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原油価格が5月に見事な回復を見せた後、この先市場をどう進むべきか

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02 Jun 2020 11:06:53 GMT9
02 Jun 2020 11:06:53 GMT9

5月はウェスト・テキサス・インターミディエイト(WIT)にとって、まさにベストな月だったと言うことができ、5月1日から29日にかけて原油相場は80%近く上昇した。そして同時期に、ブレント原油も43%上昇した。

これらは気持ちが浮き立つ数値ではあるが、先走りは禁物だ。WTIは5月の先物取引が4月20日に満期になった際に、マイナス37ドルという値を付けたことを忘れてはいけない。そしてブレントが1月初旬にバレル当たり70ドルで取引を終えことも。6月1日の中央ヨーロッパ時間正午、WTIはバレル35.32ドル、ブレントは37.97ドルだった。

この歴史的な原油価格の上昇は、4月に日量3000万バレル近く落ち込むという前代未聞の需要低迷を受けてのものだ。これは1月需要のマイナス30%に匹敵する落ち込みだった。

4月に、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国と非加盟10カ国からなるOPECプラスが、需要崩壊への対処として日量970万バレルの減産を実施した。この決定の前には、OPECプラスの劇的な交渉行き詰まりがあり、サウジアラビアとロシアが減産で合意に達することができずに市場シェア争いも起きていた。

ともあれ、主要経済国の多くが新型コロナパンデミックによるロックダウンから徐々に抜け出しつつあるなか、市場は再びバランスを取り戻し始めている。取引業者たちは中国の需要を2019年5月レベルに近いと見積もっている。ロシアの輸出業者たちも欧州の需要が回復しつつあると見ている。

これを受けてOPECプラスはまた議論に入り、6月10日にテレビ会議が予定されている。国によっては予定を6月4日に前倒ししたいと希望したりもしている。

サウジアラビアは、アラブ首長国連邦やクウェートとともに4月に同意した量に加えて日量120万バレルの追加減産を発表しており、同国はOPECプラスが6月30日以降も現在の減産を延長すべきとの立場だという。現在の予定では、6月30日まで今のレベルの減産が続き、それ以降は12月31日まで日量り770万バレル、2021年4月30日までは日量580万バレルの減産ということになっている。

ロシアの原油業界は、とりわけ中国と欧州の需要回復が予想より早まっているのを見て、現在の減産を6月30以降も延長することには懐疑的だと言われている。灯油の需要はこれらの見通しから除外されるべきである。航空移動は自動車による移動や、とりわけ貨物輸送などよりも回復に時間がかかることが予想されるからだ。

OPECのモハンメド・バルキンド事務総長は、減産を称賛するとブルームバーグやロイターに語り、過去2週間のOPECプラスが順守した減産量と非OPEC諸国の減産量は併せて日量1700万バレル超であったと述べた。

それはそうとして、ロシアの生産業者や米国のシェール業者からはすぐにでも増産したいとの圧力がある。その根拠は明白だ。もし油井を4カ月から6カ月以上閉鎖すれば、再開コストは最高6割増加するのだ。

そこで、OPECプラスの論争は一巡して元に戻っている。サウジアラビアは、日量970万バレルの減産をさらに2、3カ月延長して市場バランスを確実に起動に乗せるべきだという尤もな点を突いている。ロシアはそのような延長をすれば業界のコストは嵩むとして尤もな点を突いている。

減産を縮小させる前に、市場バランスをもっと回復させたほうがよい。とりわけ米国のシェール業界に目を向ければ、WTIが40ドル以上の値をつけたならシェール業者たちはすぐにでも油井を稼働させたい誘惑に駆られることだろうが、そうなれば再び原油価格は下落に向かうことになる。

長い目で見れば、市場バランスの回復に向けて慎重に取り組むほうが正しいやり方といえるだろう。とりわけ、景気回復のペースや形については何も見通せないのだから。それはV字なのかU字なのかW字なのか、はたまたWがいくつか続くのか。後者の可能性が皆無でない限り、慎重すぎて失敗するほうがまだ賢明といえる。

  • コーネリア・メイヤーはビジネスコンサルタントであり、マクロエコノミストであり、エネルギー問題専門家でもある。ツイッター:@MeyerResources
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