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イラン、イスラエルとの緊張が高まる

このファイル写真には、ホルムズ海峡付近での軍事演習中に発射されたイランのミサイルが写っている。(AFP)
このファイル写真には、ホルムズ海峡付近での軍事演習中に発射されたイランのミサイルが写っている。(AFP)
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30 Apr 2022 01:04:35 GMT9
30 Apr 2022 01:04:35 GMT9

マジド・ラフィザデ博士

イラン政権は、国内でも国際的にも困難に直面しつつある。また、地域における干渉を拡大しようとする動きが、最大のライバルであるイスラエルとの緊張を高めている。

イラン情報・安全保障省は先週、イスラエルの情報機関である「モサド」のスパイ容疑で3人を逮捕したことを発表した。逮捕された3人の身元や容疑の根拠となる証拠などについては明らかにされていない。

特筆すべきは、イラン政権には、スパイ活動や「敵対国家との協力」といった容疑を利用して政治犯に対する厳しい判決を正当化してきた長い歴史があるということだ。この動きはここ数週間で加速している。イラン政府が「P5プラス1」諸国との核合意再交渉の協議が決裂しそうな気配を見せていることへの防衛策として、地域感傷を課kダウ大仕様としているためだ。イスラエルの存在そのものに対する反対は、この聖職者政権においては常に中心的な焦点となってきたが、2020年に地域の国々の多くがイスラエルとの関係正常化に移行して以来、イランは新たな課題に直面している。イラン政府はこれらの協定に対し、繰り返し糾弾の声を上げてきた。

イラン政権は常にイスラエル・パレスチナ紛争を自分たちの利益のために利用しようとしてきた。イラン政府の利己的な試みは正当な要求の実現における大きな障害になるだけだとして片づける者もいる。ホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、今月、ハマスの関係者と会談し、新たな攻撃を躊躇なく支持することを示唆した。その会話では、イスラエルは攻撃に対抗するには「弱すぎる」と発言したという。この動きを構成するその他の要素の一つに、地域におけるイランの最も主要な代理武装組織であるヒズボラがある。ヒズボラはレバノンに本部を置いているが、シリアやその他の地域の紛争でイラン政権のイスラム革命防衛隊(IRGC)に加わっている。

イランは今月、国軍の日を祝い、軍事パレードでさまざまなミサイルやドローンを披露した。その多くは、イスラエルまで到達可能であるとされている。イランのイブラヒム・ライシ大統領は、国軍の日を記念したテレビ演説を行い、イスラエルがイランの聖職者政権に対して「わずかでも」攻撃的な動きを見せたら、イラン軍はその「心臓部」に攻撃を仕掛けると宣言した。

イラン政権には、繁栄と発展のためのアジェンダがない。だからこそ、自らの失敗を非難する便利な対象として他の国をブギーマンとして利用してきたのだ。

マジド・ラフィザデ博士

IRGCは先月、イラク・クルディスタンに向けてミサイルを何発も打ち込み、その後、モサドの訓練に使われている施設を標的とした攻撃であったと主張した。この攻撃は当初、シリアでイスラエルが実行した作戦によりIRGCの将校2人が死亡したことへの報復だと報じられた。だが、その後の報道では、この攻撃は、イスラエルが支援するパイプラインに対するイランの怒りとより密接に関連しているとされている。このパイプラインによって、クルド地域のエネルギー製品はより効果的にイランの代替品と競合することが可能になる。モサドがクルド地域に大きな影響を及ぼしているという主張には根拠がなく、クルド当局はモサドの存在が許されている可能性を激しく否定している。

3月のミサイル攻撃をめぐる根強い疑問は、最近のイラン政府による逮捕についてのイランのシナリオに関しても同様の疑問を呼ぶかもしれない。先週に逮捕が発表されたモサドの工作員とされる人物たちについても、より詳しい情報が判明するまでは、イラン政権を批判する人々は確実に、逮捕は政治的な動機によるもので、結果として生まれた容疑は原理主義過激派の結束を促すための演出に過ぎないと推定するだろう。拘束された容疑者の国籍さえも明らかにされていないため、政権当局が外国人や二重国籍者を人質にとって国家安全保障上の犯罪として告発することで、欧米政府との交渉の切り札にしようとした例である可能性もある。

たとえば、先月、数十年来の借金の返済免除と引き換えに2人の英国人が解放されたが、少なくともその他に12人のヨーロッパ人と米国人が拘束されたままか、イラン出国を許されずにいる。米国の永住権を持つシャハブ・ダラリ氏の場合は、今月、彼の妻がインタビューに応じて「すべての人実」を解放する必要性を強調したことで、ようやくその状況が公になった。妻のナヒード・ダラリ氏は、夫が米国に移住した後に父親の葬儀に出席するためにイランに帰国した際、米国を「幇助した」として非難されたことを明かした。

米国や英国など西側諸国の市民権や永住権を持っている場合、こうした家族旅行には逮捕の脅威がつきまとうことが多い。最近釈放されたイランと英国の二重国籍を持つナザニン・ザガリ・ラトクリフ氏は、2歳の娘をイランの両親に会わせるために帰国した際に逮捕され、漠然とした「潜入ネットワーク」の「リーダーの一人」として訴えられ、5年間のエビン刑務所での拘留を宣告された。

イラン政権には、繁栄と発展のためのアジェンダがない。だからこそ、自らの失敗を非難する便利な対象として他の国をブギーマンとして利用してきたのだ。たとえば、1980年、イランはイラクを戦争に駆り立て、元最高指導者ホメイニがいうところの「神の祝福」を利用して、国内の反対勢力を一掃しようとした。イラン国民抵抗評議会、人民連合組織、その他、民主化や女性の権利のために発言する勇気を見せた進歩的な運動など、国内の反対勢力は残忍な弾圧にさらされた。

イラン政権は、そろそろ、自らの失敗を他者のせいにするのではなく、自国の繁栄と発展のための明確な道筋を描くべきだろう。

  • マジド・ラフィザデ博士はハーバード大学出身のイラン系アメリカ人政治学者。Twitter@Dr_Rafizadeh
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