Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

危機的な現状において、ヨルダン国民は結束すべきだ

ハムザ・ビン・フセイン王子。(ロイター)
ハムザ・ビン・フセイン王子。(ロイター)
Short Url:
08 Apr 2021 01:04:53 GMT9
08 Apr 2021 01:04:53 GMT9

ハムザ・ビン・フセイン王子が国の不安定化を企てていたという疑いが今週明らかになり、ヨルダン国民を動揺させている。政府は日曜日に行われた記者会見で、現在、捜査が行われており、透明性を重んじ、情報はすべて開示されると語った。これはヨルダン国民にとって、そして世界にとっても重要なメッセージだ。どのような陰謀が企てられていたのか、関与していた外国人のメンバーは誰なのか、世間は知る権利がある。モサドの関係者と考えられるイスラエル人関与の可能性が言及されたことは懸念を呼んでおり、さらなる捜査が必要となるだろう。

ヨルダンは幸運にも、「アラブの春」と呼ばれた激動の数年間を何とか生き延びた。それは、賢明なリーダーシップと賞賛すべきレベルの国民の意識の高さによるものだった。ヨルダンは、特に近隣のシリアとイラクで起こっていた地域的な無政府状態とも闘わなくてはならなかった。国の不安定化を図るダーイッシュの試みを阻止し、国の限られた資源をより逼迫させる要因となったシリア難民が何度かまとめて押し寄せた際も、受け入れることに成功した。

次にやってきたのが今回のパンデミックだ。ヨルダン政府は二重の苦境に対処する能力を試されることになった。すなわち、国民の健康状態へのリスクを軽減することと、より大きな経済的な損害を防ぐことだ。この状況は現在も続いており、最初のロックダウンから一年が経過した今も、ヨルダンは経済を維持しようと尽力する一方で感染者の増加に直面していることは周知の事実だ。パンデミックにより、ほとんどのヨルダン国民は困難を経験しており、厳しい経済状況にあえぎ続けている。

これらの状況は社会経済に大きな影響を及ぼし、結果として、政府の対応や対策案への批判が高まっている。だが、そのような大衆の叫びが外部の者によって国を不安定化させる言い訳として使われてはならない。ヨルダンは地域の安定のために重要な役割を果たしており、苦境に直面しているにもかかわらず、政治体制を新たに蘇らせようという動きが出てきているようだ。

アブドラ国王は最近、ヨルダンの政治体制を規制する法律を見直す必要性を強調した。選挙や政党に関する法案もそこに含まれる。

この夏に地区議会選挙を控え、新法案が導入されることでより多くの国民の投票が可能になると期待されている。急を要する選挙法修正案を議論するため、政府は公開討論を行うことが望ましい。

今週勃発したこの危機的状況に対しては、世界中から連帯の意思表示や支援の声が押し寄せた。これは、ヨルダンがいかに地域の治安のために必要不可欠な役割を果たしていたかを証明している。経済的、医療的に困難な現状に直面するヨルダンには、他国の支援が必要だ。政府が危機的なレベルへと上昇を続けている失業率と貧困率の影響を緩和するには、援助がなくてはならない。経済的にも、新規雇用を創り出し、安定したレベルまで経済を成長させる様々なプロジェクトに海外からの投資を誘致するために、本格的なイニシアチブが必要だ。

最近では、サウジアラビアを筆頭とする湾岸諸国の多くが様々なプロジェクトへの投資を通じてヨルダンを支援したいという意思を表明している。ヨルダン政府はこの機を逃さず、海外の投資家の興味を惹くようなプロジェクトのポートフォリオを整えるべきだ。特に観光業、採掘業、再利用可能エネルギー、メディカル・ツーリズムと医療サービスなどの分野が好ましい。繰り返すが、これにはまず、重要性の高い法案の修正を行い、海外の投資家がヨルダンを安全に訪れやすくすることが不可欠だ。

ヨルダンの長期的な安定は、雇用を創り出し、高い貧困率とその影響を相殺できるだけの強力で持続可能な経済の実現にかかっている。だが、それと同時並行で、多様なルーツを持つヨルダン国民全員が自分たちの将来への発言権を持っていると感じられるような政治の実現に推進力を与えるための政治再建の持続可能なプロセスも開始する必要がある。そのようなプロセスは、いわゆる外部の敵対勢力の影響を薄めるだろう。

経済についての大衆の叫びが外部の者によって国を不安定化させる言い訳として使われてはならない。

オサマ・アル=シャリフ

また、ハーシム王家は長年に渡りヨルダン国家の支柱となってきた。日曜、王家は100周年を迎える。被害を最低限に抑えるためにも、現在の危機的状況は王家内で解決されなくてはならない。知恵と強い責任感が必要とされる正念場だ。ヨルダンには、闇に潜み、国の不安定化を望む敵がいる。イスラエルで勢力を増し、今や将来の政権成立のカギを握る極右派はヨルダンとそのパキスタン問題における立場に対する悪意に満ちた意図を隠していない。何よりも、ヨルダン国民は国を揺らがそうとする海外からの企てを警戒する必要があり、だからこそ、これまでになく国全体の結束が必要なのだ。

  • オサマ・アル・シャリフは、アンマンを拠点とするジャーナリスト、政治評論家。ツイッター@plato010
特に人気
オススメ

return to top