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サウジの鉱物資源セクター:明かされる秘宝の存在

サウジアラビアの鉱物資源開発の要点は地質調査の計画と包括的な戦略の策定である。(AN資料)
サウジアラビアの鉱物資源開発の要点は地質調査の計画と包括的な戦略の策定である。(AN資料)
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10 Jan 2022 02:01:59 GMT9
10 Jan 2022 02:01:59 GMT9

2020年のG20サミットなど、国際的なイベントの開催地としての地位を確立したリヤドで、今月、「未来の鉱物資源フォーラム」が開かれる。サウジアラビア内外の代表者や鉱物資源セクターの専門家、要人など2,000人以上が集まる予定だ。

「未来の鉱物資源フォーラム」は、サウジアラビアの鉱業の目標を前進させようとする世界規模の意欲を明確に示すイベントだ。フォーラムの主催者によると、サウジアラビアだけでも1兆3,000億ドル規模の未開発の鉱業資源があるという。サウジアラビアの約70万平方キロメートル範囲で鉱物資源に関する物理的・地球化学的調査が実施されたことで、国内外の潜在的な投資家に向けた土台作りが容易になった。この調査は世界最大級と見なされている。

政府主導による初の取り組みは、歓迎すべき機会だ。1970年代から1980年代にかけて、鉱業セクターは、従来の炭化水素セクターと比べて政府計画や公的支出における優先度が低かったからである。

サウジアラビアの国内総生産の多様化が不可欠であることを考えると、鉱物資源セクターの重要性は次第に高まってきている。例えば2008年に国営鉱業会社マーデンが民営化され、再編が行われて、金、ボーキサイト、リン酸塩、アルミニウムの分離、鉱物資源のセクションに注力するようになったことからも明らかだ。

マーデンは、リン酸肥料の生産と販売で世界有数の企業になることを目指している。サウジアラビアのSABICと、ALCOAのような国際的合弁事業の両方と合弁事業を設立した。ALCOAはアルミニウムの生産と管理で世界をリードする企業である。

現在は金の採掘がその優先事項のひとつになっている。サウジアラビアが各種の豊富な鉱物資源を有する国であることはあまり知られていないかもしれないが、レアアース、ダイヤモンド、銅、リチウムなども採掘され、湾岸地域では最大規模である。

鉱業のバリューチェーンを強化するため、サウジ政府は、鉱物資源の採掘のみの古い政策から、今後10年間で十分に統合された鉱業を作り出すための新しい政策に移行している。それに沿って、このセクターの運営の枠組みを評価し直し、業界の方針を国際的な慣行に合わせていっている。

鉱業法批准の要点は、サウジアラビアが他の国際的な鉱業投資制度の中でも地位を高められるようにすることだった。

天然資源の主権とそれが外国に開拓されてきたことは、常に政治的にデリケートな問題である。サウジアラビア統治基本法の第14条によると、国境内の国土または沖合の地下または地上にあるすべての資源は国に所属するとされている。

サウジアラビアの鉱業においては、この規則を民間部門への「ライセンスの譲渡」の国際的慣行とどのようにすり合わせるかが問題だった。閣僚会議の前に提出された修正案は、産業鉱物資源省がそのようなライセンスを付与できるようにする内容だった。国に対する信用リスクの関与の問題はフォーラムで提起される予定だ。

サウジアラビアの鉱物資源開拓の要点は法的枠組みへの対応だった。鉱業法を近代化し、サウジアラビアの地質調査計画を策定し、セクターの包括的な戦略を決めることである。

2004年の新しい鉱業投資法には、「先着順」の原則、ライセンス数の無制限、前払金要件の撤廃、投資インセンティブの導入、税金の総額を利益の25%以下とすることなどが盛り込まれた。

サウジアラビアの「隠れた」宝によって、数十年前に石油が果たしたような役割を鉱業が担うようになるかもしれない。

モハメド・ラマディ博士

サウジアラビアの国土が広く、鉱物資源が多様な場所に存在することを考慮すると、鉱業セクターにサービスを提供する鉄道網を国内に設置することは成功に不可欠であり、産業用探査の拠点を結ぶことも重要だ。

目的は明確だ。予定されているフォーラムでも議論されるが、基本的にはサウジアラビアの経済基盤を拡大し、高価値の雇用を通じて新たな経済機会を創出することである。

鉱業先進国としての過去の経験から、鉱業に1ドルかけるごとに8ドルから10ドルの純収益が国家経済にもたらされ、さらに鉱物の輸入収支のバランスが緩和されることが証明されている。

「未来の鉱物資源フォーラム」によると、循環型経済を動かす燃料の世界的な需要を満たすためには、世界は鉱物の生産量を7倍に増やす必要があるが、このセクターにおける環境的懸念は念頭に置いているという。この件についてもフォーラムで取り上げられる。

経済的な付加価値や雇用を生まない従来の単なる鉱物輸出ではなく、鉱物資源の利用型産業を確立しているという点では、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、チリなど鉱業の歴史が豊かな国の経験が注目されている。

重要な鉱物の例のひとつがレアアースだ。これは半導体業界にとって非常に重要であり、中国が世界最大の埋蔵量を抱えているため、この原料の入手をめぐって世界の超大国間で摩擦が生じる可能性が常にある。

サウジアラビアの鉱物資源セクターへの外国の参入は不可欠である。この分野でのサウジアラビアの経験が比較的浅いためだ。一方、より確立されている石油資源セクターでは、あらゆる業務分野にサウジアラビアの技術力が存在している。それは今回のフォーラムに国外からの参加者が多いことからも明らかだ。

壮大な鉱物資源のビジョンを計画することと、高い技術を持つ国内の労働力でそれを実行することは、別の課題である。サウジアラビアの大学は、この分野における将来の学生の需要に応えるため、既存の地質学、鉱山学、鉱物学のカリキュラムを改めて活性化させる、あるいは新学科を設立する必要がある。

これは容易な課題ではない。最近の調査によれば、サウジの若者たちはメディア、観光、エンタテインメント業界での仕事を希望し、以前は地位も人気も高かった炭化水素分野への就職を敬遠しているというからなおさらだ。

鉱業と鉱物資源にかかわるキャリアは、石油や化学工学系の仕事に比べて華やかさに欠け、危険度も高いと考えられているので、鉱物資源セクターのキャリアを、やりがいがあって安全で魅力的な選択肢にするためには多くの取り組みが求められる。採掘技術の発達により、数十年前に比べれば安全性は向上しているが、採掘業務に、過酷な労働環境を好む頑強で自由奔放な労働者が集まっているのは変わらない。

結論を述べると、サウジアラビアの「隠れた」宝によって、数十年前に石油が果たしたような役割を、鉱業が担うようになるかもしれない。

  • モハメド・ラマディ博士は、シニアバンカー、ダーランのキング・ファハド石油鉱物資源大学の金融経済学教授を務めた。
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