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土地争奪の大失敗によりネタニヤフの無能力が明るみに

イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムの外務省で週一回の閣議を開催する。(ファイル/ロイター)
イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムの外務省で週一回の閣議を開催する。(ファイル/ロイター)
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13 Jul 2020 08:07:16 GMT9
13 Jul 2020 08:07:16 GMT9

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のような熟練した政治家は、実現しない期限を設定するより賢くあるべきであり、結果として無能さと判断力の欠如を証明した。占領下のパレスチナ西岸一帯の土地併合プロセスを開始する7月1日の大失敗は、政治生活の晩年にネタニヤフ首相が判断を完全に失い、政治的能力の欠如を痛々しくさらすさらなる証となった。これに加えて、氏があまりにも長く権力を維持し、汚職裁判にかけられていること、短期的個人的利益のために成された遠大な戦略的決定の暗い展望が全て明らかになった。

ネタニヤフ氏がこの危険で無謀な併合計画を推進する動機が何なのかほぼ理解しがたい。それは氏の政治的キャリアの晩年に遺産を築く試みなのか?氏の極右の父親に由来する根深いイデオロギーなのか?権力にしがみつく必死の試みで自身の基盤を結集することを意図しているのか?あるいは、自身に対する詐欺、贈収賄および背任の告発が非常に重大だと知っているリーダーによる別の迂回戦術なのか?

少なくとも最初はヨルダン渓谷を含む西岸のおよそ3分の1の併合に関するネタニヤフ氏の主張では、これらすべての要素が確実に影響しているが、氏が必死に権力を維持し、裁判の操作を試みる必要性がおそらく他よりも優先的に計算されている。しかし、イスラエルが現在これらの領域に「主権適用」と呼びたがるものの開始期限を設定することは誤認認され、それを実現していないことにより、ネタニヤフ首相はイスラエルとその国際政治的立場を不安定な立場に置いた。結局のところ、政策立案者が強く重視した政策が失敗した証は、最も熱心な支持者であるはずの人々を含む各方面から批判が集まり、詳細が欠如しており、支持者がその実施の意向を示さないことである。結果として、政策目標を達する可能性をまったく損なっている。

ネタニヤフ氏はおそらく誇大妄想の中で、自身はビジョンと勇気を持ち政策推進をしており、他者が最終的に氏の輝きと勇気を認め感謝することになる、と反論するかもしれない。この妄想は併合計画にはまったく適用されず、それを計画と呼ぶことさえも無理がある。期限は過ぎたが(特にこの場合、期限は必要以上に恣意的である)、イスラエルが提案した土地取得の範囲は不明のままである。明確な地図はなく、誰も(おそらく首相とその側近顧問でさえ)提案された国境について確固たる知識を持たないまま、全体の論争が行われている。それは、少数のユダヤ人入植地、または西岸の最大30%の併合を意味する可能性がある。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のような熟練した政治家は、実現しない期限を設定するより賢くあるべきであり、結果として無能さと判断力の欠如を証明した。

ヨッシ・メケルバーグ

占領の「合法化」は、ドナルド・トランプ大統領の検討不足の「繁栄のための平和」計画の派生物であるため、期限設定前に最低限のことをネタニヤフ氏が行うべきだった。壮大な発表を行い、それを連合合意の一部として課すには、ワシントンと調整するべきだった。議論の余地なく、米国とイスラエルの両政権は不安定で戦略的スキルが非常に不足しているが、中東問題に関するトランプ大統領と顧問との約4年間の対応を受け、ネタニヤフ首相は、大統領が国際社会の他者のほぼすべてを動揺させる可能性を知っていた。氏は、国際社会のほぼ全体を混乱させると自身が知ることを公約する前に、米国とともにすべての基本条件を理解しているべきだった。

占領地併合は国際法を大胆に違反し、道徳的に不快である。この特定の挑発行為は、イスラエル・パレスチナ紛争の平和的解決の見通しを妨害しており、明確な期限を設けてそれを満たさないことは、イスラエルにとって世界最悪の状況を表す。それは、イスラエル首相が、あらゆる愚行で適切に計画さえできない不法な土地争奪の卑しい意図を抱く人物であり、また、国際的圧力の影響を受けやすく、このような決定的な動きを主要な国際的同盟国または連合パートナーのどちらとも調整できない人物であることをさらけ出している。

さまざまな理由で、反併合連合は、西岸地区の完全な併合以外には満足しない断固たる入植者、それを自分たちの土地の盗難と正論を唱えるパレスチナ人、また、それは二地域の解決策への直接的困難であり、この地域とその他を不安定にさせ、国際法と制度の役割に対する露骨な攻撃であると受け止める国際社会の大部分を取り囲んでいる。イスラエルとパレスチナ人、ヨルダン、その他地域諸国および国際社会の大部分との関係における影響は、イスラエル社会の分裂深化は言うまでもなく、イスラエル政府に対する証明として、国益に回復不能な損害を与えている。

ネタニヤフ氏は、3度連続の選挙での勝利に必死となり、ヨルダン川西岸の一部併合を公約した。氏はそれがライバルから区別し、自身の基盤を強化すると信じていた。失敗した場合、氏は間違いなく責任を否定し、「愛国心のない」左翼と彼らのメディア同盟がイスラエルに対して国際社会を動員したことを責めるだろう。建前では、ネタニヤフ氏を汚職の裁判にかけたことにより、氏を犠牲にし迫害したのと同様に、である。結局のところ、ネタニヤフ氏にとっては、国への最善ではなく、自信を権力の座に置いて刑務所から守るための最善が重要なのである。

  • ヨッシ・メケルバーグは、国際関係と社会科学プログラムの責任者を務めるリージェンツ大学ロンドンの国際関係の教授である。また、チャタムハウスのMENAプログラムの準フェローでもある。氏は国際的書面および電子メディアへの定期的な寄稿者である。Twitter@YMekelberg
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