
チュニジアでの事件は、ムスリム同胞団がチュニジアの統治に関わればそうなるのではないかと多くの人々が危惧していたことが現実化したものだ。チュニジアの人々は、過去のアラブ諸国の人々と同じく、ムスリム同胞団とその「拒絶こそが解決策」というスローガンが見せかけであることを完全に見抜いている。
イスラム政党であるアンナハダが政権を握って2年になるが、チュニジア経済が崩壊し、新型コロナの流行に対処できなかったことで「近代国家に必要なのは頭脳明晰なテクノクラート(技術官僚)であり、ひげの生えた聖職者ではない」ことが証明された。アンナハダはまた、「民主的なイスラム」政党だという嘘をついた。「このような政党は、都合のいい時だけ市民的で民主的なふりをする」ということを、我々は一体いつになったら学ぶのだろう。その嘘が役に立たなくなった瞬間、仮面は剥がれ落ち、政党の真の姿が現れる。
2006年から2008年にかけてサアド・ハリーリ首相が武器をレバノン軍だけに制限する件や空港支配について話し合おうとした際に、ヒズボラがベイルートで何をしたかを忘れてはならない。ヒズボラは議会に代表者がいるにもかかわらず、力尽くでベイルートを制圧したのだ。同様に、ハマスがガザで何をしたかということや、その権力への渇望はパレスチナ統一や大義への優先順位を大きく上回っていたことも忘れてはならない。
以上のことから、アンナハダの信奉者であるラシド・ガンヌーシ氏が最近の事件に関して脅してくることは想定内だった。彼はロンドンのタイムズ紙とイタリアのコリエーレ・デラ・セラ紙に対し、「チュニジアの民主主義が回復しなければ、ヨーロッパに難民が押し寄せるだろう」と述べた。彼はヨーロッパの人々がこの件に敏感であることをよく知っており、これで国際社会を脅かせると考えた。しかし、彼は忘れてしまったようだが、自身の失策のせいで彼と彼の政党が政権を握ったこの2年間に、チュニジア人はヨーロッパに殺到している。イタリアに不法入国した移民の14.5%はチュニジアからだという厳しい現実があるのだ。
今ガンヌーシ氏が何を言おうと、2019年の選挙前に彼の政党が海外資金や匿名の寄付を受けた件で捜査されているのは事実である。
ヨーロッパを恐怖に陥れるというアンナハダの脅し、そしてチュニジアでの暴力は、目新しくも予想外でもない。これは、新たな問題を作り出すことで今ある問題から目をそらすという、イスラム主義政党がよく用いる策略にすぎない。
ファイサル・J・アッバス
驚くべき統計がある。チュニジアでは2021年前半に6,798件の抗議活動が行われたが、同時期の新型コロナによる死者数は1万5,000人に達している。2020年4月から2021年3月までに、新型コロナ感染者数は200%増え、経済は21%収縮し、失業率は17.8%に達した。最も悲劇的なのは、今年の上半期に、生活環境の悪化を原因とする自殺が78件あったことだ。
この責任は全てアンナハダにある。チュニジアの人々はそのことにはっきりと気づき、街頭での抗議を開始した。そして、カイス・サイード大統領が国を救おうと行動を起こした。ヨーロッパを恐怖に陥れるというアンナハダの脅し、そしてチュニジアでの暴力は、目新しくも予想外でもない。これは、新たな問題を作り出すことで今ある問題から目をそらすという、イスラム主義政党がよく用いる策略にすぎない。
イスラム教徒たちは、サイード大統領が勇気ある行動をとり、クーデターの提案をことごとくつぶすとは思っていなかった。大統領はフランスの政治家であるシャルル・ド・ゴールの言葉を引用し、「なぜ67歳の私が今から独裁者になると思うのか」と述べた。
ニューヨーク・タイムズのビビアン・イー記者は、チュニジアからのレポートで、「10年間改善の兆しがない失業率、貧困状態の悪化、蔓延する汚職、政治の行き詰まり、そして今回のパンデミックにより、政府に対する信頼は消え失せた」と述べた。同記者によると、話を聞いたチュニジア人のほとんどがサイード大統領の行動に満足し、その多くは歓喜しているようだという。これは、国民がどれだけガンヌーシ氏や彼のイスラム主義政党にうんざりしていたかを示している。
チュニジアの善良な市民たちは、耐え続けてきた以上のものを手に入れる資格がある。サイード大統領の行動を疑問視する人々は、チュニジアの歴史をふり返るべきだ。そしてハビーブ・ブルギバ大統領(チュニジアを近代的な進歩へと導いた偉大な民族主義指導者)が実践した原理を守り、サイード大統領が正しいことを理解すべきだ。