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パンデミックで人々の暮らしはどう変わるか

台湾の首都台北の公共交通機関では、マスクの着用が義務付けられている。(ロイター)
台湾の首都台北の公共交通機関では、マスクの着用が義務付けられている。(ロイター)
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16 Feb 2021 09:02:52 GMT9
16 Feb 2021 09:02:52 GMT9

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が、少なくともあと数年続くとすれば、どう対処すればよいのだろう。これは暗い見通しだが、ウイルスの蔓延、変異種の増加、不平等なワクチン接種プロセスについて考えると、すべての人が受け入れ始めなければならないかもしれない未来像だ。とはいえ、適切に計画し、事前に考えておけば、最悪の影響は回避できるかもしれない。

効果的なワクチンの開発が驚異的なスピードで成功しているとはいえ、ウイルスはまだ絶滅に直面してはいない。裕福な国々の人口の大半は2021年中にワクチン接種を受けるかもしれないが、世界中の80億人が接種を受けるには、少なくとも150億回分のワクチンが必要である。COVAXプロジェクトを共同主導しているGaviワクチンアライアンスは、今年中に20億回分のワクチンを国々に届けたいとしているが、それらが人々の腕に実際に接種されるまでどれほど時間がかかるかは、また別問題だ。これは、同プロジェクトに参加している最貧国92カ国の人口の20パーセントをカバーする数値であり、少なくとも医療従事者の大半と、極めてハイリスクなグループにはワクチン接種を実施できるかもしれない。しかし、このペースだと、ワクチン接種完了までには明らかに何年もかかることになる。さらに資金を調達する必要もある。また、必要になるかもしれないブースター接種の費用は誰が負担するのだろうか。

新型コロナウイルス感染症は存在し続けるが、2020年に世界が直面したほどの脅威ではなくなり、重荷ではあるが、共存できるものになるだろう。入院頻度は減少し、より効果的に治療できるようになるかもしれない。それでも、誰も望まない厄介な病気であることに変わりはない。

ワクチン接種が迅速に進められている英国やイスラエルのような国においてさえ、2021年中ずっと、もしくは大半の期間、いくらかの規制が実施されるはずだ。集団免疫を獲得するには、人口の約70〜80%がワクチン接種を受ける必要がある。この秋までには、新たな変異種に対応するためのブースター接種も必要になる可能性がある。それで、主要ワクチンの製造および配送の効果性を高める必要がある。

ワクチン接種完了までには時間がかかるが、疑念を抱く人々を説得するにもかなりの努力が必要だ。接種を強制するのでない限り、接種への躊躇や反対はワクチンの有効性を限定的なものにする。そうした躊躇のレベルは国ごとに異なり、同じように心配なことに、コミュニティごとにも異なる。

今回のパンデミックの前でさえ、ワクチン接種を躊躇する人は増えていた。ポピュリズムを推進する要素との間に、多くの共通点があるのだ。政府に敬意を払うことへの抵抗感、専門家や主流メディアへの疑念である。この傾向は、ロシア、ポーランド、フランスなどの国々で特に顕著にみられる。ある世論調査では、ワクチンを接種すると回答したのはロシア人の約55パーセントのみだった。ワクチン反対主義者は、ワクチンはDNAを改変するとか、ウイルス自体よりも危険であるといった悪意ある陰謀説を拡散する。そう、ワクチンには水銀、アルミニウム、あるいはホルムアルデヒドは含まれていない。

マスクの着用もなくならないだろう。屋内および公共交通機関における法的着用義務が残るかもしれない。今回のパンデミック発生前でさえ、いくつかのアジア諸国の人々は普段からマスクを着用していた。メーカーは、マスクをもっと効果的で、ユーザーフレンドリーで、快適にする方法を見つける必要がある。ますます多くのテストや温度チェックを標準的に実施することになるだろう。

おそらく最も深刻な課題は、メンタルヘルスへの余波だろう。発達の重要な段階で、孤立と学習機会の喪失を経験する子どもたちのことが危惧される。これもやはり貧困国にとって試練であり、パンデミックによる不平等を悪化させる。

人々の暮らしは他の多くの面でも変化するだろう。自宅で仕事をする人が増え、通勤したがらなくなる。多くの人の仕事を選ぶ基準が変わる。人々は握手やハグをやめるのだろうか。

ワクチン接種済みであることを示す、デジタル式の新型コロナウイルス・パスポートシステムができるのだろうか。中国は、人々のウイルス感染状態を示すアプリの使用を開始した。クルーズ会社がこうした要求するようになったとして、非難する人などいるだろうか。スポーツクラブは、メンバー全員がそうした証明書を提示することを要求するようになるのだろうか。航空会社は搭乗条件としてこうしたことを要求するようになるのだろうか。いくつものレストランが、ワクチン接種済み証明書の要求を検討中だ。これは、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の間の不平等にさらなる拍車をかけるのだろうか。

旅行制限の解除はまだ先のことだろう。飛行機に飛び乗る頻度の少ないライフスタイルに慣れる必要がある。ワクチンの不平等を考えると、裕福でワクチン接種率の高い国の人々は、貧しくてワクチン接種率の低い地域への旅行をためらうかもしれない。ステイケーションの人気は高まるかもしれないが、経済を観光に依存する国々はどのように適応するのだろうか。熱帯地方の海岸線には、部外者立入禁止の高級観光リゾートが増え、地元住民との交流はさらに少なくなるかもしれない。

一方で、旅行が減って、自宅近くで過ごすことが多くなれば、二酸化炭素総排出量は減少するかもしれない。とはいえ、大量輸送よりもマイカーが好まれるだろう。しかし、気候変動がとにかく強制する可能性のある決定をするよう、パンデミックが我々すべてを動かすのかもしれない。

ワクチン接種が迅速に進められている国々においてさえ、2021年中ずっと、もしくは大半の期間、いくらかの規制が実施されるはずだ。

クリス・ドイル

衛生状態の改善は良い副産物かもしれない。パンデミックによって促進されたより良い習慣は、将来の感染症の流行防止に役立つ。人々はまた、免疫システムを改善する食事や栄養に注目している。ロックダウンのおかげで何百万人もの人々の体重が増えたが、運動の必要性はかつてないほど明確になった。

消費者の習慣は変化したし、今後も変化し続けるだろう。買いだめする傾向は、トイレットペーパーの最後の1本をめぐって争うといった悲劇的バトルにはもうならないかもしれないが、それでも多くの人は必需品のストックを以前より増やすだろう。オンライン販売は今後も盛況であり続け、対面取引は減少し、実店舗が影響を受ける。大手小売業者は、仮想現実や拡張現実のオプションを使って、顧客が衣服を試着したり、家具をチェックしたりできるようにする。イケアは既に始めている。

Zoomなどのプラットフォームを使用したオンライン会議は今後も続くだろう。オンライン会議は疲れやすく、スクリーン時間が長すぎるとしてもである。ソーシャルネットワークが以前にも増して重要になったため、Facebookやインスタグラムなどの広告はより大規模なものにシフトする。

新しい生活様式はどのようなものになるのだろうか。人類は2019年には戻れない。順応性が高く、素早く学習する人は、今後の数年間に対応できるだろう。

何よりも、幸運にも生活水準の高い豊かな国に住む人々が、大きなショックを受けた。私の内の楽観的な側の自分は、人々が自分たちの幸運をもう少し認識するようになり、あたりまえだと思っていた小さなことすべてに感謝する様子を見ることができるかもしれないと思っている。

・クリス・ドイル はロンドンのCouncil for Arab-British Understanding 局長 Twitter: @Doylech

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