Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • instagram
  • Home
  • クーデター、スーダンの血にまみれた過去の亡霊を呼び起こす

クーデター、スーダンの血にまみれた過去の亡霊を呼び起こす

2021年10月21日スーダン首都ハルツームで軍事政権発足について抗議する民衆デモ(ロイター)
2021年10月21日スーダン首都ハルツームで軍事政権発足について抗議する民衆デモ(ロイター)
Short Url:
28 Oct 2021 01:10:59 GMT9
28 Oct 2021 01:10:59 GMT9

もともと不都合な融合だった。唯一の驚きはそれがこれだけ長く続いたことだろう。月曜日の朝、スーダンの人々が目覚めるとすでに軍が実権を握り、アブダッラー・ハムドゥーク首相とその閣僚メンバー、ならびに軍のアブデル・ファッターフ・アル・ブルハン司令官が議長を務め政権を担う「統治評議会」の文民評議員を拘束していた。

その後の数時間は混乱が渦巻いていた。軍事クーデター以外のなにものでもなく、2019年に暫定軍事評議会と「自由と変化宣言勢力(FFC)」が合意した憲法宣言文書に大きく違反するこの事態に対して、数千人のハルツーム市民が街頭に繰り出し抗議した。

FFCはさまざまな政党・政治活動グループと反政府勢力の連合である。当時のオマール・バシール大統領政権崩壊に繋がった2018年12月の抗議デモを受けて発足した組織だ。

憲法宣言文書には総選挙が実施され、文民統治が確立されるまで、軍民が共同で政権を運営する3年間の暫定期間が定められていた。この文書に基づいて2019年にハムドゥーク氏が率いる文民統治政府が設立された。またバシール政権解体と治安組織・部隊の再構築に向けた権力剥奪委員会が設立された。

この軍民共同統治体制は米国を筆頭とした西側諸国、アフリカ連合、アラブ連盟なども支持していた。だがわずかな期間を除いて60年間ほぼ軍政が敷かれていたこの国は、強力な民兵組織「急速支援部隊」を含む軍部が民主化移行を妨害し、不安定な提携関係を終了する危険性を常にはらんでいた。

そして月曜日にそれは現実となった。軍がインターネットや電話通信を遮断し、橋や交通の要所を封鎖するなかで、ハルツームが数時間にわたって混乱状態に陥ったのち、アル・ブルハン氏はテレビの全国放送において新しい現実を提示した。

実際にそうだと口にしていないが、軍事評議会の行為は完全なクーデターに相当する。国家非常事態が宣言され、統治評議会・閣僚評議会・権力剥奪委員会がそれぞれ解散させられ、憲法宣言において軍民統治合意や文民勢力の役割について約定した条文が停止された。またアル・ブルハン氏は民政移行を約束し憲法裁判所を設立しながらも、知事や省庁事務次官らを罷免した。

EUと米国はクーデターおよび文民の主要人物拘束を非難し、支援停止をちらつかせた。アラブ連盟・国連・アフリカ連合は懸念を表明した。適任者を大臣に据えた包括的な政権樹立を約束したアル・ブルハン氏は、南スーダンとの戦争やダルフールおよび東スーダンにおける紛争を終わらせたスーダン和平合意を尊重し、東スーダンの人々の苦しみに理解を示すことも確認した。

軍部をクーデターへと突き動かしたのは2つの出来事である。1つは東スーダンの部族指導者たちが起こした民衆蜂起だ。ハルツームへの幹線道路は遮断され、石油輸出拠点として戦略的に重要なポート・スーダンが麻痺したことにより、全土に広がる経済危機がさらに深刻化していた。

ここ数ヶ月の間、政府は小麦・必須医薬品・燃料が底を付きつつあると警鐘を鳴らしていた。東スーダンの部族指導者らはミネラル資源が豊富でありながらスーダン最貧地域の1つである同地域の軽視が改善されない、として暫定政権の解散を求めていた。

2つめの出来事は、スーダンの民衆が民政を要求して街頭で抗議活動を行なった1964年の革命の記念日が先週木曜日だったことだ。軍はFFC内部で各派閥が影響力や権力をめぐってせめぎ合い不協和音が大きくなっていることを見ていた。政界人は軍が国を安全に保つ役割を果たしていないと非難し、軍は政権がインフレ対策や雇用改善を実施していないと批判した。

スーダンの部族・人種・イデオロギー・宗教を取り巻く複雑な亀裂は1956年の独立以来幾度となく軍事クーデターや内戦を引き起こしてきた。

オサマ・アル・シャリフ

いずれにせよ、この国の動乱の歴史の次章がいかなるものであるかは不透明だ。内戦勃発や東スーダンが独立を試みることもありうる。これは近隣諸国にとって悪い知らせである。論争の的となっているナイルダム貯水に関するエチオピアとの合意に向け同国に圧力をかけるため、エジプトにとってスーダンの安定化は欠かせない。

スーダンの部族・人種・イデオロギー・宗教を取り巻く複雑な亀裂は1956年の独立以来幾度となく軍事クーデターや内戦を引き起こしてきた。1985年にはガファール・ニメイリ大統領独裁政権の統治に反対する労働者の抗議活動を受けて、軍司令官スワール・アル・ダッハーブ大将がクーデターを起こし、総選挙1年後の民政移管を約束していた。アル・ダッハーブ氏はこの約束を尊重し民政移管が果たされたが、これはこの国の歴史からすれば例外である。今回のクーデターで実権を握った軍が2023年7月に同様であると信頼できるのか、が現在の最大の疑問である。

  • オサマ・アル・シャリフ氏はアンマンを拠点として活躍するジャーナリスト・政治評論家である。Twitter: @plato010
特に人気
オススメ

return to top