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蔓延する反パレスチナ主義 対処が必要

故イヤド・ハラーク氏と故ジョージ・フロイド氏を描いた壁画。2020年6月18日、ヨルダン川西岸地区ベツレヘムにて。(ロイター)
故イヤド・ハラーク氏と故ジョージ・フロイド氏を描いた壁画。2020年6月18日、ヨルダン川西岸地区ベツレヘムにて。(ロイター)
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10 May 2022 09:05:33 GMT9
10 May 2022 09:05:33 GMT9

イスラエルとパレスチナをめぐる議論において、明らかに不平等なのは、ユダヤに対する偏見や反ユダヤ主義の問題が大きく取り上げられる一方で、反パレスチナ主義がひたすら無視されている点である。さらに酷いことに、問題であると認識されてすらいない。欧米の政治演説やメディアでこの問題に言及することはほとんどない。反アラブ主義という蔓延する問題への言及がないのと同様だ。

この問題には対処しなければならない。解決への一歩は、反パレスチナ主義の定義について合意をとることであろう。これを進めるためアラブ・カナディアン・ロイヤー・アソシエーション(Arab Canadian Lawyers Association)は、反パレスチナ主義をどのように定義し、枠にはめるかを含む、有益な報告書を発表した。協議と調査を経て作成されたこの報告書は、課題をまとめ上げるための妥当な試みではあるが、これまでと同様時間をかけ、さらに協議を重ねることで改善できる可能性もある。しかし、より広範なグローバルな議論のための土台となるものであることは間違いない。

同報告書では、反パレスチナ主義を反アラブ主義の一形態として位置づけている。ここでの課題は、より広範な形態の人種差別である反アラブ主義も完全に無視されていることである。パレスチナ人に対する差別と同様に、いつかは反アラブ主義にも対処する必要があるのだ。一方には取り組み、もう片方には取り組まないということはできない。

パレスチナ人は沈黙しているのだろうか。偏見に耐えているのだろうか。人として見られていないのだろうか。これらの問いに対する答えは、間違いなく「イエス」である。

今でも多くの人々がパレスチナ人の存在を否定している。元米国下院議長のニュート・ギングリッチ氏は、パレスチナ人を「作り出された人々」と表現したが、この発言は彼の政治家人生とって何の損害にもならなかった。パレスチナ人は総じて、抑圧者に対抗するためではなく、本質的に暴力的で反ユダヤ的であるとしばしば紹介され、特にイスラエルでは非人間化が危険なレベルまで進んでいる。あるイスラエルの評論家は、「今日のパレスチナ人の生活における支配的な側面を覆う、死と悪の文化」に言及している。

もう一つ典型的なのは、抑圧者の振る舞いは抑圧されている側の責任であるとし、占領者の犯罪は占領されている側のせいだとすることである。パレスチナ人はどういうわけか、占領者の安全保障に責任を負うことになっている。多くの政治家が、イスラエル人が平和で安全に暮らす権利に言及しながら、55年間軍事占領下で暮らしてきたパレスチナ人にはその権利を拡大しようとはしない。

パレスチナ人の権利の問題について、トランプ大統領の和平案策定を任されたジャレッド・クシュナー氏は「自己決定権を与えられるべきだと思います」と明言した。しかしクシュナー氏は、パレスチナ人はまだ自ら統治する能力がないとも述べた。これは、原住民を後進的で役立たずと描く古典的な人種差別の手法であり、植民地主義や被抑圧者に対する抑圧者の優越を正当化するためによく使われるものである。

アラブ・カナディアン・ロイヤー・アソシエーション(Arab Canadian Lawyers Association)の報告書は、反パレスチナ主義の被害に遭うのは「次のような人々である」と強調している。「パレスチナ人、パレスチナ人あるいは本質的に親パレスチナであると認識されている人々、そしてパレスチナの権利への支持を表明する非パレスチナ人です」だ。あるイギリスの国会議員は、親パレスチナ派のデモ参加者を 「原始人」と呼んだ。

