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イランの代理民兵組織がイラク首相の反民兵組織令に逆らう

上は2016年11月20日のファイル写真で、タル・アファル空港で狙撃犯が発砲して来る方を向いているアル・ハシュド・アル・シャアビのメンバー。(AFP通信)
上は2016年11月20日のファイル写真で、タル・アファル空港で狙撃犯が発砲して来る方を向いているアル・ハシュド・アル・シャアビのメンバー。(AFP通信)
07 Jul 2019 02:07:50 GMT9

エルサレムで最近開かれたロシア、米国、イスラエルの三者会談には、大きく異なる判断が下されている。これを、地域の影響力を分割する新たなサイクス・ピコ協定としてメロドラマ的に見る者たちもいれば(とりわけ出席者にアラブ関係者がいないことを考えれば)、不合意であることへの新たな合意として懐疑的に見る者たちもいる。

とはいえ、外国軍や外交施設、石油施設への攻撃がエスカレートするのを受け、背後にイランの支援を受けてイラクで活動する武装集団の勢力を削ぐ必要があることには合意したようだ。さらに米国諜報筋によれば、サウジアラビアの施設を標的としたミサイル攻撃は、イラク南部の武装集団が発射しているのだという。

これらの要因が機運となり、アーディル・アブドゥルマフディー首相は先週、アル・ハシャド・アル・シャアビ(すべての民兵組織)の構成組織は、これまでの提携関係を捨て、すべて国軍に完全一体化しなければならないとの声明を出した。戦闘員たちは政治とは距離を置かなければならない。武装集団たちは7月31日までに、この布告に従うか、あるいは不法集団とみなされるかを決めなければならない。これは派閥民兵組織を育成するイランを大きく挫くもののように聞こえる。しかしそれは、最初から失敗が運命づけられているそのような一連の構想の最新版に過ぎない。

ISIS(イスラム国)に対する本格的作戦の戦闘が終結した後、これらの戦闘組織はさまざまな場所で影響力を競い合って組織間で小競り合いをし、麻薬乱用や恐喝から、人身売買やマネーロンダリングまで、あらゆる犯罪活動を互いに競い合っている。ハシュドの幹部たちからの慎重な歓迎は、この指令がこれらの慢性的対立関係を克服し、ハシュドをより強固で一致団結したものにする機会となることへの彼らの期待を示しているのかも知れない。

カイス・アル・カザリは、この決定はハシュドの「解散か統合かのすべての試みを休止させる」だろうと述べた。しかしヒズボラ武装組織は、政府の優先事項は米国の「駐屯軍」を排除することであるというのに、「『ムジャーヒディーン(ジハードに参戦する戦士たち)』を犯罪者として扱うこと」は、「治安維持のための努力を支援している構成員たち」を害することになると警告した。別の武装組織のリーダーは、自分たちの派閥は開設したままにしておく秘密の事務所があるとAP通信に述べた。イラク首相とアメリカ人たちは、もし決定を実行することができると考えているのであれば、彼らは「夢を見ている」のだと豪語した。

治安部隊を構成する主要な部隊は、イラク内務大臣の支配力と、イラク中部の広範囲の州に及ぶハシュド軍司令官ハディ・アル・アミリの権限により、事実上はハシュドの管理下に置かれている。アブドゥルマフディー首相は極めて無力であることが証明されており、時折サドル派と アル・アミリ部隊の二派閥連合の仲介役を務めるだけに留まっている。何年も論争した末に、あまり名の知られていないヤシン・アル・ヤシリ(二派閥連合と連携している)を内務大臣に指名することで、ハシュドとイランの支配を続行させることができるだろうと期待されている。

サダム・フセイン後のイラク国家は、シーア派民兵組織と無益な法的いたちごっこを繰り広げてきた。民兵組織のリーダーたちは、法令の本来の意図を自分たちの目的に沿うように捻じ曲げることに関してはエキスパートだ。彼らは自分たちを、ISISの脅威に対してボランティアを動員したアリ・アル・シスターニ師の有名な2014年6月のファトワー(勧告)におけるアル・ハシャド・アル・シャアビ(すべての民兵組織)として、その合法性の根拠としている。しかしアル・シスターニはボランティアたちに、民兵組織ではなく正規軍に入隊するようにと指示したのだ。彼は、すべての部隊はイラク国旗の下で戦うべきであり、個別の軍旗やアイデンティティーを持つべきではないと強調した。民兵組織のリーダーたちは、イラク国旗に自分たちのロゴを縫い付けるというふざけた対処の仕方をした。

