Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

評価、可能性、伝聞証拠、判断、二重基準

Short Url:
04 Mar 2021 09:03:16 GMT9

アメリカのジョー・バイデン大統領は、CIAによる故ジャマル・カショギ氏殺害に関する機密解除された報告書を公表して正解だった。

バイデン大統領の元上司、バラク・オバマ元大統領も、ジョージ・W ・ブッシュ元大統領が非公開にしていた9/11委員会報告書の28ページを公表して正解だった。

9/11同時多発テロ事件に、サウジアラビアが関与していたという証拠を見付けられると期待して人々はひどく落胆した。何一つ明らかにはならなかったからだ。

こうした最近判った意外な事実は、CIA関係者たちの不完全で証拠のない評価を明らかにしている。

このような評価は、「サウジ当局が王太子の許可なしに、このような性質の作戦を実行する可能性は極めて低い」と言って、ムハンマド・ビン・サルマーンを非難する内容になっている。これは私には、アメリカ軍の名高い規律からして、アブグレイブ刑務所における収容者虐待の実行者たちが、ドナルド・ラムズフェルド国防長官やピーター・ペース大将の許可なしに、このような行為を実行する可能性は極めて低いと言っているようなものだ。結局のところ、Salon.comのシドニー・ブルーメンソール編集長によると、ラムズフェルド国防長官の命令の下で、その時グアンタナモ湾の収容所キャンプで、キャンプ・エックスレイを指揮していたレイジェフリー・D・ミラー少将に、同じ拷問手法をアブグレイブ刑務所とイラクの刑務所制度に導入するように助言したのは、ウィリアム・G・ボイキン大将だったという。

ボイキン大将は、次のように言ったことで有名だ。アッラーに言及して。「私には我々の神の方が彼らの神より偉大であることがわかっていた。私の神が本物であり、彼らの神は偶像であることがわかっていた」。ラムズフェルド国防長官は、「アメリカ軍の中で際立った戦績を持つ軍人」と説明し、ボイキン大将を庇った。

キャンプ・エックスレイで採用されていたこうした拷問手法を知らない方々は、モハメドゥ・オールド・スラヒ氏が書いた『グアンタナモ・ダイアリー』を読むか、『モーリタニアン』というこれに関する映画を観るべきだ。

この本と映画は、隔離、性的辱め、打擲、殺害脅迫をはじめとして、オールド・スラヒ氏が経験した拷問の詳細が描かれている。同氏は訴状も裁判もなしに、14年間そこで拘留された。

サダム・フセイン元大統領が大量破壊兵器を所有している、というCIAの「ダンクシュート的な」結論が思い出される

トゥルキー・アル・ファイサル王子

CIAの評価はさらに続き、カショギ氏が殺害された時、「王太子は多分ある雰囲気が醸成されることを助長していたのだろう」と言う。そんな程度の言葉で、どうして王太子の有責性を確かめられるのか、私には不思議だ。CIAはまた、極めて主観的に「判断」という言葉も使う。

こうした評価は、憶測、推定、伝聞証拠、仮定によってさらにひどいこととなり、王太子が「カショギ氏を王国にとっての脅威と考え、同氏を黙らせるために必要なら、暴力的な手段を用いることも大まかには支持していた」という主張に変わる。これは一体何に基づいているのか。王太子が評価担当者たちにそう言ったのか。CIAは王太子が誰かにそう言っているのを記録したのか。

サダム・フセイン元大統領が大量破壊兵器を所有している、というCIAの「ダンクシュート的な」結論が思い出される。この結論が、2003年のイラク侵攻につながった。このような悲惨な評価は、今日でも目にしている。このような著しく不十分な分析と情報収集評を目にした後、CIAは自らの評価能力を向上させたのだろうと思っていた。実のところは、CIAと評価やその他の問題を共有している我々のアメリカの友人たちや、我々にとって、より前兆とはならなかった。

CIAが王太子の有責性を結論付けたいい加減なやり方は、王太子の品性を汚さなければ、ただの笑い話となるだろうし、我々の共通の敵に、我々に対するプロパガンダとして、喜んでこうした評価を繰り返し使わせることになるだろう。

その一方で、このような見当違いで、迷惑な評価を用いて、アメリカ連邦議会の議員たちが実践している二重基準は、目に余り過ぎて見逃すことができない。あるイラン兵により、アメリカ国民のレイチェル・コリー氏が、ブルドーザーに轢かれた時、あるいは、平和を愛しているイスラエルの子どもたち数百人の誰もが、イスラエルの狙撃兵たちの銃弾に倒れた時、議員たちが示した怒りは今どこにあるのか。

イランがヨーロッパ、トルコ、その他の国で、反体制活動家を暗殺した時、その怒りと制裁要求は今どこにあるのか。イランがウクライナの民間旅客機を破壊したことをめぐって、議員たちが良心を痛めている姿を私は一切目にしない。議員たちが人権侵害で我々を非難していることに関して、それでは、グアンタナモ湾収容キャンプのキャンプ・エックスレイに、議員たちが相変わらず資金投入し続けていることに関してはどうなのか。そこにはスラヒ氏のように、罪状も裁判もなく投獄されている収容者たちがまだたくさんいて、自らの厳しい試練がいつ迄続くか判らない。

我々の指導者層は、バイデン氏の爽やかな率直性と透明性を歓迎している。私はきっと同じように歓迎し返してくれると思っている。結局のところ、友だちはそのためにあるのだから。

  • トゥルキー・アル・ファイサル王子は、サウジアラビア総合情報局の元長官で、元大使だ。ファイサル王子はまた、ファイサル国王財団の創設者兼同財団の理事会議長であり、ファイサル国王研究センターの会長でもある。
特に人気
オススメ

return to top