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日本が和平調停の仲介人となる可能性も

マフムード・アッバス大統領と安倍晋三首相(AP Photo)
マフムード・アッバス大統領と安倍晋三首相(AP Photo)
31 Oct 2019 05:10:48 GMT9

日本はイスラエルとパレスチナ間の和平協定に必要な仲介人となり得るか。極東の大国がこう着状態を打開する鍵を握っているのか。ワリード・シアム駐日パレスチナ大使は、それは可能だと考える。シアム氏は今週、「彼ら(日本)は両者のことを理解していて、状況にも馴染みがあります」と話した。最近のYouGovがArab News向けに行った調査によると、56%のアラブ人が日本は両者にとって優れた仲介者になり得ると回答している。

一方、このような期待は全く見当違いのものというのが今の現実だ。ドナルド・トランプ米大統領はいまだに自分が最大の交渉役であるという妄想のもと、いわゆる「世紀の交渉」を他者に譲る気はなさそうだ。トランプは自身の義理の息子をこの交渉の収束に送り込み、ジャレッド・クシュナーは6月にマナマで会合を開いた。その後イスラエル総選挙のこう着状態もあり、大した進展はない。

米国は1991年の和平プロセス以来独占し続けてきた役割を手放すつもりはない。そうなると国内ではイスラエル・ロビーにとって大きな不安をもたらす。だが、もし2020年の大統領選挙で左派の民主党候補者が当選すれば、これすら問題化される可能性がある。バーニー・サンダースとエリザベス・ウォレンはこの問題について過去の民主党有力候補者とは大きく異なる姿勢を見せつけている。

イスラエルもまた、他国が米国に代わり交渉役となるのは避けたいだろう。ガザにおける現ネタニヤフ政権は熱心に居留区構築、住宅破壊、封鎖を進めるなか、和平交渉の必要性は一切感じていない。併合の兆しも見えている。和平交渉はこれまで続けてきた植民地化と民族浄化のプロセスの障害となり得る。ベンジャミン・ネタニヤフとその他イスラエルの極右主義者にとって米国の役割とは、多くの大統領でそうだったが、特にトランプ政権下で米国の拒否権が有力である国連安保理におけるイスラエルに対する批判を最小限に抑えることだ。イスラエルの政治的コンセンサスは、米国、そしてロシア、EU、日本などの大国が交渉に深く関わらないようにするというものだ。EUと日本の役割は資金援助をすることでパレスチナ経済の完全崩壊を回避し、パレスチナ当局が安全保障の機能を維持できるようにすることだ。

だが、この状態が永遠に続くのだろうか。第一に、米国は仲介者として大々的に失敗した。サッカーの試合で一方のチームのみにフリーキックを与える審判に例えられている。そしてこの偏りは遠慮なしに認められている。米国の歴代大統領は、イスラエルへの支持を公に宣言してきているのだ。これは平和実現に向けた健全なプロセスとは対照的なものだ。一体どうやってパレスチナは米国大統領を信用すればよいのだろうか。ビル・クリントンによる2000年のキャンプ・デービッドでの交渉は非難合戦となり、和平の可能性はすべて台無しとなった。バラク・オバマは交渉の条件としてイスラエル人居留の停止を主張したが、ネタニヤフによる圧力の強化を見逃した。そして居留の停止は取り下げられた。ここで疑問が残る。彼らはこの真似事を終わらせたいと思っているのか。もしかすると、トランプはイスラエルやその他中東の同盟国を見捨てると宣言し、地域からの完全撤退を行うということも考えられる。

いつかはオルタナティブかつ中立的な仲介国が歓迎されるかも知れない。

クリス・ドイル

将来的にイスラエルの政治は極右から離れ、偽物ではなく本物の交渉に取り組む政治家が有力になる可能性もある。両国、そしてその国民らが真剣に平和を望むことになれば、その時にはオルタナティブかつ中立的な仲介国が歓迎されるかも知れない。

日本はパレスチナのリーダーとも良好な関係を持っている。1週間ほど前にはマフムード・アッバス大統領が訪日し、安倍首相や政府高官らと会談した。安部首相は「中東和平プロセスの展望は不確かではあるものの、イスラエルおよび米国との交渉再開は重要である。交渉再開なしに二国家共存解決はない」としたうえで、「日本は関係国を交渉のテーブルに引き戻すための努力を惜しまない」と述べた。これまで、日本は支援の面で重要な役割を担ってきた。1993年以降のパレスチナへの資金援助額は19億ドルに上り、国際ドナーとしては世界3位だ。

イスラエル-日本間の関係も改善している。過去には中東諸国の石油への依存から、中東側にならざるを得ないとイスラエルから見られていた。だが安倍首相の2度にわたるイスラエル訪問などを受け、その見方は変わった。日本はイランに対しても地域内での破壊的影響力を抑止するよう努力を続けてきた。

それでも結局、日本の仲介は非現実的だ。それがいかに賢明かつ理想的であったとしても、まだその機会は出現していない。だがこの数年で学んだことがあるとすれば、不可能なことは何もないということだ。

クリス・ドイル はロンドンのCouncil for Arab-British Understanding 局長

Twitter: @Doylech

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