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ネタニヤフ首相、アラブ系の票を狙うなら平等を与えるべき

ネタニヤフ首相は典型的な政治家であり、自分の利益になるように世論を操作するやり方を誰よりも心得ている。(AFP)
ネタニヤフ首相は典型的な政治家であり、自分の利益になるように世論を操作するやり方を誰よりも心得ている。(AFP)
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08 Jan 2021 12:01:15 GMT9
レイ・ハナニア
08 Jan 2021 12:01:15 GMT9

ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの指導者として個人的に好きな人物ではないが、何度も選挙に勝ち、イスラエルで必死に生き延びようとしている私の親戚や友人達に何が起こるかを大きく左右する存在であり続けている。

ネタニヤフ首相は典型的な政治家であり、自分の利益になるように世論を操作するやり方を誰よりも心得ている。だからこそ、イスラエルの人口20%を占めるパレスチナ・アラブ人有権者の支持の獲得に向けて選挙活動を始める計画を発表したことにも驚きは感じない。3月23日に開催予定の次の選挙までの準備期間に支持層を固めるための、賢い戦略的な動きだ。

ネタニヤフ首相は全部で15年間、二回りの任期をイスラエルの首相として務めた。中東で誰よりもパレスチナ・アラブ人の命や人権、国家に影響を持つ人物だ。だが、それほどちゅきに渡って権力を握ってきたにもかかわらず、ネタニヤフ首相はここ2年間の3度の選挙で毎回、苦戦している。汚職事件で起訴されながら臨んだ昨年3月の直近の選挙では圧勝とはいかなかったが、それでも最大のライバル、ベニー・ガンツ氏との連立政権で首相就任を果たした。

ネタニヤフ首相よりもいくらか先進的なガンツ氏は、共に首相の役割を分け合うことになっていたが、ネタニヤフ首相は連立政権合意の崩壊を企て、今では3月に完全勝利を狙えると信じている。

ただひとつ障害となるのは、前回の選挙に見られたパレスチナ・アラブ票の増加だ。明らかに、この少数派のコミュニティーは無視できない存在だ。だが、それこそ、これまでネタニヤフ首相は彼らに対して行ってきたことだった。前回の選挙でネタニヤフ首相はユダヤ系市民の支持が得られなければ、アラブ系市民に国を乗っ取られると警告し人種差別的思想を煽った。

45年近く米国と西欧諸国の選挙を取材してきた経験から、人種差別主義は時には人種よりも政治に関わることがあると私は知っている。頭の回る政治家は投票率の操作を目的に人種や人種に関わる問題を「管理」する。多くの場合、彼ら自身が人種差別的な思想の持ち主だからというよりは、人種問題を選挙に確実に勝利するための手段の一つとして見ているのだ。非道徳的な戦略かもしれないが、人種についての心理操作は西洋の選挙では頻繁に見られる。

ネタニヤフ首相は、昨年のようにイスラエルでの人種による分離を扇動するかわり、今回はパレスチナ・アラブに迎合することを選んだ。彼らはネタニヤフ首相の心理操作の格好のターゲットだ。パレスチナ・アラブの指導者自身が選挙の基本を真に理解しておらず、常に戦略よりも感情に頼る風潮があるのだから。

パレスチナ・アラブ人コミュニティーの指導者の統率力の弱さこそが、なぜこれまで彼らの票がその真価を発揮できていない理由を説明しているだろう。もしそれが可能であったなら、有権者の20%を占めるパレスチナ・アラブ人の票は120名の議員からなるイスラエル国会に24人の代表を送りこめるはずだ。だが、これまでの最多数は17名にとどまっている。あと7つの議席を押さえれば、イスラエルのパレスチナ・アラブ系市民が次の首相を選び、イスラエル政府の人種差別的政策の容認と存続可能なパレスチナの独立の実現への反対姿勢を覆すことも可能になるのだ。

イスラエルのネタニヤフ首相は、昨年のようにイスラエルでの人種による分離を扇動するかわり、今回はパレスチナ・アラブに迎合することを選んだ。

レイ・ハナニア

ネタニヤフ首相はそれに気づいており、反アラブ嫌悪感情をユダヤ系市民の間に煽ることで決定的勝利を果たすことができなければ、政治家として、パレスチナ・アラブ票の一部でも操作することで、再度連立政権樹立に陥る羽目になるのを避けようとしている。

ネタニヤフ首相はまた、パレスチナ・アラブ人口の感情的な性質を理解している。暴力と犯罪行為の被害の下で生きてきた彼らが迫害者に答えを求めるのは、あり得ないことではない。人質が誘拐犯に親密な感情を抱く、かの有名なストックホルム症候群の一種のようなものだ。

ネタニヤフ首相は、ただ、パレスチナ・アラブに対してこれまでよりも関心と共感を示してみせるだけでいい。愛国主義の観点からではなく、より平等に彼らを扱うという意味でだ。イスラエルは非ユダヤ系市民を差別する65以上の法律を可決してきた。ネタニヤフ首相は、パレスチナ独立に反対する保守派の支持を失うことなく、人種差別を減らし非ユダヤ系市民の権利をほぼ平等にまで引き上げることができる。

パレスチナ・アラブ票のほんの一部の支持さえ得ることができれば、ネタニヤフ首相は次の選挙でも首相の座を確かなものとし、もしかしたら現在重くのしかかっている汚職事件の起訴からも何とか逃れることすらできるかもしれない。それを試すための道は開かれている。イスラエルのパレスチナ・アラブ指導者達はその真価を発揮することもなく、戦略的コミュニケーションが選挙の結果に与え得る力をしっかりと理解していないのだ。彼らはネタニヤフ首相の戦略に対し、今すでにそうしているように、非常に感情ベースの選挙運動を進めることで応じるだろう。

もしネタニヤフ首相が明確な目標を持ち続け、実際にイスラエルの非ユダヤ系市民の生活に変化をもたらせるのであれば、アラブ系有権者に働きかけるのは賢明な一手だといえるだろう。

  • レイ・ハナニアは受賞経験のある『シカゴ・シティー・ホール』元レポーター兼コラムニスト。連絡は、個人ウェブサイトまで(www.Hanania.com)。Twitter@RayHanania
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