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一時的とはいえ紙一重のバランスを保つ石油市場

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18 Aug 2020 07:08:39 GMT9
18 Aug 2020 07:08:39 GMT9

石油輸出国機構(OPEC)の合同閣僚監視委員会(JMMC)が、OPECプラス(OPECとロシアを中心とした非加盟の10カ国で構成された連合)による歴史的な減産の遵守状況を確認するため今週末に開催され、需給の見通しが注目されることとなる。

一方で先週発表された国際エネルギー機関(IEA)の8月の石油市場レポートでは、今後年内はわずかに供給過剰になるというデータが出ており、関係者は安堵している。しかしもう一方で、需要の若干の下方修正がいくらか気になるところではある。IEAは2020年の石油需要を1日9,190万バレル(bpd)と予測しており、1ヶ月前と比べて14万bpd減となっている。同機関は2021年の予測を24万bpd引き下げ、9,710万bpdと同様に縮小している。これらの予測は、2019年の約1億bpdの石油需要に対して立てられている。

先月JMMCは、4月にOPECプラスが合意した当初の減産スケジュールを遵守することが正しい方向性であるとの見解を示し、減産規模を960万bpdから770万bpdに縮小した。4月の合意によって、12月までこの水準での削減が実施されることが見込まれている。第二四半期に減産割り当ての履行が十分でなかった国(イラク、ナイジェリア、カザフスタン)が第三四半期にこれを埋め合わせることで合意したため、減産分のかなりの割合が補われることとなった。これらの取り決めは9月まで実施され、事前に合意された減産の緩和による供給量の増加を和らげることとなる。市場がわずかに供給不足の状態である限り、この取り組みはうまく機能するだろう。

IEAのレポートが示唆するように、石油産業は困難を脱したわけではない。同機関は主に4月には80%減、7月でもいまだ67%減となっている航空機利用について懸念している。

米国エネルギー情報局(EIA)は3週連続で原油在庫の減少を記録した。メキシコ湾の原油在庫は1年前に比べて25%も増加している。ガソリンの需要もパンデミック前の水準に近い状態まで戻った。これらは前向きな数字であるが、世界中で再度流行している新型コロナウイルスの状況や第二波への恐れに対し懸念は残る。

消費者の行動を見ると、先週に突然フランス、オランダ、マルタを隔離リストに追加した英国のように、人々は急に隔離リストが更新される事を恐れて国境を越えることを警戒している。概して国境を越えるヨーロッパの航空便に比べて、米国の国内線航空便は早めに再開される予定だ。現在ほとんどの人はウイルスに感染する事を恐れて自宅に近い場所への旅行を好み、できるだけ公共交通機関を利用しないようにしている。これはガソリン需要にとっては良いニュースであり、IEAの月次レポートでも強調されていたようにジェット燃料需要にとっては悪いニュースである。

中国の製油所の稼働率は、国有の製油所の整備が完了したため過去最高となり、中国経済がパンデミックから順調に回復していることをさらに示している。

全体的に見て、市場は大体(紙一重ではあるが)バランスが取れている。イラクやナイジェリアなどが以前の不履行を補う姿勢を貫く限り、JMMCは現在のOPECプラスの方針を継続しても問題ないだろう。9月以降、これらの国が補填スケジュールを終了した際には、OPECプラスはその時点での需給バランスを再検討する必要があるかもしれない。多くは主要市場でのパンデミックの状況に左右され、さらなるロックダウン措置が講じられれば需要に悪影響を及ぼすだろう。

JMMCに生産量の割り当てを行う権限はないが、推奨することは可能だ。サウジアラビアのエネルギー相のアブドゥル アジズ・ビン・サルマン王子が先月のJMMCの後に指摘したように、OPECプラスは新型コロナウイルスによる危機の際に通信技術を活用することを学んでおり、必要に応じてすぐさまオンラインで閣僚会議を招集する機会を得ている。その一方で、先月の減産遵守状況が気になるところではある。

先週、原油価格は今年初めて3週連続で上昇して取引された。月曜日の午前中、ブレント原油価格は1バレルあたり44.62ドル、WTIは1バレルあたり41.89ドルで終了した。

  • コーネリア・メイヤー:ビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、エネルギー専門家。Twitter: @MeyerResources
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