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イラン、核取引協議で優位に立つ

国際原子力機関長官のラファエル・マリアーノ・グロッシー氏とイラン外相のホセイン・アミールアブドッラーヒヤーン氏、イランのテヘランにて。2022年3月5日。(画像 ゲッティ)
国際原子力機関長官のラファエル・マリアーノ・グロッシー氏とイラン外相のホセイン・アミールアブドッラーヒヤーン氏、イランのテヘランにて。2022年3月5日。(画像 ゲッティ)
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14 May 2022 01:05:58 GMT9
14 May 2022 01:05:58 GMT9

イラン核取引協議での勢力図と政治力学はイスラム共和国に優位になるよう変わってきているように見える。これはこの地域の平和と安全に深刻な影響を及ぼし得る。

核協議の当初は、米国とE3(英国、フランス、ドイツ)がイラン政権に対し相当な影響力を持っていた。これは、この神政組織が他のどの当事者よりも、イラン核取引としても知られている「包括的共同行動計画」の復活を切に望んでいたためだった。イラン政権は経済的に絶望的な状況にあり、核取引の復活が必要だった。石油の輸出は1日当たり約200,000バレル(bpd)に減り、巨額の財政赤字を抱えていた。核協議を再開するために、米国に100億ドル分の凍結資産の解除さえ要求した。また、中東に広がる民兵やテログループへの資金調達や支援も極めて難しくなっていた。

しかし、中国がイランからの石油の輸入を着実に増やしてきて、ほぼ100万bpdに達し、また、世界の石油価格が上昇した。イラン政権は現在、150万 bpd以上を輸出していると言われている。つまり、イラン政権は、米国が2018年に制裁を科す前の輸出合計の約80%を輸出していることになる。石油の販売は輸出収入の50%以上を占めるため、イランは石油輸出による収入に大きく依存している。また、EU(欧州連合)は米国によるイラン政権への制裁に加わっていない。実際、欧州諸国は米国が制裁を科しているにも関わらず、イラン政府といまだに取引をしている。

核協議での欧州の立場と影響力については、指導者らの政治的思惑は変わってきたようだ。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は先週、欧州各国は2022年末以後はロシア産石油を買わない予定だと発表した。英国も年末までにロシア産石油の輸入を段階的に削減する計画だ。そうなると、EUは代わりの供給国としてイランに期待しているようにみえる。ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は先週、フィナンシャル・タイムズ誌にこう語った。「我々欧州人はこの(核)取引からたいへんな恩恵を受けるだろう、今、状況は変わっている。我々には核協議は重要だった…「そうだな、(イランの原油なんか)必要ない」というような。 今や、他の供給国を持つことは我々にとって非常に頼もしいことだろう」

戦略を露わにしたことで、欧州は残念ながらイランの有力な聖職者らに力を与え、核協議で優位に立たせており、彼らはさらに譲歩を引き出すためにそれを利用するだろう。欧州の必死さは、イラン政権の弱点と同等の状態にある。また、EUは核取引を主に経済の観点から見ることを提案している。しかし、これは核協議の目的であってはならない。そうではなく、EUはイラン政権が核兵器を決して手に入れないような強力な取引を求めるべきだ。

さらに、ボレル氏の言明はイラン政権を第一の要求である、イスラム革命防衛隊(IRGC)とゴドス軍を米国のテロリスト名簿から除外することに、いっそう執着させることになった。IRGCが外国テロ組織に指定されたのはイランの核プログラムとは無関係で、世界中で起こしているそのテロ活動に関連していた。

バイデン政権とEUはイランの指導者らの要求に屈してはならない。

マジッド・ラフィザデ博士

先週、EUがIRGCを米国のテロリスト名簿から除外するという妥協案を提案していることを明らかにしたため、EUは今やイランの指導者らの要求に屈したようにみえる。ボレル氏はこう述べた。「しかるべき時に、(核取引協議の)調整者として公式に、この提案を提出すると言わなければならないだろう…これが唯一折り合える地点だろう」

一方、バイデン政権はこの危機的状況の最中、外交政策の成就と外交上の勝利を目指しているようだ。核取引協議は長い間続いており、ホワイトハウスは外交問題への対処を批判されてきた。1月のクイニピアック大学世論調査によると、米国民の大多数はバイデン政権の外交政策の方法に賛同を示さなかった。

このところの情勢はイラン政権を核協議で優位に立たせたかにみえる。しかし、バイデン政権やEUはイランの指導者らに屈してはならず、イラン政府が核兵器を手に入れないように強固な姿勢を取らなければならない。

  • マジッド・ラフィザデ博士はハーバード大学出身のイラン系アメリカ人政治科学者。Twitter: @Dr_Rafizadeh
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