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コロナの時代に文化がなぜこんなにも重要なのか

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05 Nov 2020 09:11:44 GMT9

新型コロナウイルスにより、世界市場で繁栄する産業である映画、国家遺産、美術品、料理、書籍、博物館などからなる文化経済を、政策立案者らが世界経済の議論の最前線に引き込む必要性について、スポットが当てられてきた。そして11月にサウジアラビアが主催する2日間のバーチャル・サミットにG20の首脳と閣僚が参加する時ほど、良いタイミングはない。

G20の文化担当大臣が参加する合同会合は、文化経済に関する有意義な議論を開始し、文化産業がこれまでに行ってきた重要な進展を踏まえ、その可能性をさらに拡大する一翼を担うだろう。また、この合同会合は、強力なリーダーシップが支援する年次会議を設立し、文化を世界的な政策アジェンダの一部とするための第一歩でもある。

私はサウジアラビアの文化大臣として、各国の文化担当大臣らと初回の会合を主催できる事を誇りに思っている。

サウジアラビアは、今回の会合で文化経済のロードマップを作成することを望んでいる。文化が経済に良い影響を与えるのであれば、世界経済の生産高の約80%、世界人口の3分の2を占めるG20諸国がこれを促進し、奨励すべきである。

また、文化は来年のイタリアが議長となり開催されるG20の議題の一部にすべきだと強く感じている。

それはなぜか?文化はこれまで伝統的にソフトパワーと結びついてきたが、ハリウッドやインドのような新興市場から生まれた人気のテレビ番組など、文化はますます世界の繁栄を牽引しているからだ。ユネスコによると、文化創造産業における年間収入は2兆2500億ドル、輸出額は2500億ドル以上とされている。また、文化創造産業は世界中で3000万人近くを雇用しており、近い将来、世界の国内総生産への貢献度は約10%になるとの予測もある。

さらに重要なことに、数ヶ月間に渡る国境閉鎖後、各国が国境を開放し始めるにつれ、文化経済はG20諸国のコミットメントとともに世界経済の回復及び予想されるリセット(仕切り直し)の一部となるだろう。世界銀行による今年のベースライン予測では、航空旅行、観光、小売業の混乱もあり、5.2%縮小する見込みである。そのため、各国のリーダーは、世界経済を活性化させるために利用可能なあらゆるツールを活用することが不可欠である。

特に嗜好が変化し、文化へのアクセスがより国際的になるにつれ、G20以外の国々にもこの取り組みに参加するチャンスが訪れる。世界の主要経済国だけでなく、すべての国がこの重要な文化の市場を発展させるよう奨励されるべきである。参入障壁は低く、需要がある。

私が文化の大切さや、文化が経済に与える良い影響について考えるようになったのは、サウジアラビアでパンデミックを体験した時であった。

パンデミックの中での不確実性により、文化とそこから生まれる革新性と創造性が、確実性をもって、より良い日々への希望を与えてくれるという私の信念はさらに強化された。人々はこの前代未聞の出来事に対処しながら、生活において平常心を保つために文化産業を活用した。文化省もこの動きに対応した。「孤立時における文化」をテーマに、聖なる月ラマダンの間に開催するデジタル料理番組や、アラビア書道やイスラム装飾芸術のeラーニングプラットフォームの開設など、さまざまな取り組みを開始した。

また文化省はこの間、サウジアラビアのアーティストに働きかけを行い、活動の継続を促した。また、アーティストたちが社会的距離の経験をアートで表現できるようオンライン・フォーラムを開催した。

私は、彼らが行っていることは、様々な職種の人々にインスピレーションを与えるだけでなく、サウジアラビアの経済に貢献し、野心的な「ビジョン2030」計画によるサウジアラビアの変革における重要な一端を担っていることを強調した。

パンデミックは、文化の価値、人々の変化と適応の可能性、そして困難な状況を乗り越えるために協力し合うことの大切さを教えてくれた。

国全体の都市封鎖と渡航制限を伴ったパンデミックは、世界中の多くの人々が学校の閉鎖やリモートワーク、健康サービスの中断、テーマパークや映画館の閉鎖に耐えるなか、人々の生活に前例のない変化をもたらした。

これに対応し、コロナウイルスの蔓延を食い止め、生活の中で平常心を維持するため、人々は、日常生活からの逃避を提供する産業への依存度を次第に高めていった。それが文化経済であった。

人々はユーチューブでインターネットスターの動画を見たり、ネットフリックスやアマゾン・プライムで映画やテレビシリーズのストリーミング配信を視聴したりした。人々は、突然、自分たちにもアクセス可能となった文化イベントをオンラインで次第に利用するようになった。これにより、人々はこれまで実際に訪れたことしかない場所をオンラインで探索することで、世界的な文化の相互接続性を加速させた。

この分野の潜在的な需要を予測し、テクノロジー企業、機関、政府は迅速に対応した。

Google Arts and Cultureは世界中の美術館のバーチャルツアーをアップロードし、ロンドンのテート・モダンは展覧会をオンラインで公開し、サウジアラビアのアル・ウラー王立委員会はこの地域の歴史的建造物を紹介するビデオシリーズ「Explore AlUla in 360」を制作した。

アート、映画、美術館、博物館を含む文化経済に対する需要は止まるのではなく増加したという事実は、この考えを補強するものとなった。芸術家に必要なのは白紙のキャンバスのみという考えは強力であり、適切な支援を受け、育成され、利用されることにより、真の成長のエンジンとなる。

今こそ、政府、市民社会、文化指導者、消費者が一丸となって、文化との関わりを強化し、世界経済の新たな柱としての文化経済の繁栄の道筋を描いていかなければならない。

バドル・ビン・アブドゥッラー・ビン・ファルハーン王子はサウジアラビアの文化大臣。芸術新聞に記事が掲載された。

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