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安倍氏辞任の決断後の日本の行く末

2020年8月6日、広島の平和記念公園で1945年の原爆投下による犠牲者への黙禱を捧げている安倍晋三氏。(ロイター)
2020年8月6日、広島の平和記念公園で1945年の原爆投下による犠牲者への黙禱を捧げている安倍晋三氏。(ロイター)
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22 Aug 2020 10:08:32 GMT9

日本の首相、安倍晋三氏は今週に入って東京の慶應大学病院で健康診断を受けた。首相に対する健康不安がささやかれる中でのことになる。安倍氏は2012年に首相に就任し、日本の首相としては在任期間が最長だ。首相としては再任となる。2007年に1期目の政権を1年務めたあと、潰瘍性大腸炎に罹患していたことを明かしている。

したがって、仮に退陣ということになっても安倍氏にとっては初めてのことではないということだ。しかしながら前回安倍氏が首相を辞任した際の世界状況は今とは大きく違った。世界経済は瓦解する寸前だったのだ。現状では安倍氏は通常の職務については他の者に委任し、自身はみずからの健康状態や国政に専念しているように映る。安倍氏が職務を遂行できない、などといった報道はないけれども、万が一そうなった場合でも、財務相も務める副総理の麻生太郎氏が次期総選挙までの間一時的に代役を務めるといった展開となるはずだ。

とはいえ、次期政権を誰が継ぐことになっても、この4~6月期の記録的な日本のGDPの落ち込みの余波と取り組まざるをえなくはなる。今回は2008年の世界金融危機のときより以上のひどい落ち込みだった。

安倍氏が導入した「アベノミクス」という名の賛否両論の一連の経済改革により日本は前へ進んだ。が、新型コロナの感染拡大により経済は「元の木阿弥」となり日本政府も後ろ向きとなりつつあるといったように、その進捗は引っくり返されてしまった。加えて日本政府が対応しているのは、日本南部のかなりの部分を襲った洪水被害、近隣諸国とのやっかいな関係、不透明な日米両国の紐帯といったものだ。

新型コロナ感染症も日本に深甚な影響を与えている。2020東京五輪は延期となったし、工場の生産も相当程度中断している。東京ではどうやら第二波が発生したらしく、ウイルス罹患者数が急増している。

パンデミックとの戦いにおいては、安倍氏の旗色は明らかに悪い。社会経済活動の後押しのほうが優先されるため、公衆衛生を守るための効果的な予防対抗措置を取れずにいる。どこかで聞いたような話ではないか。感染拡大によるリスク、それにともない人間の健康におよぶ犠牲にも増して、経済の危機のほうが重大だ、と考えるような政府であるなら、世界中どこででも見られる戦略だ。重要なのは危機管理だ。安倍氏が時を置かずに総理を辞任でもするなら、迅速かつ大胆な意志決定がいくらかでもされる見込みもあろうが。

次期総理候補はいずれもすでに、いつでも代わりを務められるポジションに身を置きはじめている。外相の茂木敏充氏はシンガポール、マレーシア、英国への歴訪を通じ、次期総理候補として好評価を得ている。茂木氏は引き続き、新型コロナの感染拡大中も各国外相との対面での対話を重視しており、その交渉能力や実務能力についても声価が高い。とはいえ、こうした姿勢は安全面の懸念を無視しているとみる日本政界の重鎮や選挙民もいるかもしれない。元防衛相で安倍氏の政策には長らく批判的な石破茂氏も、実務能力に疑問はもたれていない。

いずれにせよ、日本の内外政策にとっては今後数か月が肝となるはずだ。とはいえ、はっきりしたことは言えない。安倍氏は来年まで政権を温存させることを決めるかもしれないし、あるいは内閣改造を思い立って新しい血と思考を閣内に取り込もうとするかもしれないし、さらに言えば急遽衆院を解散し総選挙に持ち込むという展開もありうる以上。

新型コロナウイルス感染症対策や東京五輪をめぐる問題は、しかしながら安倍氏の「掌中にある」ということは指摘しておいたほうがよいだろう。大会は来夏以降にさらに延期される可能性もあるし、日程に調整が加わることもありうる。いずれにしてもこうした大規模イベントとその参加者をどう日本が管理するかが鍵となる。目下の状況でこうした大会を主催することの困難さについては、安全性もにらみつつ熟慮されているところだし、大人数を動員するほかのイベントの取り扱いについても検討がされているところだ。

今後数か月を誰が舵取りするにせよ、困難な仕事とときには厳しい政策判断を迫られることに変わりはない。2021年9月には次期総裁選が予定されていることもあり、次なる動きは日本の政治動静にとって重要といえる。

安倍氏が来月にも辞任するかもしれないとなれば、日本を取り巻く地域内の緊張が高まるなか、その複雑な安全保障上の必須条件にもいくつか変化が及ぶこととなる。米国は中国への挑発を強めているうえ、香港の国家安全維持法、北朝鮮と韓国の緊張関係といったものも加えると、高まる緊張やきわめて攻撃的な文言のさいなむ難度の高い近隣諸国のただなかにいることを日本政府としても再認識することになる。そこへ新型コロナウイルス感染症だ。北東アジアの各国政府は自国をこの脅威から守るための負担がかかるため、事態はさらに悪化しているのだ。

何が起きるにせよ、今後数か月が日本の内外政策にとって重大となるはずだ。

シオドア・カラシック博士

この期におよんで米政権は安全保障を金目で測り、日本にとってことを難しくしている。新型コロナウイルス感染症がかくもはびこり当面は居座るものとみられているというのに、経済や貿易の分野でわざわざこんな政策を追求するのだから何をか言わんや、である。

日本政府が太平洋を越えた洋上作戦への貢献に関与することで日本の軍事活動が拡大していることもあり、日米関係はこの地域で重要な因素だ。日米共同軍事演習はインド洋-太平洋の戦域で継続中であり、このほど日米協力は60年の歴史を刻んだ。このことはまた、日米両国の関係を健全かつ前向きなものに保つ役にも立っている。が、政治の世界の現実はこれとは大違いなのだ。

安倍氏が退陣するとなると、今後日本は自問の時代へ入る。一筋縄で行かぬ安全保障環境のただなかで、日本は、自国とその経済再生の行く末にあるものは何か、しかと問うこととなる。

  • シオドア・カラシック博士は、ワシントンD.C.所在のガルフ・ステート・アナリティクス上級顧問。また、安全保障問題を専門としてUAE10年在住、ランド研究所の政治研究主幹としても在籍したTwitter: @tkarasik
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