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首相の命が狙われたイラクは正念場を迎えている

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11 Nov 2021 08:11:13 GMT9
バリア・アラマディン
11 Nov 2021 08:11:13 GMT9

イラクのムスタファ・アル・カディミ首相を暗殺しようとしたのは誰なのか。そこに謎は何もない。標的にされた本人がこう宣言している。「我々は彼らを良く知っている。我々が彼らを暴露する」と。治安関係の情報筋で、犯人はイランが支援する民兵組織であることが確認された。アル・カディミ氏は公に犯人を名指しするべきである。それにより、ハシュド・アル・シャアビ (民衆動員部隊)の構成員が自分たちの最高司令官を暗殺しようとしたことに疑いの余地はなくなるだろう。

攻撃に先立って、アサイブ・アフル・ハック(AAH)の指導者であるカイス・アル・カザリ氏がアル・カディミ氏に対する脅迫と糾弾を公表していた。軍事的指導者であるカイス・アル・カザリ氏は、2019年に起きた数百人のデモ参加者殺害の監督責任者である。そして無数に行われた宗派間の殺人や暗殺の責めを負うべき人物である。この人物が臆面もなく、ハシュドの暴力的な扇動者らを弾圧したことについて首相を非難していたのだ。扇動者らは治安部隊に石を投げて、選挙結果を強引に覆そうとしていた。その後アル・カザリ氏は、イラクの情報機関がアル・カディミ氏に対する攻撃のお膳立てをしたのだと喜劇的な主張をした。アル・カディミ氏は同じ情報機関の元長官なのである。

カタイブ・ヒズボラの広報担当者は「元首相の家に飛ばしてドローンを失いたいなどとイラクでは誰も考えていない」と皮肉を述べた。さらにカタイブ・サイイド・アル・シュハダのアブ・アラー・アル・ワライ書記長は、アル・カディミ氏は暗殺されて当然だとほのめかし、二度と首相になれないだろうと嘲笑した。

ハシュドの民兵は、自分たちは集団的に責任を逃れることができると考えている。国が自分たちに対抗するような行動を起こせばいつでも突撃隊で首都に押し寄せて、誰かが正々堂々と意見を述べたとしても暗殺できると考えているのだ。

ハシュドは全ての人々に、自分たちが張本人だと知らしめたいと考えている。そこがポイントである。惨めなほど僅かな議席しか確保できないとしても、イラクにおける現実的な権力だと思われたいと切望しており、自分たちの前に立ちはだかる者は誰であれ殺すつもりでいるのだ。

日曜の事件で、いかに武闘派がアル・カディミ氏が2期目に就くことを恐れているかが示された。おそらくカディミ氏がイラクで唯一の、充分な勇気を持って民兵組織の支配力に逆らって行動できる政治家だからだ。

しかし、とあるアナリストが指摘するように、今回の「愚かで近視眼的な行動」は既に民兵にとって裏目に出ている。この事件でアル・カディミ氏の正当性にさらに大きな支持が集まることになった。同時に、ハシュドは殺意を持った卑怯な犯罪者集団だということが明るみに出た。

先月の選挙は、イラクやレバノンやその他の地域におけるイランの代理勢力にとって最後の審判の瞬間を象徴するものとなった。今までは、ヒズボラやハシュドは常に選挙で満足のいく支持が得られるように勝手に選挙の規則を改定することができていた。議会の連合を形成し、行政機関に対する支配力を発揮できるようにするためである。しかしイラクとレバノン両国の危機は、こうした組織や連合の全国的な支持率が劇的に急落するという結果を招いた。

日曜の事件でアル・カディミ氏の正当性にさらに大きな支持が集まることになった。同時に、ハシュドが殺意を持った卑怯な犯罪者集団であることが明るみに出た。

バリア・アラマディン

イラクでは今回、2018年には329議席中約50議席あったハシュドのファタハの名簿が、たったの14議席にまで崩壊した。それだけではなく、2020年1月にコドス部隊のガーセム・ソレイマニ司令官が殺害されたことで、対抗する連合を脅してシーア派の派閥に協力させるための実力ある人材がいなくなった。不運な後継者イスマイル・ガーニ氏が、アル・カディミ氏への攻撃事件の直後、危機の影響に対処しようと大急ぎでバグダッドに赴いたのではあるが。

イランは多国籍の民兵代理勢力に何十億ドルも投資しており、それを手放すつもりはない。従って、もしもヒズボラとハシュドが政治的支配力を保つようなことがあれば、むき出しの軍事力でこれを強化するに違いない。

アル・カディミ氏の暗殺未遂事件は、このような完全対立に向かおうとする変化の具体的な実例だ。イラクの一部では、ハシュド軍は事実上の権力者となっている。治安部隊の多くの部門が、特にバドル協会(Badr Organization)のような民兵組織出身の人員で大部分構成されている。彼らはハディ・アル・アミリ氏のような人物に優先的に忠誠を誓っている。レバノンでは、ヒズボラが暗殺や路上でのさらに攻撃的な扇動行為に訴えることになるのは時間の問題であろう。

このようなイランの代理勢力は、民主的敗北を中和するための手段として、自分たちは各国を本格的な紛争に突き落とす準備ができているのだということを行動で示している。自分たちが戦場で最強の軍団なのだという信念を持っており、強硬派の中には戦争の可能性を肯定しているように見受けられる者もいる。自分たちが頂点に君臨できると考えているようだ。

イラクという国家や国際社会にとって、選挙でのハシュドの敗北は、その支配力を奪う見逃せないチャンスを意味している。予算を削減する、イラン系の強硬派を主役から外す、あるいはゆすりや犯罪を行い国境検問所から不法に利益を得るハシュドの力に異議を申し立てることができる。東部の隣国イランとのイラクの不均衡な関係を再調整するにあたり、アラブ諸国はさらに大きな役割を果たさなければならない。ハシュドやヒズボラや、その他の代理勢力は、この地域でのイランの攻撃的な瀬戸際政策の道具として、世界が見ている前で繁栄した。世界はあまりにも長い間行動を起こせずにいた。米国のジョー・バイデン大統領はアフガニスタンの事もあり、これ以上の外交政策の大失敗は許されない。

イラクの武闘派が首相を暗殺しようとして、その攻撃について開けっ広げに首相を愚弄できるという事実は、これ以上の証拠は必要ないとは思うが、民兵が国家よりも大きな武力を持ち、国家の法律の外側に存在できてしまう国では真の民主的プロセスは存在できず、この一触即発の地域が新たな紛争に陥る可能性があるということを示している。

アル・カディミ氏がハシュドを遠ざけておく努力をしたことを国際社会が賞賛するだけではもはや不充分である。アル・カディミ氏は標的になった。イラクを永久的な無政府状態にしないために、文明世界に対する戦争をしているつもりの民兵組織に支配させないために、アラブと西欧諸国の力強い支援が必要である。

バグダッド中心部にある首相の住居への攻撃は最後の審判の瞬間だった。今こそイラクとレバノンの人々が、破壊の悪魔に立ち向かう時である。イラクとレバノンは主権国家として繁栄できなければイランの植民地になり衰退してしまうだろう。最近の事件がそれを証明した。

アル・カディミ氏とレバノンのナジーブ・ミカティ氏は全国的な支持を得られるだろう。彼らには等しく惜しみない国際的な支援が与えられるに違いない。ただし国家を救うチャンスを、まだそれが可能なうちに掴んだならば、である。

バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

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