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ガザの教訓

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05 Jun 2021 06:06:00 GMT9
05 Jun 2021 06:06:00 GMT9

エジプト人技術者らがガザ入りし、瓦礫を取り除き、11日間にわたる壊滅的な戦争で破壊されたものを再建している今、今回学んだ教訓を心に留めておくことが重要だ。

第1の教訓は、イメージ向上のために莫大な時間や資金、労力を費やしてきたにも関わらず、通説とは裏腹にイスラエルは国際的な好ましいイメージを享受していないということだ。多くの人にとって驚くべき現実ではあるが。勿論米国を始めとする強力な友好国からの支援は享受している。

大都市の路上やソーシャルメディア、世界の指導者らによる批判的な声明により、イスラエルに対する国際的な怒りが示されたことで、おそらく数十年ぶりに、イスラエルが平和を必要としていることが明らかになった。それは正しいことであるというだけでなく、イスラエル自身の利益と国際的イメージのためでもある。

第1の教訓は、イメージ向上のために莫大な時間や資金、労力を費やしてきたにも関わらず、通説とは裏腹にイスラエルは国際的な好ましいイメージを享受していないということだ。多くの人にとって驚くべき現実ではあるが。

ファイサル・アッバス

勿論、これはイスラエルや占領地を訪れたこともないどこかのライターの感想などではない。昨年、政府のベテラン政策アドバイザーであるサイモン・アンホルト氏がイスラエルの新聞に寄稿したことである。

アンホルト氏は、「国家ブランド指数」を考案したことで世界的に知られている。2020年10月のユダヤ人の年代記 紙上で同氏は、この指数におけるイスラエルの順位が、予想通りに歴史的に非常に低いことを論じた。彼は、イスラエルの紛争への関与が原因だと考えている。また、もしパレスチナがこの指標に載れば同じく低い順位になるだろう、とも指摘している。

皮肉にも、その極めて率直な記事のタイトルは 「なぜイスラエルはハスバラをやめるべきか」だった。この言葉に馴染みのない人のために説明すると、ハスバラとはプロパガンダの婉曲表現である。イスラエル政府とその支持者が、イスラエル国家とその行動に関する肯定的な情報を広めるために行う広報活動のことを指す。

つまり、アンホルト氏は、行動は言葉よりも遥かに雄弁であるためプロパガンダは役に立たない、と主張している。これを先日目にしたガザでの出来事に当て嵌めてみよう。イスラエルの政府関係者は、自国の軍が世界で最も倫理的であるといくらでも公言できるが、実際世界中の人々が目撃したのは、家から追い出されて泣いている子供たちや、国際的な報道機関が入居する建物の破壊の映像だった。

一方で、声を取り戻し、自分たちの苦痛を最も効果的に伝えることができたパレスチナ人をようやく目にした。

ただし、私が言う「パレスチナ人」は、パレスチナの指導者などを指しているのではない。むしろ、若く、教育を受けた、見事に雄弁な男女を指している。彼らは、ガザとシェイク・ジャラーでの出来事に巧みに世界の目を向けさせ、感情ではなく論理を以て自らの主張を唱えた。

また、国際的なニュースチャンネルで見た若いパレスチナ人らは、長い間不当に抱かれていた無教養で野蛮な過激派というネガティブなステレオタイプを、ようやく打ち破ることに成功した。

同様に、ソーシャルメディアのおかげで、多くのアラブ人は、多くの人が存在すら知らなかった同情的なイスラエル人やユダヤ人を知ることとなった。占領の正当性を信じ、パレスチナ人の家や土地の没収を正当化する意見を誇示する入植者がいるのと同じように、非人道的な行為に反対の声を上げる反占領派のイスラエル人や元イスラエル国防軍兵士までもを目にした。

しかしながら、今回の戦争から多くの人が教訓を得る一方で、私は現在のパレスチナの指導者の多くは何も学ばないのではないかと懸念している。

言うまでもなく、もし過去にアメリカが仲介した和平交渉のいずれかに彼らが同意していれば、今回の戦争もシェイク・ジャラーの事件も起こらなかった可能性が大きい。また、国際法に守られた国家として認められ、必要があれば国際刑事裁判所(ICC)に訴えることもできたはずだ。

パレスチナの指導者らの一部が、イスラエル市民への攻撃を賛美することで、世間のイメージを悪化させ、味方を遠ざけたのは悲しいことだった。

イランとの親密な協定は、パレスチナ人にさらなる分裂と破壊以外の何をもたらしただろうか?

ファイサル・アッバス

それだけでなく、少しでも分別があれば、11日間の戦争で出た深刻な犠牲を前に、祝福の理由など見つからないだろう。しかし、ハマスの指導者らは厚かましくも勝利を宣言し、そしてなんとイランに感謝した。

イランとの親密な協定は、パレスチナ人にさらなる分裂と破壊以外の何をもたらしただろうか?

悲しいことに多くの人々は、イランは自らのためだけに関与しており、「原因」となることへの配慮はないという、圧倒的に明白な教訓をいまだに学んでいない。そうでなければ、なぜイランのいわゆるコッズ部隊が、パレスチナ人の首都を解放する代わりに、アラブの複数の首都を占領しているのか?

今回の戦争の瓦礫の中から何かが明らかになったとすれば、それはパレスチナの真の味方は穏健派のアラブ諸国であるということだ。忘れてはならないのは、状況を安定化させるための外交努力の先頭に立ったのは、サウジアラビアやエジプトといった国々だった。

現在ガザの再建が始まっているが、パレスチナ人が数年後に再び戦争を目の当たりにし、同じ経験を繰り返さないことを心から願っている。しかし、希望だけでは紛争は解決できず、リーダーシップが必要だ。同様にリーダーシップが欠如すれば、さらなる紛争と、多くの希望の喪失につながるのみである。

  • ファイサル・J・アッバスはアラブ・ニュースの編集者。
    Twitter: @FaisalJAbbas
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