
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領による欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長への女性差別的で侮辱的扱いと見なされる行為について、大きな物議が醸されている。
先週、エルドアン首相がフォンデアライエン委員長と欧州理事会のシャルル・ミシェル議長のために主催したアンカラでの会談で、欧州委員会委員長には席が用意されなかった。男性2人が2席だけ用意された椅子に座り、隣のソファにフォンデアライエン氏を追いやった際、氏は戸惑いをみせた。この事件の動画は、ソーシャルメディア上で何千もの反エルドアンのコメントを引き出しており、「ソファゲート」と呼ばれている。
欧州委員会の初代女性大統領は言うまでもないが、このような思慮に欠けた、恥ずべき、不名誉な行為を受け入れる女性などいない。
トルコのメヴリュット・チャヴシュオール・トルコ外相は、席の配置については、アンカラのEU大使と話し合って合意したと主張した。大使はフォンデアライエン氏と同様ドイツ人である。外相の主張が真実かどうかにかかわらず、やはりこの事件は、トルコの組織での根深い女性軽蔑を示す。
率直に言って、私を驚かせたのは、誰もが初めて衝撃を受けたようだからだ。失礼ながら、ブリュッセルとヨーロッパ中のフェミニストと人権活動家は、エルドアン政権に何を期待していたのか?
フォンデアライエン氏に対する不躾が行われたのは、エルドアン首相が女性への暴力防止を目的とするヨーロッパ条約からトルコを離脱させてから1か月も経たないうちである。―皮肉にも当条約はイスタンブールの地で締結され、トルコは先を切って2012年に批准していた。あの離脱は、示唆以外の何ものでもない。
イタリアのマリオ・ドラギ首相は、フォンデアライエン氏の受けた「屈辱」に憤慨し、エルドアン大統領を独裁者と呼ぶに至った。「これを踏まえ、独裁者と呼ぼう。」とドラギ首相は述べた。「フォンデアライエン委員長に対するエルドアン氏の行動には全く賛同できない。適切な行動ではなく、屈辱を受けたフォンデアライエン氏を気の毒に思う。」
イタリア首相の声明に関して私が注目するのは、エルドアン政権がトルコを独裁政権に変えたことに今さら気づいたのかということだ。2016年に約45,000人の軍関係者、裁判官、公務員、学校教師が逮捕または停職されただけでは、十分な指標ではなかったのか?
フォンデアライエン氏に対する不躾が行われたのは、エルドアン首相が女性への暴力防止を目的とするヨーロッパ条約からトルコを離脱させてから1か月も経たないうちである。あの離脱は、示唆以外の何ものでもない。
ファイサルJ.アッバス
トルコ法務省によると、過去6年間に「大統領の侮辱」罪をめぐり計128,872件の調査が開始され、そのうち27,717件が刑事訴追に、9,556件が懲役刑に処せられた。この期間に、12歳から17歳までの903人の若者が同じ「容疑」で裁判にかけられた。
フォンデアライエン氏に起こったことは「ヨーロッパに対する侮辱」であるという見方だが、批評家たちはトルコが地中海東部でキプロスとギリシャを脅迫し続けていることに気づいているのだろうか。
10日にトルコはギリシャがテロ組織を支援していると非難したばかりである。別の皮肉の上の皮肉である。この非難があらゆる種類の過激派を匿い、支援し、利用して、リビア、ソマリア、シリア、イラクにわたる戦域に送ろうとしていると非難されることが多い国によるものだからである。
そして、脅しを多用するエルドアン大統領の作戦があり、彼はそれを完璧に磨き上げている。ドイツでトルコ系居住者に不法な投票を呼びかけたり、油田とガス鉱床を探査のためギリシャ領海に侵入しているのにも関わらず、ヨーロッパが氏に新たな無分別な行為で制裁すると宣告するたびに、トルコ大統領はヨーロッパに対し難民の水門を開くぞと脅迫する。これは、トルコに対して取られる制裁にさらに大きな要因を加えることとなる。難民の波は、欧州の安全と安定、欧州経済だけでなく、欧州連合のコア価値ににとっても脅威であるからだ。
ウルズラ・フォンデアライエン氏に起こったことは、こうした無礼な行為の終わりではなく、トルコの野党及びエルドアン大統領に敢えて賛成しない人々に対して起こっていることは、くさびの細い端にすぎない。ヨーロッパと世界がエルドアン大統領を独裁者と呼ぶことを決めるまで引き続き起こるだろう。
モンスターをテーブルに招く際、席がなくても全く問題はない。