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2022年の安全保障課題に取り組む、協調の鍵

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05 Jan 2022 10:01:38 GMT9
05 Jan 2022 10:01:38 GMT9

パンデミックが起こり、世界中で経済が崩壊し、中東からアジアまで緊張が高まった2021年は、安全保障の観点からは難しい年だった。昨年の出来事は、世界的な安全保障の危機とは最早、国々が独自に、あるいは地域的な連携によって解決できる脅威や課題ではなく、国際協力によって解決すべき — もしくはより良く管理する — ものであると証明した。従って2021年が明確にしたのは、段階的緩和と外交を主な理念とする、より多くの協力と結束の必要性だ。

国際的な議題の大半を占め、2022年も続く可能性の高い危機は3つのカテゴリーに分類できる。世界的危機、地域的危機、そして国内危機だ。世界レベルでは、米国および中国、さらにロシア間の争いがいくつかの地域で反映された。それが最も顕著だったのは、ウクライナと台湾の危機だ。

地域レベルでは、数千人の死者を出し、200万人以上が住む家を無くしたエチオピア内戦がより広範な安全保障上の脅威を提示した。エチオピアは、人身売買と不法移住の主な源になっている。紛争状態が2022年にも続けば、難民と違法移住者が近隣諸国に避難場所を求めるようになる。そうなればこの地域は高確率で、深刻な人道問題に直面するだろう。もう一ヶ所、地域的な課題が現れたのはパレスチナ戦線だ。イスラエルとパレスチナ抵抗組織ハマス間の争いは、2021年5月の最初の数週間で大幅に悪化した。それは、中東の安定を脅かしかねないという懸念につながっている。

そのまた一方で、国際的に煽られた中東諸国 — 具体的にはシリア、リビア、イエメン — の内戦は昨年、動きを止めたかのようにも見えた。これらの国々での内戦は、外的な力、つまりは米国やロシアが国際的な指導力を主張するのための戦場と化していた。だがパンデミックにより、それらの内戦に関わっていた世界的、あるいは地域的な役者らは、しばらくの間自国へと焦点を切り替えたのだ。現在では、パンデミック後の時代に、それらの国々で事態がどのように発展するかが問題となっている。

あらゆる世界的、地域的な危機の中で、2021年中最も重要な展開となったのは米国のアフガニスタン撤退だ。それは一部の周辺諸国へ安全保障問題を、そして地域内の別の国々には機会を提示した。

2021年を通して安全保障分析の大半を占めたのは地域紛争だ。けれども一方で、過去には例のなかった新しい安全保障問題も国際協力を必要とした。

シネム・センギス

2021年を通して安全保障分析の大半を占めたのは地域紛争だ。けれども一方で、気候変動や新型コロナウイルスとその新規変異株など、過去には例のなかった新しい安全保障問題も国際協力を必要とした。重大なパリ協定(温室効果ガスの排出量削減を180カ国以上で目指す気候条約)への米国の復帰、そして気候変動に取り組むため世界の指導者たちを集めたグラスゴーでのCOP26(気候変動枠組み条約締約国会議)は、最も重要だった2つの出来事だ。気候変動が気候関連の安全保障を脅かし、既存の政治的課題、社会的課題、そして経済課題を各国にとっていっそう複雑なものにすることは明らかだ。

パンデミックは、国家間だけでなく、国内における不平等をも曝け出した新手の安全保障課題であることが証明された。新型コロナウイルスは、ワクチンへのアクセスが不足している国々に不均衡な影響をもたらしている。その上、安全保障専門家は、さらなる変異株の出現に備えるべきだと警告している。

最後に、新しい課題として登場したのがサイバーセキュリティー問題だ。特に注目を集めたのは、イラクのムスタファ・アル・カディミ首相のドローンによる暗殺未遂と、最も重要な国際的議題として扱われたサイバースパイウェア「Pegasus」だ。サイバーセキュリティーの脅威は、経済的苦境を引き起こす。そして時に、国内の政治的混乱さえ招くことがある。

総合的には気候変動とパンデミックが、全世界が直面している中で最も目立ち、従来と異なる安全保障課題として留まっている。安全保障と経済の問題は、この数年でますます結びつきを強くしている。また内戦や不法移住など、既存の旧来の脅威も各国の手腕を引き続き試している。よって現代における安全保障への脅威の複雑性は、地域的議題や世界的な議題に重大な影響を及ぼしている。国家の物理的、政治的境界を迂回し、社会の機能的統合性と社会的完全性に挑む脅威へ対処するにあたり、協力の重要性はさらなる注目を集めるようになっている。

2021年は、天候や健康、そして経済的な課題が社会的、政治的危機を引き起こしかねず、それが地域の安全保障や安定性にリスクをもたらすということを浮き彫りにした年だった。結果として今年も、気候変動とパンデミックに関する問題が再び中心的な話題となるだろう。

  • シネム・センギス氏は、トルコの中東との関係性を専門とするトルコ人政治アナリスト。ツイッター:@SinemCngz
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