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「OPECプラス」の「Zoomによるコミュニケーション」での真意

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10 Jun 2020 10:06:03 GMT9
10 Jun 2020 10:06:03 GMT9

月曜日に行われた「OPECプラス」の記者会見は、より詳細な分析に値する「ズームによるコミュニケーション」の練習だった。

世界全体で実施されている渡航規制により、閉ざされた部屋の中で決定された事項について会議の主要人物が報道陣に向き合い説明するという従来の記者会見に代わり、今回の記者会見はオンラインで開催された。

そのため、記者会見の内容は、週末の会議で決定された政策の背後にある根拠の繰り返しが大半を占めた。「OPECプラス」の公式イベントとして、記者会見はサウジアラビアのエネルギー相を務めるアブドゥルアジズ・ビン・サルマン皇太子とロシアのアレクサンダー・ノワク相の2人の閣僚により、OPECの支援を受けて開催された。

1 時間に及ぶ質疑応答では、合意の中心的なメッセージが繰り返し説明された。その内容は、4月に合意された歴史的な減産量がさらに1カ月延長されること、「OPECプラス」の加盟国(メキシコはひそかに無視された)が960万バレルの目標を遵守することに厳格な重点が置かれること、そして「OPECプラス」の監督機関として、閣僚合同監視委員会(JMCC)が、加盟諸国が(合意から)逆戻りしていないか厳しい目で監督すること、であった。

最も興味深いニュアンスが出てきたのは、おそらく記者会見の閣僚らの発言が台本から外れたときだっただろう。例えば、ノワク大臣は、「OPECプラス」政策の目的は「折り合いがつく地点を見つけ、その周辺で安定させること」だと述べたが、これはロシアの経済計画が規定する1バレルあたり43ドルの水準に価格を近づけたいという意味だとの見方もあった。

しかし、サウジアラビアの大臣が、石油業界を襲った史上最大の危機からわずか数週間後、サウジアラビアがどのように考えているかを示す台本から外れた一連の発言が、記者会見の話題をさらったことは疑う余地はない。

記者会見の最後、100人ほどのジャーナリストらに対し、石油ビジネスの報道において少しバランスを取ってほしいという真摯な要望があった。「疑いの余地を与えてほしい。皆さんが正しいと信じることを報道する権利は尊重するが、それが唯一の話ではない。」と皇太子は述べた。今後それがどうなるかはまだ不明だ。

また、「OPECプラス」が合意の完全なる遵守をどのように担保するのか、という質問に対して、「我々は外交官ではない。我々は石油屋だ」という率直な余談もあった。特別な要望や状況に関係なく、たとえ加盟国の関係に波風を波立たせるリスクがあったとしても、サウジアラビア大臣は明らかに「OPECプラス」加盟国が4月の合意内容を遵守することを求めている。

しかし、アブドゥルアジズ皇太子が、ストレスの多い時代に産業を運営する方法を中央銀行の銀行員から学びたいと示唆した時が、「OPECプラス」が今後どのように物事を進めていくのかについて、最も明確に示した時だろう。「中央銀行の銀行員は2008年に素晴らしい仕事をし、現在も素晴らしい仕事をしている。」と述べ、連邦準備制度理事会で長年議長を務めたアラン・グリーンスパン氏は彼の 「ヒーロー 」であると付け加えた。

彼が、量的緩和、財政刺激策、ジャンク債購入プログラム、あるいは世界中の中央銀行が今回の世界的大流行の危機による影響に対処するために使用してきたその他の手法を指しているとは考えにくい。

むしろ、中央銀行が少なくとも月に一度、金融と経済政策を調整した方法に彼は言及していたようだ。JMMCによる監督はおそらく、綿密で詳細な経済データの分析を通じて、政府の危機管理政策の方向付けをするという、連邦準備制度理事会やイングランド銀行の月次報告書の要素を取り入れたものになるだろう。

このアプローチについては、十分に言及する必要がある。過去の「OPECプラス」合意に対する批判の一つは、大規模な減産の合意後、それらの合意がどのように実施され、監督されるかについてはほとんど注目されていなかったということである。

「中央銀行」への言及は、サウジアラビアが「OPECプラス」合意における減産の遵守と実施のために、より厳格な体制の採用を望んでいることを明確に示していた。「OPECプラス」のウェブ上での記者会見後、あるコメンテーターがこう述べた。「新たな保安官が現れた」と。

・フランク・ケインは、ドバイを拠点に活動する受賞歴のあるビジネスジャーナリストである。ツイッター:@frankkanedubai

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