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フーシ派のテロ攻撃で試されるバイデン政権

フーシ派の戦士たち。イエメンのサナアにて、2017年1月3日に撮影。(ロイター)
フーシ派の戦士たち。イエメンのサナアにて、2017年1月3日に撮影。(ロイター)
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31 Jan 2021 01:01:08 GMT9

テロ組織であるフーシ派民兵によるサウジ攻撃が止まらない。住宅地や民間空港を標的とするフーシ派の弾道ミサイルや無人機攻撃が、サウジの治安を脅かし続けているのだ。

イランの支援を受けたフーシ派民兵は、これまでもイラン政府の代行役としてこうした役割を果たしてきた。40年以上にわたり、この地域のみならず、より広い世界の治安を蝕んできた。だが現在、フーシ派民兵はこれまで以上に大きな破壊力を持つようになった。テロリスト・ネットワークがアラブの複数の国に存在しているからだ。イエメンのフーシ派といったイラン支援の民兵は現在イランの武器を保有しており、これによって脅威は増大するばかりだといえる。

リヤドを標的とした最近の攻撃事件後、フーシ派はいつもと違って犯行を否定した。これまで攻撃後に自慢気に犯行声明を出していたのとは一転した態度である。今回はどうもバイデン新政権を試したかったふしがある。フーシ派は、自分たちをテロ組織と指定した前政権の決定をバイデン政権が見直すと聞いているのだ。何れにせよ、疑問は残る。米国では政権が交代し、新政権はイラン政府やその同盟国を前政権ほどには脅威とみなしていないのだ。攻撃はなぜ政権交代のタイミングを狙って行われたのだろうか?明らかなのは、イラン政府はバグダッドの米国大使館やリヤドを狙った攻撃後、すぐにでもバイデン政権を試したがっているということだ。

イラン政権はこれからもバイデン政権やアラブ諸国に対する攻撃および挑発を繰り返すことだろう。忍耐の限界を試し、どんな反応をするかをみるためだ。トランプ政権当時はトランプ大統領の政策を糾弾していたワシントンのイランシンパらの予想とは裏腹に、イラン政権はバイデン大統領を大歓迎したわけでもないし、民主党の政権復帰を祝ったわけでもなかった。

イラン政権は米政府の対面を傷つけ始めた。バイデン氏には自分たちに立ち向かう意思も能力もないと公言したのだ。こうした手を使って、イラン政権は現在、ゲームの規則を新たに作ろうとしているのだ。

米国務省はリヤドを狙ったミサイル(無人機の可能性もあり)攻撃を糾弾する声明を、事件後すぐに出している。イランに対する重要かつ迅速な反応だったといえるだろう。声明後、地域内の米軍に動きがあった。米軍のプレゼンス強化を狙った動きである。後ろ向きの対応もあった。フーシ派に対する制裁措置執行の決定を 1 か月延期したことだ。ただ政治面、軍事面、外交面で全世界に影響力を持つ米国のことだから、アラブの同盟国やパートナーと協力して情勢を有利に転じるだろうということに疑いの余地はない。

バイデン政権がイランの攻撃的な行動に率先して立ち向かうことなく、アリー・ハメネイ師の心配の種である経済制裁を解除するなどしてイラン政権に譲歩するようなら、状況はバイデン政権にとって極めてきまり悪いものとなるだろう。イラン政府高官は、米政府が制裁を解除しない限り、核合意の見直しも修正も行うつもりはないと公然と表明している。

ダーシュの場合もそうだったように、イエメン危機を解決しようと思ったら、フーシ派に本格的かつ効果的に対処する以外に解決策はない。

ハムダン・アル=シェフリ博士

バイデン政権の現在の声明では、同盟国が満足できるよう核合意を修正すると約束しており、イラン政府の方では修正は受け入れられないという。それならバイデン氏は、武力や経済制裁を使わずに、どのようにしてバイデン政権なりの新しい現実を作り出そうというのだろうか。

フーシ派による最近のリヤド攻撃に対しては、米国をはじめ世界中から非難の声が上がったことを忘れてはならない。フーシ派やイラン政府が最初に弾道ミサイル攻撃や無人機攻撃を行った際にもしこうした国際非難がなされていたならば、フーシ派民兵やイラン政府からの危険性がこの地域で高まることはなかっただろうし、その行動が国際的な航行を混乱させるまでに至ることもなかったはずだ。

さらに言えることは、フーシ派をテロ組織として指定し続けることが、イエメン危機の真の解決策の始まりとなり、イラン政府や親イランのテロ組織と戦う方法の1つともなる、ということだ。ダーシュの場合もそうだったように、イエメン危機を解決しようと思ったら、フーシ派に本格的かつ効果的に対処する以外に解決策はない。そうすれば、イエメンや地域のその他の国々の治安は回復するだろう。そうしなければ、イラン政府に有利に働くことになる。世界を脅迫し、世界の治安と安定を脅かし、イエメンの深刻な人道的危機を長引かせる時間ができるからだ。

  • ハムダン・アル=シェフリ博士は政治アナリストであり、国際関係学者である。ツイッター:@drhamsher7
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