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バイデン政権はイラクで同じ過ちを繰り返すのだろうか?

米軍関係者がアフガニスタンのヘルマンド州でアフガン治安部隊にキャンプを受け渡す様子。(防衛省プレスオフィス/資料、ロイター)
米軍関係者がアフガニスタンのヘルマンド州でアフガン治安部隊にキャンプを受け渡す様子。(防衛省プレスオフィス/資料、ロイター)
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05 Sep 2021 02:09:04 GMT9
05 Sep 2021 02:09:04 GMT9

米国のアフガニスタンからの慌ただしい撤退は、中東地域におけるワシントンと多くの国々との関係に大きな影響を与えている。パキスタン、イラン、中国、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンなどアフガニスタン近隣諸国に対して米国は外交に取り組んでいく必要があるが、同地域における米国の利害に対する最大の課題はバイデン政権がイラク、シリア、トルコとの関係でどんな行動をとっていくかということだ。

イラクは、アフガニスタンに続きアメリカが直面する最大の試練だ。現在ワシントンでは、ジョー・バイデン政権がアフガニスタンで犯した過ちをイラクでも繰り返すのではないかという疑問が投げかけられている。アメリカは新たな対イラク政策をまだ正式に発表していない。だが政府高官の声明を踏まえると、バイデン政権とイラクのムスタファ・アル・カディミ首相の関係は、アフガニスタンのアシュラフ・ガーニ前大統領の政権との関係とは異なるようだ。

イラクに残っている駐留米軍は、テログループ、特にイランやダーイシュと関係のあるグループからの脅威に対して、アフガニスタンの駐留米軍がタリバンに対処したのとは異なる対応をすることになるだろう。恐らく軍事的任務は「助言的役割」から「より広範な監視任務」へと変化し、さらには「限定的軍事行動」へと発展するかもしれない。

また、ワシントンは主要アラブ諸国の軍事組織と連携を強化する必要がある。バイデン大統領は演説の中で、アフガニスタンには「30万人規模」の軍隊がいたにも関わらず米軍と十分に連携せず、武装集団による同国制圧を阻止できなかったと非難した。

米国防総省は米軍駐留先のすべての政府に対し、予期せぬ軍事的事態が発生しても事前に計画された作戦を撤回したり縮小することはないと説明する必要がある。

マリア・マーロウフ

バイデン政権はシリア北部での軍事的プレゼンス強化を模索し、シリア民主軍への支援継続を確約するだろう。おそらく、シリア民主軍に降伏を求めるシリア軍とロシアなどの同盟国が提示してくるであろういかなる戦術的、短期的な解決策も拒否するようにバイデン政権は助言するだろう。

現状を踏まえると、米国がイラクとシリアの両方で軍事的プレゼンスを高めるためにはクルド人民防衛隊との協力関係の強化が避けがたい。アメリカのアフガニスタン撤退による戦略的な影響の一つに、トルコと緊張関係になる可能性がある。アメリカは、シリア北部におけるトルコ軍の行動範囲を制限しようとするだろう。

最近アメリカはヒズボラのリーダーであるハッサン・ナスラッラー氏による発言を非難していた。同氏は「イスラエルはアメリカのアフガニスタンでの失敗から学ばなければならないし、アメリカは同盟国として当てにならない」と発言していた。イラン最高国家安全保障評議会のアリ・シャムカーニ書記は「ベトナムやアフガニスタンでアメリカが迎えた結末は、イスラエルを占領しているシオニスト政権にとっても避けられない宿命だろう 」とツイートしている。

最後に、米国防総省は米軍駐留先のすべての政府に対し、予期せぬ軍事的事態が発生しても事前に計画された作戦を撤回したり縮小することはないと説明する必要がある。つまり、米国はある地域から軍事的に撤退する場合の方法論と、地域の秩序と安定を維持する方法について首尾一貫した戦略を持たなければならない。バイデン大統領がこの喫緊の政治的・軍事的計画を固め、今後も同盟国から信頼を得られるように取り組む時間はまだ残されている。

  • マリア・マーロウフ氏はレバノン人ジャーナリスト、ブロードキャスター、出版者、執筆家である。リヨン大学で政治社会学修士号を取得している。ツイッター: @bilarakib
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