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イスラエルがガザに水戦争を仕掛ける中、パレスチナの人々が生き残りをかけて戦う

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29 Mar 2022 06:03:02 GMT9
29 Mar 2022 06:03:02 GMT9

家族の誰かが興奮気味にうろたえながら「水が出るようになった」と言うと、家族全員が四方八方へ走り出し、あらゆるタンクや容器、ボトルを満タンにしようとした。ほとんどの場合、水が出るのはほんの数分で、私たち全員が敗北感を味わい、生き延びることができるかどうか心配になった。

これがイスラエル軍の占領下にあるガザ地区の生活だった。第一次インティファーダでは、パレスチナ人をイスラエルによる水の施しの人質とする戦術が広まり、難民キャンプ、村、町、あるいは地域全体への水の供給を拒否することが、反抗的な住民を鎮圧するために最初に取られた方策だった。この戦術の後には、軍による襲撃、大量逮捕、死者を伴う暴力がしばしば行われた。しかし、その過程はほとんど常にパレスチナ人に対する水の供給を断つことから始まった。

イスラエルのパレスチナ人に対する水戦争は、特に気候変動の危機によってイスラエルが将来の厳しい可能性に備える必要性が増したため、当時とは様変わりしている。もちろん、これは主に被占領民であるパレスチナ人の犠牲の上に行われている。ヨルダン川西岸地区では、イスラエル政府がこの地域の主要な帯水層である山岳帯水層と沿岸帯水層からパレスチナの水資源を奪い続けている。いらだたしいことに、イスラエルの主要な水道会社であるメコロットは盗んだパレスチナの水を、特にヨルダン川西岸地区北部にあるパレスチナの村や町に法外な金額で売っている。

イスラエルはまた、ヨルダン川西岸地区で水を集団的懲罰の手段として使い続けている。特にC地区に住むパレスチナ人がイスラエルによる水の独占を阻止するために新しい井戸を掘る権利をイスラエルはしばしば否認している。

アムネスティ・インターナショナルによると、ヨルダン川西岸地区に住むパレスチナ人は1人当たり1日平均73リットルの水を消費している。一方、イスラエル国民は1日に約240リットルの水を消費している。さらに悪いことに、イスラエルの違法入植者は1日300リットル以上の水を消費している。パレスチナ人に割り当てられた水の量はイスラエル人が消費する水の量の平均を大きく下回るばかりか、世界保健機関が指定する1日の推奨最低量100リットルをも下回っている。

ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人が置かれている困難な状況と同様に、ガザ地区ではすでに人道的大惨事が起きている。3月22日の世界水の日にあたり、ガザ地区の水・環境管理庁(Water and Environmental Quality Authority)は、ガザにおける水の供給の減少がこのまま続けば「大規模な危機」が訪れると警告した。同庁のマゼン・アル・バンナ報道官は記者団に対し、ガザで供給される水の98%が飲用に適していないと述べた。

この恐ろしい数値がもたらす結果は、パレスチナ人はもちろん、実際は国際社会にもよく知られている。昨年10月、欧州地中海人権監視団(Euro-Med Monitor)のモハメド・シェハダ氏は、第48回国連人権理事会で、ガザの病気の約4分の1は水質汚染が原因であり、ガザで発生した子どもの死亡件数の推定12%は「汚染した水による腸炎に関連している」と述べた。

イスラエルの軍事作戦は、常にパレスチナの電力網や水道などの生活維持に必要な公共施設を標的にすることから始まる。 

ラムジー・バロウド

しかし、ガザはどのようにしてこのような事態に陥ったのだろうか。

イスラエルによる最も新しいガザに対する戦争が終了してから4日後の昨年5月25日、慈善団体オックスファムは、包囲されたガザの住人40万人が通常の水の供給を受けられない状態にあると発表した。イスラエルの軍事作戦は、常にパレスチナの電力網や水道などの生活維持に必要な公共施設を標的にすることから始まるからだ。オックスファムによると、「11日間の砲撃でガザ市の3つの主要な海水淡水化プラントが深刻な影響を受けた」という。

ガザの水危機は何年も続いており、この長引く危機のあらゆる側面がイスラエルと関係していることに留意することが重要だ。インフラに損傷や故障が発生しているため、ガザの水の多くは塩分濃度が危険なほど高かったり、下水などによる汚染が著しかったりする。

イスラエルがガザ地区から軍を撤退させ、陸海空からガザの住民を包囲した2005年以前でさえ、ガザは水の危機に瀕していた。当時、ガザの沿岸帯水層はイスラエル軍に完全に支配されていた。数千人の入植者にはきれいな水が割り当てられ、150万人いたパレスチナ人には塩分の高い水が時折割り当てられていたが、いかなる方法でも占領に抗議や抵抗をしない場合にのみ水の供給が行われた。

それから17年近く経過したガザの人口は210万人に達し、すでに厳しい状況にあった帯水層の状態はさらに悪化している。ユニセフは、ガザの帯水層からの水は「他に選択肢がなく、過剰に取水された」ために枯渇していると報告している。ユニセフは加えて、「さらに悪いことに、汚染と海水の流入によって帯水層の水のうち飲用に適したものは4%しかない。残りを飲めるようにするには浄化と脱塩が必要だ」と指摘した。つまり、ガザの問題は蓄えられている淡水にアクセスできないことではなく、住民が少しでも水を飲めるようにするための技術や燃料がないことだ。しかし、それが可能でも長期的な解決策にはならない。

イスラエルは、この危機的状況から回復する可能性を全力で破壊している。その上、イスラエル政府は、パレスチナ人の生存の希望を危うくするため、状況を悪化させることに専念しているように見える。例えば、昨年イスラエルは雨水を貯えるために使用している南部のダムを放流し、ガザにあるパレスチナ人の土地数百万平方メートルを故意に浸水させたとして非難された。ほぼ毎年行われるこの行為によって、ガザの縮小し続ける農村地帯は荒廃し続けている。ガザの農村地帯は、イスラエルによる穴のない包囲網の下でパレスチナ人が生き延びるための重要な要素だ。

国際社会がガザに注目するのは戦時中だけで、その場合でも、防衛的軍事行動とされるイスラエルの措置を誘発したのはパレスチナ人だと非難し、ほとんどが否定的な見方をしている。実際にはイスラエルの軍事作戦が終了しても、イスラエル政府はガザ地区の住民に戦争を仕掛け続けている。

イスラエルは軍事的に強力でありながら、中東において「存亡の危機」に直面していると主張している。しかし、現実に脅かされているのはパレスチナ人の存在だ。イスラエルの意図的な戦略によって、ガザの水のほぼすべてが飲用に適さなくなったとき、なぜパレスチナ人が自分たちの命がガザの水に依存しているかのように反撃し続けるのか理解できるだろう。なぜなら、実際に彼らの命はガザの水に依存しているからだ。

  • ラムジー・バロウド氏は20年以上にわたって中東をテーマに執筆活動を続けており、執筆するコラムは国際的に同時配給されている。メディア・コンサルタントを務めるバロウド氏は複数の書籍の著者で、PalestineChronicle.comの創立者でもある。Twitter @RamzyBaroud
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