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パレスチナ人にとって、「食糧危機」はもはや「存亡の危機」である

ガザ地区の子ども。(国連パレスチナ難民救済事業機関・UNRWA)
ガザ地区の子ども。(国連パレスチナ難民救済事業機関・UNRWA)
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20 Apr 2022 06:04:30 GMT9
20 Apr 2022 06:04:30 GMT9

ガザの友人で若いジャーナリストのモハメド・ラフィク・マハウェシュ氏は、イスラエルに包囲されたこの地区の食料価格がここ数週間で急騰し、すでに困窮していた多くの家庭が、今は食卓に食べ物を並べるのにも苦労していると教えてくれた。

「特にロシアとウクライナの戦争が始まってから、食糧価格が劇的に高騰している」と彼は言う。小麦や肉などの必需品の価格はほぼ2倍になっている。例えば、元々ガザの一部の人しか買えなかった鶏肉は、20シェケル(約6ドル)から45シェケル(約14ドル)へと値上がりしている。

このような物価上昇は、世界のある地域では対応可能に思えるかもしれない。しかし、15年間にわたるイスラエル軍の包囲網の中、すでに貧困状態にあるこの地では、大きな人道的危機が迫っているのである。

実際、国際的な慈善団体オックスファムはこのことを警告していた。同団体は4月11日の発表で、パレスチナ全体の食料価格が25%跳ね上がったことを伝え、さらに憂慮すべきことに、この占領地の小麦粉の備蓄が「3週間以内に枯渇する」恐れがあると報告したのである。

ロシア・ウクライナ戦争の影響は、世界のあらゆる地域に及んでいるが、より深刻な地域もある。貧困、飢餓、失業といった既成の問題と戦ってきたアフリカや中東の国々は、最も大きな影響を受けている。しかし、パレスチナは全く別の話である。国際法や人道法を守ろうとしない占領国家イスラエルの行動に、ほぼ全面的に依存している被占領国家なのだ。

パレスチナ人にとって、この問題は複雑でありながら、ほとんどすべての側面が、何らかの形でイスラエルと結びついている。

ガザは長年イスラエルによる経済封鎖下にあり、イスラエルがガザに供給する食糧は、集団的懲罰としてイスラエルによって配給され、操作されている。アムネスティ・インターナショナルは、昨年2月に発表した「イスラエルのアパルトヘイトに関する報告書」の中で、イスラエルによるパレスチナの食糧とガスの供給制限について詳述している。同権利団体によると、イスラエルは「ガザへの食糧供給を許可する量を数式で決定」し、イスラエル当局が「民間人の生存に不可欠」と判断したもののみに供給を限定している。

清潔な水、電気、農機具の不足など、包囲による多くのインフラ問題の他に、ガザは、ガザ全域の境界地帯に設けられた軍事封鎖ゾーンによって、耕作地の多くを失った。

ヨルダン川西岸地区も同様である。占領地のほとんどのパレスチナ人は、イスラエルの占領、新型コロナウイルスによるパンデミックが引き起こす壊滅的な影響、汚職と不始末が蔓延するパレスチナ自治政府(PA)の構造的弱点など、増大する負担を感じている。

オックスファムによれば、パレスチナ自治区は小麦の95%を輸入しており、貯蔵施設は所有していない。輸入した小麦はすべて、パレスチナの対外アクセスを管理するイスラエルを経由して輸送されている。イスラエルは穀物の半分近くをウクライナから輸入しているため、パレスチナ人はこの仕組みの人質になっている。

しかし、イスラエルは食糧を蓄え、エネルギーもほぼ自給している。「食糧」安全保障を犠牲にしながら「安全保障」に投資したPAの責任もあるが、パレスチナの生存の鍵はほとんどイスラエルが握っている。

ヨルダン川西岸地区にはイスラエル軍のチェックポイントが点在し、コミュニティ同士、農民と農地を遮断しているため、パレスチナで持続可能な農業はほぼ不可能である。

さらに、この困難な状況を複雑にしているのが、2つの大きな問題である。一つは、いわゆる「分離壁」である。この壁は、イスラエル人とパレスチナ人を「分離」するのではなく、パレスチナ人から広大な土地、主に農業地域を不法に奪っている。多くのパレスチナ人コミュニティーが夏になると飲み水の確保に苦労するのに対し、イスラエルは一年を通して水不足に陥ることはない。

ヨルダン川西岸地区全体の60%近くを占める、C地区と呼ばれる地域は、イスラエルの完全な軍事支配下にある。人口は少ないが、ヨルダン川流域の肥沃な土地を中心に農地が広がっている。イスラエルは国際的な圧力によりC地区の正式な併合を延期しているが、実質的には併合されており、パレスチナ人は徐々に追い出され、イスラエルの不法入植者の人口が増加している。

食料価格の急激な高騰は、戦争の結果、世界的な食料不安によって生じた大規模な格差を埋める役割を担っている農民や牧民そのものを苦しめている。オックスファムによると、ヨルダン川西岸地区では家畜の飼料代が60%上昇しており、「イスラエル人入植者による暴力的攻撃の悪化」や、イスラエルの併合政策による民族浄化のような「強制移住」など、牧民が直面する「既存の負担」に拍車をかけている。

「食糧」安全保障を犠牲にしながら「安全保障」に投資したPAの責任もあるが、パレスチナの生存の鍵はほとんどイスラエルが握っている。

ラムジー・バロード

この問題は、イスラエルの特定の政策によって引き起こされ、長引かされている。たとえロシア・ウクライナ戦争が停止しても、パレスチナの食糧不安は解消されない。ガザの場合、この危機は、実際に、イスラエルが特定の政治的意図を持ち、完全に作り出したものである。2006年、元イスラエル政府顧問のドブ・ワイズグラス氏が、ガザ包囲の背後にあるイスラエルの動機を説明した悪名高い発言は、ガザに対するイスラエルの態度の指針であり続けている。彼はこう言った。「これはパレスチナ人をダイエットさせるだけだ。飢え死にさせることではない」

パレスチナには、食糧危機を回避するための早急な対応が必要だ。ガザはもともと極度の貧困と高い失業率を抱えており、これ以上の災難を受け入れる余力はない。しかし、今は何をしえも短期的な解決策にしかならない。パレスチナ人、アラブ諸国、国連食糧農業機関(FAO)などを巻き込んで、パレスチナの食糧難を解決するための真剣な話し合いが行われなければならない。パレスチナ人にとって、これこそが真の存亡の危機なのだ。

  • ラムジー・バロード氏は20年以上にわたって中東について執筆している。国際的な組織のコラムニスト、メディア・コンサルタント、数冊の本の著者であり、comの創設者でもある。Twitter: @RamzyBaroud
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