安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、無職山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=が2~3年前、母親が信者の宗教団体トップを火炎瓶で襲撃しようとしていたことが13日、捜査関係者への取材で分かった。山上容疑者は母親が破産した約20年前から同団体への恨みを募らせていたとみられ、奈良県警は経緯を詳しく調べている。
県警は同日、銃撃現場周辺で大規模な現場検証を実施。午前5時ごろから約2時間かけて調べたところ、発射地点から約90メートル北の立体駐車場の外壁に弾痕とみられる穴が3カ所見つかった。
宗教団体は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。山上容疑者は「母親が多額の献金をして破産し、家庭が崩壊した」「安倍元首相が団体とつながりがあると思った」と供述している。
捜査関係者によると、山上容疑者は「2~3年前に団体総裁が来日した際に襲撃を計画した」と供述。2019年に愛知県で開催された大会のために来日した時とみられ、同容疑者は「火炎瓶を用意して行ったが、会場に信者しか入れず断念した」などと話しているという。
山上容疑者が調べに対し、「(安倍氏の祖父)岸信介元首相が旧統一教会を日本に持ち込んだ元凶」と話していることも判明した。安倍氏が昨年、旧統一教会の関連団体に寄せたメッセージ動画を見て、「殺すしかないと決意した」とも供述している。同容疑者は、これらの情報をインターネットで得ていたという。
奈良県警は、旧統一教会について長年調べるうちに、安倍氏らを関係者と思い込み、一方的に殺意を持つようになったとみている。
旧統一教会は11日に記者会見し、友好団体が主催する行事に安倍氏がメッセージなどを送ったことはあるとしたが、「会員として登録されたことはないし、顧問になったこともない」と説明した。
時事通信