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世紀の航海—- クルーズ船はどのようにして王国の未来に向けて航路を決めることができるか

紅海を横断するシルバースピリット。(visitsaudi.com協力)
紅海を横断するシルバースピリット。(visitsaudi.com協力)
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24 Oct 2020 11:10:42 GMT9
24 Oct 2020 11:10:42 GMT9

国際メディアが映し出すサウジアラビアの姿と日常的にサウジアラビア人が体験している国との間には違う世界がある。私にとって、サウジアラビア人が国際基準に合致する「ステイケーション」を楽しむ方法として最近、政府が主催したクルーズほどその違いをくっきりと浮かび上がらせたものはない。

これまで、コロナウィルスの感染者数を抑え、その数を少ないまま維持することに成功してきたため、サウジアラビア政府は、COVID-19のパンデミックから王国を保護するために導入された規制を徐々に緩めている。国内航空便と国際便の一部を再開し、1月にはさらに再開範囲を拡大する予定だ。また、段階的に注意深く抑制しつつ、祈りとウムラ巡礼も再開している。

そして今度はレッドシー・エクスペリエンス・クルーズの番だ。これは多くのサウジアラビア人と、今年、海外で休暇を楽しむことができなかった国外居住者にとっては、思いがけない、うれしい朗報である。運営するシルバーシー・クルーズは、モナコに本社を置く豪華客船の会社で、この事業で25年以上の経験を持つ。その船旅は、新婚旅行をする夫婦、家族、独身者、年金暮らしの人々にとって、昼間は独特のすばらしい海上生活、夜間は世界最高の船上の娯楽やサービスを楽しむ機会である。

「紅海の花嫁」、ジッダの出身であるにもかかわらず、私はこの美しい自然の宝庫のすばらしさを無視していた罪を認める。とはいうものの、4年前に始まった全体的な改革の前は、楽しいステイケーションに関して、我々サウジアラビア人には実際に選択の余地がほとんどなかった——  アルウラの文化遺産なる財産は立ち入り禁止で、楽器演奏などの、休暇に楽しむであろうほとんどの活動が一切自宅で禁止されていたのだ。

この4日間の旅で、私は、存在さえ知らなかった、息を呑むような浜辺を目の当たりにした。シンダラ島で私はレストランの夕食を堪能した。このレストランの母体となる店はスペインのマルベーリャにあり、ミシュランの星を持っているが、食品の質と雰囲気の両方においてそのレストランと同等だった。船上の夜、我々はクイズ、星の観測、映画鑑賞、ジャズやお気に入りの曲の生演奏の鑑賞、そしてもちろん、クルーズの間ずっとすばらしい景色を眺めて過ごした。

何よりも、これは王国の未来の様子を見る覆面試写会だった—– 明るく、美しく、そして、国際メディアで目にするであろう姿とはかけ離れている。

ファイサル・J・アッバス

全般的に、これは、日常的なコロナウイルスのニュースの宿命と憂鬱から逃れる息抜きになった。現に、乗船前に繰り返された検査と船内の厳格な衛生対策のおかげで、誰もが不安に感じることなく安全に自分の時間を楽しんだ。

しかし、私が最も楽しんだのはこの経験の社会的要素だった。多くの人はこのことを知らないが、我々サウジアラビア人は社交的な集まりに関しては、特に家族が関わっている場合、どこか奇妙なものに慣れている。我々は私的な自由に取り憑かれており、実際に、健康と安全の条件になる前から「ソーシャルディスタンス」を定義していたのだ。

このクルーズが魅力的だったのは、「個人的な空間」の問題、あるいは、それぞれの空間への他人の侵入や不愉快な感覚など一切なく、王国全体から集まった独身者、既婚者、自由派、保守派など様々な男女すべてが2020年で間違いなく最高の自分の時間を何とか楽しもうとしていたことだ。

多くの人が私に語った。これを経験した今では、コロナウイルスに関する規制が解除されようとされまいと、また同じことをするだろうと。その他に否定的な意見を持っていた人もいた。サービスに関してやWi-Fi回線が弱い、あるいは、ウェイターが注文を間違えるなどの問題についてだが、これらは世界中のサービス業の客がよく口にしていることだ。

おそらく全てのことの中で最も際立っているのは、このクルーズ船がジッダからネオムに向かって航行していることだろう。ネオムは未来の都市であり、サウジアラビアの改革計画の最も貴重な部分である。したがって、 何よりも、これは王国の未来の様子を見る覆面試写会だった—– 明るく、美しく、そして、国際メディアで目にするであろう姿とはかけ離れている。

 ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長である。Twitter: @FaisalJAbbas

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