もし彼が反パレスチナ人デモ参加者をそのように表現していたらどうだろう(個人的には、一番の動機がイスラエルを支援することではなく、パレスチナ人の抑圧と服従を永続させることである場合、「親イスラエル」ではなく「反パレスチナ」という言葉を使いたい)。この国会議員は、何ら非難を受けることはなかった。親パレスチナ派の活動家は、一般的にテロリストの同調者として非難を浴びる。

また多くのパレスチナ人は、反パレスチナ主義が私生活に影響を及ぼしていると報告している。仕事、大学でのポスト、そしてプロジェクトのためのスポンサーシップを得る際に、差別を受けているというのだ。

歴代のイスラエル政府が日常的に反パレスチナ主義に浸ってきたと知っても、何ら驚くことはない。当たり前のように行われてきたこととして、まずナクバの否定が挙げられる。ガザ地区にいるパレスチナ人は、イスラエルのメディアで組織的に非人間的扱いを受けており、ハマスの犯した罪のせいで連座させられている。また、パレスチナの文化や遺産を横領することもある。

世界の人権コミュニティは、イスラエルがパレスチナ人に対して人種隔離という罪を犯しているというコンセンサスに達している。アムネスティ・インターナショナルによれば、イスラエルは「パレスチナ人を犠牲にして、ユダヤ系イスラエル人を優遇するためのシステム」を確立しているという。要するに地中海からヨルダン川まで、イスラエルのユダヤ人は、イスラエル国民であろうと、占領されたヨルダン川西岸地区に住んでいようと、包囲されたガザ地区にいようと、どのパレスチナ人より優れた権利を持っているのだ。

これに関する詳細な人権と法務報告は、徹底的な政治的議論に値するものであったはずだ。しかし実際に起こったのは、本質に触れることなく人権団体を中傷する、卑劣な「告発者狩り」のようなヘイトキャンペーンだった。反パレスチナ派は、これらの報道を嘘だと切り捨てただけだった。人種隔離いう犯罪を訴えた多くの人々は、反ユダヤ主義として非難されている。

このことが意味するのは、ヨーロッパや西側の政治家たちが、パレスチナ人に対する組織的な抑圧というこの状況に、関心を示さないということだ。こうした政治家たちはほぼ例外なく、パレスチナ人が何十年にもわたって求めてきた政策や立場(占領の終結やイスラエルの犯罪に対する説明責任など)をウクライナに関しては支持してきたのである。ボイコット、売却、制裁は、ロシアの犯罪に取り組むために称賛され奨励されているが、イスラエルの犯罪に対しては罪だとされている。

パレスチナ人、そしてすべてのアラブ人に、彼らを苦しめる人種差別と差別について報告し、記録し、話すための自信を与える必要がある。

クリス・ドイル

もしアラブ・カナディアン・ロイヤー・アソシエーション(Arab Canadian Lawyers Association)の反パレスチナ主義に関する記述を、多くの欧米政府の声明、プレスリリース、スタンスに照らし合わせてみれば、憂慮すべきことだと分かるだろう。おそらくさらに憂慮すべきは、語られていないこと、つまりパレスチナ人を弾圧する際のイスラエルの行動に対する批判や説明責任がないことだ。

しかし同報告書が論じている通り、反ユダヤ主義の定義がイスラエルとパレスチナに関する議論を抑制するためにかなり頻繁に使われてきたように、いかなる定義も武器として使うべきではないだろう。健全な議論は不可欠である。パレスチナ人に関するコメントのいくつかは、人種差別ではなく政治的な動機によるものかもしれない。また攻撃的であったり配慮に欠けていたりしても、人種差別ではないかもしれない。また、反ユダヤ的なコメントをすることの言い訳にはならない。

この報告書は歓迎されるべきだ。この問題は探求され、偏見があることも認識されなければならない。パレスチナ人、そしてすべてのアラブ人に、彼らを苦しめる人種差別と差別について報告し、記録し、話すための自信を与える必要がある。

パレスチナ人は、自分たちを苦しめる人種差別について議論している。問題は、なぜ他の誰もそうしないのか、ということだ。それを拒否することは、この問題がいかに広範囲に及んでいるかを示す、さらなる証拠となる。

  • クリス・ドイル氏はロンドンに拠点を置くアラブ・英国理解協議会のディレクター。ツイッター:@Doylech
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