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無責任なイスラエルとパレスチナの政治家たちが炎上を煽っている

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16 May 2022 03:05:16 GMT9
16 May 2022 03:05:16 GMT9

イスラエルとハマスのガザ紛争が勃発して1年が経った。この戦争は、東エルサレムやイスラエル国内でのアラブ人とユダヤ人の激しい衝突に始まり、甚大な被害をもたらした。

そして今、このような事態の拡大を誰も望んでおらず、殺戮の連鎖を繰り返すことで利益を得る側はない。しかし、大規模な暴力行為が再び起こる寸前に居ながら、明らかに歯止めをかけようとしない両者を私たちは再び目の当たりにしている。

アル・ハラム・アル・シャリフでの緊張の高まりと衝突など、昨年春の事件との類似点はあるものの、パレスチナ人による主にイスラエル市民への攻撃の波には自然発生的な要素も強く、これまでに19人が死亡し、多くの人が負傷している。イスラエル治安部隊が、暴力の増加に応じてヨルダン川西岸での作戦を強化した結果、アルジャジーラの有名記者、シリーン・アブアクラ氏が今週射殺された悲劇を含め、少なくとも26人のパレスチナ人が死亡している。

攻撃の実行犯のほとんどは、よく知られたパレスチナ人組織には属していない。それは例えば、ハマスがイスラエル人の殺害を積極的に開始したというよりも、むしろ事後その行為を認め、無益にもそれを支持しているのである。この場合、同団体の指導者は、戦略的な目的もなく、イスラエルとの激しい対立に引きずり込まれる可能性があり、またその逆もありうる。

このようなイスラエルとパレスチナの現状、そして外交的・政治的な和平の地平が見えない中で、事態の進展は、ラマッラーとガザそれぞれにいるイスラエルやパレスチナの指導者たちによってではなく、事件によって左右されている。指導者たちは、必ずしも自分たちが始めたわけではない事件に反応しているが、彼らは依然として、両国民の間に平和というより、むしろ暴力を助長しているこの状況に責任を負うべき主体である。

その結果として、まとまりのない様々な原因が現在の一触即発の状況であり、彼らを当惑させ、奈落の底から引き戻す代わりに、新たな血が流れる可能性のある対立に導く大きな力に呑み込まれてしまっている。

イスラエルは、特定の集団が背後にいるわけではなく、無作為に発生したテロの波のようなものが今後も続くと想定している。治安部隊には、攻撃のあった直後にその犯人を殺すか、捕らえるか以外に解決策はない。攻撃を防ぐのに十分な情報がない場合は、ヨルダン川西岸とガザのパレスチナ人に対して、過剰な武力行使と集団全体に罰を与えることによって、ある程度の抑止力を取り戻し、さらに恐怖でもって彼らを抑え込もうとしている。

また、ここ数週間の暴力行為の増加は、聖なる月であるラマダンに関連しており、それが終わった今、事態は落ち着くだろうという、必ずしも証明されているわけではない希望もある。

根本的な原因は、何よりもまずパレスチナの占領と、パレスチナ人が置かれている政治的・経済的状況の悪化にある。

ヨシ・メケルバーグ

記念日や祝日は政治的暴力行為の一因かもしれないが、根本的な原因は何よりもまず、パレスチナの占領と、イスラエル国内にいるパレスチナ人を含む、パレスチナ人が置かれている政治的・経済的状況の悪化であり、悲劇的なことに、それが暴力に訴える動機にもなっている。何よりも、これは、受け入れがたい状況で生きることを強いられている、多くのパレスチナ人の絶望の度合いを示している。

双方の指導者が事態を沈静化させる必要があるにもかかわらず、無責任な政治家たちはかえってその炎を煽り、政治的な緊張を高めている。ハマスとその指導者ヤヒヤ・シンワール氏は、イスラエル人を無差別に殺害する人々を受け入れ、称賛し、ハマスをイスラエルに対する武装闘争の最前線に位置づけるために、これらの行為に対するある種の責任を取っている。

そうすることで、シンワール氏は、イスラエルとの国境沿いにある比較的平和な場所や、イスラエルがガザとの間の物資や人の移動、海へのアクセスに関する制限を一部緩和したことによる、不十分ではあるものの大きく改善したそれらの権利を危険にさらしているのである。

アル・ハラム・アル・シャリフの不安定な状況を利用し、「シオニストがモスクを破壊しようとしている日がいくつかあるため、アルアクサ・モスクを守るための戦いはラマダン月以降に始まる」と述べたことは、今の状況を煽るだけでなく、ガザに対処する唯一の方法は、経済的に締め上げることだと考えるイスラエルの人々の思う壺である。また、イスラエルがシンワール氏自身を直接標的にする可能性も指摘されており、それは当然、イスラエルとハマスの本格的な対立につながるだけである。

テロに対する、ある程度の抑止力を回復するための明確な目標地点がないため、イスラエル当局は闇雲に攻撃を続けている。彼らは武力行使だけでなく、集団的懲罰といった旧態依然とした手法に頼っており、それらは状況を悪化させ、パレスチナ人の不快感や怒りをさらに増幅させ、さらなる暴力を引き起こすに違いない。結局のところ、1967年以来、その占領の性質そのものが本質的に暴力的であり、暴力を生み続けるイスラエル人とパレスチナ人の関係の枠組みを作り上げてきたのである。

イスラエルの町や都市に入り込み、無差別に人々を殺すことは決して正当化されず、パレスチナ人の大義のためにもならない。それどころか、憎しみと恐怖を与え、この紛争における過激主義者の目標を支持する人々に力を与えるため、両国民の平和、共存、和解に反対する人々にのみ役立つものである。

しかし、現在進行中の占領の特質も、その過酷さゆえにまったく同じことを行っている。イスラエル国防軍がパレスチナ人の労働許可を取り消したり、ガザへの横断路を閉鎖したりする行為は、占領や封鎖の下で暮らす人々の貧困と多岐にわたる悲惨さを確実に悪化させる集団懲罰行為であり、それではテロ行為を防ぐことは一件もできないだろう。テロリストの家族の家を取り壊すことは、正義でもなければ抑止力でもない。それは、正当な法的手続きを経ずに行う無実の人々への罰であり、イスラエルに対する武装闘争に加わるための勧誘にしかならないだろう。

来月、ジョー・バイデン米大統領がイスラエルを訪問する予定だが、イスラエル政府関係者の同伴なしに、東エルサレムも訪問するのではないかと言われている。そう期待したい。世界的な混乱のさなかにあって、自由世界のリーダーが聖地を訪れる時間を見つけたなら、その旅を有意義なものにしなければならない。

何よりもまず、イスラエルとパレスチナの市民一人ひとりの安全と幸福、そして人権と政治的権利を保障する、公平かつ公正な和平の実現に向けた米国の取り組みとリーダーシップを示す必要がある。そうでなければ、終わりのない戦争と人命の損失への道はほぼ確実に用意されている。

ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係学教授で、チャタムハウスMENAプログラムのアソシエイトフェローを務めている。国際的な文書や電子メディアに定期的に寄稿している。ツイッター:@YMekelberg

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