミックが医療システムに及ぼす影響の直接の結果としての予防可能な原因によるものだ。

国連は、各国政府およびビル&メリンダ・ゲイツ財団やドバイのモハメッド・ビン・ラシード・アル・マクトゥーム・グローバル・イニシアチブズといった慈善団体と協力し、過去数十年の大半を費やし、さまざまな医療処置を通して世界の貧困地域における子供の死亡率を下げることに成功した。子供の11人に1人が5歳の誕生日を迎える前に死亡していた1990年と比べると、5歳未満の死亡率は半分以下に下がっている。それが偉大な業績であることは確かだが、やるべきことはまだたくさんある。2018年には子供の26人に1人が5歳になる前に死亡した。

ユニセフによると、世界が現在直面している差し迫った厄災は、コロナウイルスが脆弱な医療システムに与える影響により、予防可能な子供の死亡を減らすための数十年にわたる進歩が振り出しに戻る恐れがあるということだ。

毎年、500万人の5歳未満の子供が回避可能な原因で死亡している。この恐ろしい数字に、今後12ヶ月でさらに250万人の子供の死亡、さらに5万6700人の出産時の女性の死亡を加えることができる。この厳しい現実を突きつけるような予測は、メリーランド州にあるジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究者たちが先週、『ランセット・グローバル・ヘルス』誌に発表した研究結果に基づいている。研究者たちは、コロナウイルスがさまざまな標準的だが極めて重要な医療処置からどれだけ注意をそらしているかを評価しようとしていた。その範囲は、妊娠・出産中のマラリア予防・治療から新生児敗血症や赤痢などの疾患を治療するためのワクチン接種や抗生物質の有効性にまで及んでいる。

彼らは、アフガニスタン、エジプト、インド、イラン、イラク、ヨルダン、レバノン、パキスタン、パレスチナ、シリア、イエメンなど、118の中低所得国を対象に3つのシナリオを作成した。これら118カ国では、妊産婦と子供に不可欠な医療処置が9.8~51.9%削減されていたことを彼らは発見した。急性栄養失調は10~50%増加した。「最も深刻でない」シナリオでは、6カ月間でさらに25万3500人の子供が死亡し、さらに1万2200人の妊産婦が死亡することになると彼らは結論づけた。最悪のシナリオでは、さらに120万人以上の子供と5万6700人の母親が死亡する。

この報告によると、これらの推定値は「仮の想定」に基づいているものの、「日常的な医療が中断され、入手する食料が減少した場合、避けられない衝撃や医療システムの崩壊、あるいはパンデミックへの対応における意図的な選択の結果、子供と母親の死亡数の増加は壊滅的なものになる」ことを示している。

しかし、それはCOVID-19による保健・社会医療システムのひっ迫のために最も弱い立場にある人々がないがしろにされている発展途上国に限ったことではない。先週発表された英国の国家統計局の資料によると、5月1日までの5週間にイングランドとウェールズの介護施設、個人宅、ホスピスで記録された3万件の超過死亡のうち、新型コロナウイルスによるものはわずか3分の1だった。つまり、COVID-19によってこれまでに3万5000人以上の命が奪われている英国だけでも、このパンデミックが、彼らが受ける医療の水準に影響を与えなければ、さらに2万人の人々がより長く生きた可能性がある。

コロナウイルスとの闘いが世界中で繰り広げられているにかかわらず、ユニセフは各国政府と個人に対し、寄付金を出して6つのポイントからなる「行動計画」を支援するよう呼び掛けている。これにより、「世界の最貧国が、必要不可欠な保健サービスの提供を保護しつつ、パンデミックと闘うことができるようにするための持続可能で強力な保健システム」を財政難の諸国が構築できるようになる。

コロナウイルスが脆弱な医療システムに与える影響により、予防可能な子供の死亡を減らすための数十年にわたる進歩が振り出しに戻る恐れがある。

ジョナサン・ゴーナル

ユニセフは、弱い立場にある子供たちの健康を維持し、十分な食事を与え、水と適切な衛生設備と衛生状態を供給し、学習を続けられるようにすることが不可欠だと述べている。家族は「子供の必要と治療を賄うために」支えられ、子供は暴力、搾取、虐待から守られなければならない。難民や移民の子供たちや紛争の被害を受けている人々は特に弱い立場にある。

学校が休校中で、いつもは学校給食に頼っている143カ国の約3億7000万人の子供たちが他の供給源に頼らざるを得なくなっている。4月14日の時点で、37カ国の1億1700万人以上の子供たちが、パンデミックによって予防接種運動が停止しているため、はしかの予防接種を受けていない可能性がある。これらは、コロナウイルスによって引き起こされた大変化の2つの例にすぎない。先進国の人々は、自分たちの「新たな日常」がどのようなものかという混乱や恐怖と闘う一方で、思いやりと人情という、さらなる試練にも直面している。

ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長が言うように、我々は皆、自分自身や愛する人の安全を守ることに目を向けているが、「数百万人の子供たちが、このパンデミックの忘れられた犠牲者となるおそれがあることも忘れてはなりません。彼らの世界が明日どのように見えるか、そして彼らの未来が最後にはどのように見えるかは、今日の私たちの責任でもあります」。

  • ジョナサン・ゴーナルは英国のジャーナリストで、以前はThe Timesに在籍し、中東に住んで働いた経験があり、現在は英国に拠点を置く。著作権:Syndication Bureau
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