
サウジアラムコの新規株式公開(IPO)は、ようやくその姿を現してきた。売り出される株式数は30億(全株式の1.5%)となり、これにより同社の企業価値は1.6~1.7兆ドルとなる。
純利益で見れば、アラムコは依然として世界で最も価値のある企業であり、現在の評価額で計算すると、株式の利回りは4.4〜5%となる。これは、欧米の国際的石油会社の平均利回り5.7%をわずかに下回る数字である。
株式の売却数は、当初予想されていたよりも少なくなっている。本IPOは、サウジ証券取引所「タダウル」でのみ行われるが、目論見書には当初、米国1933年証券法のレギュレーションSや規則144Aに従い、米国外の機関投資家が国内のIPOに参加できるという文言が含まれていた。
米国法への言及は11月17日までに削除された。このことが示すのは、発行者がこのIPO取引の大部分が国内取引であると予想しているということだ。これは、「サウジアラムコはサウジアラビア王国の重要資産であり、サウジアラビアの国民・機関に最高の機会が与えられることが極めて重要である」という同国の観点から見れば当然のことなのかもしれない。
アナリストと国際報道機関は、この株式公開に対し懸念を示していた。
多くの者が、原油価格の変動性と地政学的リスクに言及しているが、商品はこれまで常に不安定であり、サウジアラビアが事実上のリーダーを務めるOPECは、変動性を緩和するために最善を尽くしている。しかし下落傾向にある時には、価格の安定性を維持するため、実際に生産を制限する場合がある。
アラムコのIPOは、評価額が上限に達した場合、2014年のアリババを破り、世界最高額となる可能性がある。
地政学的リスクは常に存在している。米国やカナダを除けば、石油は地政学的に不安定な地域に存在している。9月に起きたアブカイクとフライスへの攻撃により、この事実は浮き彫りになった。しかしながら、これら攻撃からの復旧を果たしたスピードは、アラムコの優れた運用性を実証することとなった。1カ月以内に生産を完全に復旧させたのだ。
また、国が圧倒的大多数を占める株主のままであるという事実や、そのことが少数株主の権利にどのように影響するかという事に関しても懸念が残っている。よって取締役会と同社会長のヤシル・アルルマヤン氏は、自分たちが担う監督責務を真摯に受け止める必要があるだろう。しかし、彼らにそのつもりがあることに疑いの余地はない。
取締役会は専門家で構成されている。その50%が外国人であり、大規模な国際的石油会社や油田サービス会社の現役経営者または経営経験者である。アルルマヤン氏自身は、パブリック・インベストメント・ファンドの責任者とアラムコの会長に就任する前は、ベテラン投資銀行家であった。
さらに、一部のアナリストは、サウジアラビア政府が、その財政的状況が厳しくなったとき、サウジアラムコの財源から補填しようとするのではないかと懸念している。投資家の利益を保護するのは、取締役会及びその議長次第となるだろう。
またアナリストの中には、目論見書の中に、石油需要が2030年までにピークに達するという記述があることを批判する者もいた。この記述は、現在の気候変動に関する議論や、多くの国でeモビリティに移行しているという傾向を考慮すれば、過度に楽観的であると見なされていた。ここでも目論見書は、アラムコ自身の予測ではなく外部の予測を使用することで、用心に用心を重ねていたのだ。
12月初旬、本IPOがどのように展開するかを見るのは興味深いことだろう。IPOの分け前の一部を確保しようと多額の借入れが行われていることからも、国内投資家の間に大きな関心がある事がうかがえる。
OPINION: @Saudi_AramcoのIPOは、ようやくその姿を現してきた。売り出される株式数は30億(全株式の1.5%)となり、これにより同社の企業価値は1.6~1.7兆ドルとなる。(@MeyerResourcesより)
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