
ファイサル・J. アッバス
イスラエルとパレスチナの和平プロセスが機能不全に陥っている理由を最もよく分析しているのは、それがいつもあまりにも多くのプロセスに悩まされるばかりで、平和を十分に検討していなかったということである。UAEとバーレーンのイスラエルとの関係正常化から学ぶものがあるとすれば、それは平和は一瞬にしてもたらされ、そのプロセスは後からでも付いてくることができるということである。
もちろん、70年以上にわたる占領とそれを終わらせるための正当な呼びかけをしてきたパレスチナ人のようなケースと、イスラエルとの間での敵対行為がほとんどなかった湾岸諸国とを比較することはできない。
もちろん、ファタハとハマスの間には分裂がある。そして、パレスチナ自治政府は腐敗している。それにもかかわらず、ドナルド・トランプ米国大統領の上級顧問であるジャレッド・クシュナーが指摘したように、パレスチナ人は機会を逃すことは決してしてはならない。彼らは交渉のテーブルから離れるたびに、パイが小さくなるだけであることをいつになったら理解するのだろうか?1999年に彼らに提供されたものと、現在提供されているものを比較してみて欲しい。今日まで、それらが減らされる度に、パレスチナの指導部はより多くを望んでいるように思われる。歴史的なパレスチナを失うことは確かに耐え難いことであるが、パレスチナ人、そしてもちろん私たちすべてが、感情はわきに置いて、現実を受け入れなければならない。
しかし、欠点はすべてが一方の側にあるわけではない。違法な入植地を拡大したり、継続的に踏んだり蹴ったりの目に合わせることにより、イスラエルは実行可能な合意に到達することを不可能にしている。UAEがヨルダン川西岸地区の併合の凍結を求めた際に示したように、イスラエルは、和平合意を損なうのではなく、和平合意を奨励する方法で責任を持って行動することで、報酬―それに見合うだけの価値のあるもの―を得られるということを理解する必要がある。
では、サウジアラビアはUAEとバーレーンに続くだろうか?もし私がその質問をされるたびに数ドルをもらっていたら、私は大金持ちになっていることであろう。
イスラエルとパレスチナの和平プロセスが機能不全に陥っている理由を最もよく分析しているのは、それがいつもあまりにも多くのプロセスに悩まされるばかりで、平和を十分に検討していなかったというとことである。
ファイサル・J. アッバス
リヤドはその立場を明確にしてきた:サウジアラビアは、自らが2002年に提案したアラブ和平構想を引き続き順守するというものだ。そこでは、サウジアラビア(イスラム教の2つの聖なる神殿の本拠地)およびその他すべてのアラブ諸国との関係正常化と引き換えに、東エルサレムに首都を置いたパレスチナ国家を樹立することを規定している。
この立場は何度も確認されているにもかかわらず、多くの西側の専門家はそれを過度に分析している。彼らは、サウジアラビアがイスラエルとの関係を決して認めないまたは正常化しないと考える人と、リヤドが秘密裡にそれを急ぐと信じているように見える人に分かれている。
もちろん、この混乱の多くは、アラビア湾の向こう側で意図的に蒔かれたものである。多くの人々が、サウジアラビアとイランがイスラエルについて同じ見解を共有していると考えるように仕向けられるかもしれない。それは真実でも公平でもない。イランとその代理人は、ユダヤ人を海に投げ込み、イスラエルを地図から抹殺したいと公然と述べている。彼らはこのレトリックを使って、地域を不安定にする行動や武装民兵の展開を正当化している。―しかしその目的はエルサレムの「解放」とは程遠く、アラブの4つの首都を占領することである。
一方、サウジアラビアの公式な立場は常に合理的であり、決して反ユダヤ主義ではない。リヤドは、国連や国際法で定義されているように、パレスチナ領土の違法占領に常に反対してきた。数十年にわたり、サウジは平和を提唱し、パレスチナの分裂を終わらせるために骨を折ってきたのである。
もちろん、サウジ社会に不名誉にも反ユダヤ主義的な人たちが一部いたことは誰も否定しない。しかし、ここ4年の間、学校のカリキュラムの大改革、新しいヘイトスピーチ法、他の信仰との対話や寛容性にむけての前例のない措置が取られてきた―欧米のメディアではほとんど報道されていない実質的な革命である。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子自身、サウジアラビアの内外でユダヤ教を含む他の宗教の指導者と会談してきた。シェイク・ムハンマド・アル・イッサ(同氏もサウジアラビア人)が率いるムスリム世界連盟は、徹底してホロコースト否定論者を明白に批判し、またよりオープンで寛容なイスラムの解釈を奨励してきた。
マナーマの関係樹立に関して、私が読んだ中で最もおかしなものの1つは、湾岸の小国であるバーレーンは、サウジアラビアからの青信号なしではイスラエルとの関係正常化をすることはできなかったであろうと示唆する「分析」である。これは独立した王国であるバーレーンの権威を傷つけるだけでなく、それはあたかも「奥さんへの暴行をやめましたか?」とでも問いただしているようなものである。その意味するところは、リヤドがマナーマに政策の指示を出しているか、またはサウジアラビアがバーレーンの決定に関して問題を抱えているかのどちらかであるが、いずれも正しくない。
結局、パレスチナ問題が解決され、地域全体がイスラエルとの関係を正常化したとしても、多くの誤解を修正する必要があり、いろいろな要素が絡んだ難問の中から憎悪を取り除く必要がある。それは容易なことではないが、まずは間違いを認めることから始まる。私は、バーレーンおよびUAEとの合意がイスラエルのメディアや書籍におけるアラブ人に対する憎しみに満ちたレトリックを終わらせ、そしてもちろんその逆にも一役買うことを願っている。
アラブニュースは口で言うだけではなく行動で証明します。今日、私たちは「マイノリティ・レポート」と題する新しいシリーズを開始します。このシリーズでは、地域のマイノリティの窮状を取り上げ、アラブユダヤ人が主な焦点となります。それは、私の同僚のエフレム・コサファイが制作したレバノンのユダヤ人の歴史を見事に「掘り下げた」記事から始まります。
シャローム!
ファイサル・J. アッバスは、アラブニュースの編集長 である。Twitter: @FaisalJAbbas