Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

ウクライナ危機がイラン核合意交渉に与えうる影響

2022年2月28日、ウクライナの分離主義者が支配するドネツク市で、最近の砲撃の後、燃えた車から煙が上がっている。(ロイター)
2022年2月28日、ウクライナの分離主義者が支配するドネツク市で、最近の砲撃の後、燃えた車から煙が上がっている。(ロイター)
Short Url:
01 Mar 2022 10:03:43 GMT9
01 Mar 2022 10:03:43 GMT9

世界中がロシアのウクライナ侵攻とこの危機がもたらしうる結果に気を取られているが、包括的共同行動計画(JCPOA)としても知られるイラン核合意を再建させるための国際協議は、依然として米国務省の議題に載っている。

ペルシャ語日刊紙アフタブ・ニュースによると、イラン議会の国家安全保障委員会のヘシュマトラ・ファラハトピシェ前委員長は金曜日、ウクライナ危機が核合意を加速させるかもしれないと慎重な楽観論を示した。

「私は戦争がJCPOA協議に落とす長い影について悲観的だが、それでもプーチン氏のウクライナ攻撃によって、欧米がイランとの協議を妥結させる気になるかもしれないと考えている」とファラハトピシェ氏は述べた。彼は、その考えの理由として、2点を挙げた。米国とその欧州の同盟国は、イランがこれ以上ロシアの軌道に乗るのを望まないという点、そして、交渉に対するロシアの影響力をなくしたいという点である。

しかし、ウィーンでの協議を調整しているEUのエンリケ・モラ政治局長は、ファラハトピシェ氏と異なる見解を持つ。彼は先週、ウィーンでの協議が重大な局面を迎えているとツイートした。「10カ月に及ぶ交渉の末、我々は終わりに近づいている。結果はまだ不明だ。重要な問題を解決する必要がある。しかし、すべての代表が全面的に参加している。緊迫した作業だ」と投稿した。

2015年のJCPOAに付き添った米国のロブ・マリー特使でさえ、イランとの新たな核合意が間近に迫っていることに懐疑的な見方を何度か示している。

Axiosのバラク・ラヴィド氏によれば、米国政府高官が先週、イラン政府関係者と一部の欧州交渉担当者による数日以内に合意が成立する可能性を示唆する発言を「非常に時期尚早な憶測」であると述べたという。「イランの核開発のペースと、それがJCPOAの存続に意味するものを考えると、残された課題を解決するための時間はほとんどない。これらの課題が処理されない限り、合意は成立しない」と同高官は述べた。

これまでのところ、米国政府高官は全員、争点を挙げることを避けているが、双方が相手に対する影響力を得ようとしているようだ。米国は、イエメンの代理勢力であるフーシ派のテロ組織指定を復活させる可能性があるとイランを間接的に脅しており、一方イランは、政治的利益のためにバイデン政権がこの合意を再建させる必要性があることを理解している。

米国政府高官らは、争点を挙げることを避けているが、双方が相手に対する影響力を得ようとしているようだ

ダリア・アル・アキディ氏

ホワイトハウスは先月、ジョー・バイデン大統領がフーシ派をテロ組織として再指定し、同組織に資金提供する国際ビジネスネットワークに対する制裁を発動することを検討していると発表した。しかし、バイデン氏は、フーシ派とその指導者のテロ組織指定復活が、米国とこの地域の緊密な同盟国の利益を守るために不可欠であると認めることを、それを要求する多くの意見にもかかわらず、拒否している。フーシ派への制裁が更新され、積極的に進めば、同派の作戦能力や資金は制限される。

先週、フーシ派に資金提供する国際的ビジネスネットワークに対して発動された制裁は、イランに対して、まさに等価交換であるというメッセージを発した。アントニー・ブリンケン国務長官が発表した声明では、サウジアラビアとUAEの民間施設を標的としたフーシ派のテロ攻撃への対応として、制裁は湾岸のパートナーとの間で緊密に調整されたものであることが示されている。

一方、超党派議員17名が大統領に書簡を送り、バイデン氏に対し、世界的な対テロ戦争の一部としてフーシ派を緊急に再指定するよう迫った。この取り組みに対して、イラン政権との密接な関係で知られる民主党のクリス・マーフィー上院議員と同党の同僚議員11名は反対した。彼らはバイデン氏に、フーシ派をアメリカのテロリストのリストに戻さないよう警告した。

時間が差し迫る中、米国議会の2つの立法府の屋根の下では、イラン政権への対応を巡って争いが過熱している。今月初めには、160名以上の共和党下院議員が、2015年の核合意を非難し、今後国際協定に先立ち議会の承認を得るべきだと求める書簡をホワイトハウスに送った。

米国の左派がイランについて、かつて圧制者であった者は、常に圧制者である、という教訓を学ぶことを願うばかりだ。

  • ダリア・アル・アキディ氏は、安全保障政策センターのシニアフェローである。

ツイッター: @DaliaAlAqidi

topics
特に人気
オススメ

return to top