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今こそイラン政権に制裁を

大統領選挙で投票後のイブラヒム・ライシ大統領(2021年6月18日、イラン・テヘランの投票所で)。(ロイター)
大統領選挙で投票後のイブラヒム・ライシ大統領(2021年6月18日、イラン・テヘランの投票所で)。(ロイター)
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03 Sep 2021 08:09:12 GMT9
03 Sep 2021 08:09:12 GMT9

国連安全保障理事会は、イラン政権による深刻な人権侵害の増加を前に、沈黙を貫いている。

先月ハッキンググループによって流出したビデオにより、イランで最も悪名高い刑務所であるエビン刑務所で行われている、被収容者に対する暴行などの虐待が明らかとなった。

イラン政権としては珍しく虐待の事実を認め、イランの刑務所長であるムハンマド・メーディ・ハジモハマディ氏が謝罪した。彼はツイートの中で「エビン刑務所の映像に関し、このような容認できない行為の責任を認め、こうした悲惨な出来事が繰り返されないよう努め、不正を行った者に厳正に処罰することを誓います。全能の神、親愛なる指導者(最高指導者アリー・ハメネイ氏)、国民、そしてこのような過ちはあってもその働きは認められるべき立派な刑務官たちに謝罪します」と述べている。

イランの刑務所におけるこうした虐待は組織的に行われているが、残念ながらイランの指導者たちは罪に問われることはない。流出した16本のビデオクリップを分析したアムネスティ・インターナショナルは、次のように述べている。「エビン刑務所から流出した監視カメラの映像には、囚人に対するひどい虐待の様子が記録されている。拘束されている人々を拷問するなど、残酷で非人道的に扱いをすることも、イランの刑務官は認められているのだと再認識させられ、ぞっとする」

このような事件は、刑務所内に限った話ではないのだ。暴力と拷問を用いて敵対者や反体制派の人間を虐待するのが、イラン政権のやり口だ。先月、1,000人を超えるイラン政権の刑務所や虐殺の生存者が集まり、その恐ろしい体験を世界に向けて発信した。元政治犯や、イランの刑務所での拷問や虐殺の目撃者たちが登壇したWeb会議には、欧米の外務大臣や人権擁護団体など、各国の要人数百人も参加した。

国際社会が注目すべき課題のひとつは、政権の指導者たちが享受している刑事免責の文化に終止符を打つことだ。そのためには、ハメネイ師、イブラヒム・ライシ大統領、ゴラームホセイン・モフセニー・エジェイー司法長官などを、人権を著しく侵害した罪で起訴することが必要だ。

1988年に行われたイランの大虐殺は、中東、そしておそらく世界の独裁政権が犯した中で最も恐ろしい犯罪のひとつであり、当時のイラン政権は少なくとも3万人の政治犯を処刑した。そのうちの9割以上が最大野党ムジャヒディーン・ハルクのメンバーであったという。彼らが殺された理由は、イランに自由と民主主義をもたらそうとした政治的信念と取り組みにあると考えられる。

イラン政権は常に反対勢力を撲滅しようとしてきた。その結果、経済は破綻し、社会情勢は惨憺たるものとなり、人道に対する罪を犯し続け、コロナウイルスの大流行への対応にも大失敗し、10万人以上のイラン人の命が奪われた。

1988年の大虐殺は、まぎれもなくジェノサイドの一例である。2010年、ライシ大統領は 「すべてのムジャヒディンは神の敵であり、死刑に値する 」と宣言した。民主主義組織の大規模な連合であり、現政権の代替政党として最も人気があり、信頼性が高く、組織として整備された「イラン国民抵抗評議会(NCRI)」を、ライシ政権は特に警戒している。NCRIの次期会長であるマリアム・ラジャヴィ氏は、カリスマ的なイスラム教徒の女性であり、1988年の大虐殺の犠牲者とその家族のために正義を求める国際的キャンペーンを主導してきた。先週、彼女は「正義を求める(Call-for-justice)運動は、現政権を打倒し、自由を確立するための忍耐そのものである」とツイートした。米国と欧州に対し、1988年の大虐殺をジェノサイドおよび人道に対する罪と認定し、ライシ大統領の責任を追及するよう求めている。

国際社会、特に米国とEUは、今こそこの問題に率先して取り組まなければならない。

世界の国々は、イランの政権には穏健派が存在せず、イラン国民がその政権の打倒を望んでいることを認識しなければならない。

ライシ大統領は、1988年に数千人の無実の囚人に処刑命令を出した「死の委員会」4名のうちのひとりだった。だから世界のどの国も、権威ある国際フォーラムも、彼を受け入れてはならない。むしろ起訴され、おぞましい犯罪の責任を負わなければならないのだ。

それこそが、イラン国民やNCRIが求めていることなのだ。

暴力と拷問を用いて敵対者や反体制派の人間を虐待するのが、イラン政権のやり口だ。

マジッド・ラフィザデ博士

国連事務総長、人権高等弁務官事務所、人権理事会、人権特別報告者、国際人権団体によるイラン政権の刑務所の訪問、そして受刑者、特に政治犯との面会は認められなければならない。また、イラン政権の人権侵害を国連安全保障理事会に上程しなければならない。

イランの人権侵害と1988年の人道に対する罪について、国際的な調査が必要だ。世界中で民主主義と人権に対する脅威が高まる中、国際社会は、イラン政権で変わらず高官を務めている加害者を処罰する、政治的決意を固めなければならない。

そうしなければ、さらなる虐殺や人権侵害が引き起こされることは間違いない。国際社会の沈黙は虐殺容認のサインだと、イラン政権は考えるからだ。

  • マジッド・ラフィザデ博士は、ハーバード大卒のイラン系アメリカ人の政治学者。Twitter@Dr_Rafizadeh
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