ヌーリー・アル・マーリキー首相の支援のもとで、主要な民兵派閥組織はハシュドの設立以前にすでにその活動を拡大させていた。アル・マーキリーは、アル・ハザリのような悪名高いテロリストたちの釈放を保証し、彼らの政治姿勢を合法化した。2014年のハシュド創設は、単にこの現実を強固にしただけであり、いくつかの民兵組織の規模を10倍に拡大させる結果となった。

アル・マーキリーに取って替わるハイダル・アバーディが首相になったとき、既存の軍隊組織のなかにハシュドを正式に組み込むという本格的な対策が取られた。これは2016年に正式に立法化された。しかし何も変わらなかった。ハシュド軍は、ローカルな司令官たちの下で自分たちの個別アイデンティティーのもとに活動し続けた。そしてその司令官たちは最終的にその指令を、クッズ軍司令官のガーセム・ソレイマーニーから受けていた。アバーディー首相はそれでもなお、ハシュドの地位を正則化するはずの別の法令を2018年5月に発令したが、それはちょうどハシュドのリーダーたちが選挙で競うことで憲法を否定しているときに重なった。

イランは、イラク歴代最弱の首相が命令を下したからといって、40年にわたり投資してきたイラク国内の資産を簡単に手放したりはしない。制裁措置で締め付けられたイラク政府がレバノンのヒズボラやシリアの代理組織への資金流出を減額してきた一方で、ハシュドはイラク国家から人件費を受けている。信頼できる情報筋によれば、ハシュドの財源のいくらかは、イラク政府の利益のために吸い取られているという。制裁回避、収益確保、拡大する影響力のネットワーク、敵方に報復する代替ルートなど、様々な現在の圧力が、このようにイラク政府をこれら代理武装組織にますます依存させることになっている。ハシュドの部隊は、政治的圧力が消え去って通常業務へと戻る前に、贔屓目に見ても明白なその知名度を一時的に弱めるだろう。

学者たちや意思決定者たちは民兵組織を、イラク政治生命の切り離せない構成要素のように説明していると聞く。これら敗北主義者たちの評価に従えば、我々はこの現実に自らを慣れさせるしかないことになる。しかし代表制政治システムは、昨年イラクの選挙中に起きたように、投票者たちを威嚇して自分たちの好む結果に向けさせるゲリラ民兵組織とは相いれない。イラクは、厚かましいイランの干渉の世話になっている限り、主権国家として機能することはできない。一致団結した国家としてステイタス、あるいは民兵組織による無政府状態。イラクはその両方であることはあり得ないのだ。

イラク政府は、長期間にわたる戦略を粘り強く実行することに関しては、米国政府より有能であることを何度も証明してきた。自分たちが不利な状況に置かれているときには投資を縮小してきたが、最初の10年から次の10年にかけて、着実に地域の支配力を拡大させている。

ハシュドを解散させれば、これら民兵組織がまた別の外見を装って出現するだけであり、意味をなさない。米国とイラクの高官たちは私に、イラクで強大な力をもつ民兵組織は、軍事対立を通してのみ骨抜きにすることが可能だと語った。よってそれらの根絶は、集中的かつ継続的な力強い外国の支援を要すると。

アブドゥルマフディーの法令は、立派な意図をもつ声明である。我々は、彼や彼の国際支援者たちがリーダー的資質をもつのかどうか、そして政治的意思がこれを実現させることができるかどうか、見守ろうではないか。

バリア・アラムディンは中東および英国で活躍する受賞歴をもつジャーナリストであり、ブロードキャスターである。彼女はメディア・サービシズ通信社の編集者であり、数々の国家元首にインタビューをしてきた。

https://www.arabnews.com/node/1522041

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