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イスラエルのアパルトヘイトはさらに過激になるだろう

強硬派のユダヤ人入植地「イツハル」。武装した入植者たちが崖をパトロールしている。(AFP)
強硬派のユダヤ人入植地「イツハル」。武装した入植者たちが崖をパトロールしている。(AFP)
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19 May 2022 05:05:49 GMT9
19 May 2022 05:05:49 GMT9

パレスチナ人によるイスラエル人に対する暴力は最近増加傾向にあり、同国政府の危機を招いている。これは通常、さらに厳しい措置と「反ユダヤ主義」についてのレトリックが強化されることを意味する。

イスラエルとパレスチナの紛争は、言論の戦争であると同時に、人権と公民権の戦争でもある。

イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、最近のパレスチナ人によるイスラエル人への攻撃を受けて、月曜日に、「テロリスト」ではなくその家族を罰するために、さらなる反人権的措置を検討中であることを示した。私が「テロリスト」という彼の言葉を引用したのは、多くの場合、パレスチナ人に対する裁判は行われず、何が起きたかについてはイスラエル政府関係者が宣言するだけだからである。犯人とされるのがパレスチナ人であれば、たとえ負傷して動けない状態であっても、ほとんどの場合イスラエル軍に殺害される。死傷者の多くは、負傷して地面に横たわり、治療を拒否された状態で、無抵抗の状態で頭を撃たれているのだ。

このようなイスラエル人の怒りは正当化され、パレスチナ人の怒りは“暴力”や“テロ”とみなされる。ユダヤ人のイスラエル人は怒ることが許されるが、キリスト教徒やイスラム教徒のパレスチナ人は、それを許されないのだ。

イスラエルがその暴力についての真実を意図的にぼかすために用いるもう一つの手法は、政府によるジャーナリストの検閲である。もちろん、これは彼らがジャーナリストを殺していないときに限るが。

イスラエルでは、報道機関は政府が認めたものしか報道しないように圧力を受ける。欧米の主流メディアはこの検閲に従わされる。国内に留まるために、暴力事件を一方的に報道するユダヤ人ジャーナリストを雇うことさえある。特にアラブ系のジャーナリストは、取材に行ける場所と行けない場所が制限されている。これは、イスラエルが南アフリカの国民党が運営するアパルトヘイト政権から学んだ戦術である。

先週、クリスチャンのパレスチナ人ジャーナリスト、シリーン・アブアクラ氏が殺害されたとき、イスラエル人は直ちに検閲とメディア支配を利用した。彼らは、「テロリストを追跡するため」とされるジェニン難民キャンプへの挑発的なイスラエル軍の襲撃の際に、パレスチナ人の銃撃によって彼女が撃たれたと主張したのだ。しかし、パレスチナ人の目撃者は、その銃口はイスラエル兵が自分たちに向けたものだと主張している。そして、アブアクラ氏はパレスチナ人による銃撃現場の近くでは死んでいないことが明らかになり、イスラエルの主張は崩れた。

イスラエル人がパレスチナ人を殺害しても、罪に問われる者はほとんどおらず、有罪になる者はさらに少ない。そして、たとえ罰せられたとしても、たいていは極めて軽い刑に留まる。イスラエル政府は、ユダヤ人殺害犯の家を破壊したり、その家族を追放したりすることはない。

パレスチナ人の殺害はほとんどのメディアにおいて小さなニュースだ。しかし、イスラエルのユダヤ人殺害は反ユダヤ主義がもたらす国家の危機として扱われるのだ。

レイ・ハナニア

今、ベネット首相はイスラエルの非道なアパルトヘイト政策を、さらに極端なものにしようとしている。ヨルダン川西岸地区に住む、テロで訴えられたパレスチナ人の家族を追い出すだけではない。かつてソ連が「鉄のカーテン」の中の国々を支配したように、イスラエルが支配する「屋根のない刑務所」、ガザ地区への強制送還を検討していると発表したのである。

ベネット氏はまた、キリスト教徒とイスラム教徒のパレスチナ人の権利に十分に厳しくなければ、連立政権を弱体化させかねないと考えている。イスラエル在住のパレスチナ人の住居を、テロの疑いがあれば取り壊したいと考えているのだ。

イスラエル人は、被害者がユダヤ人である場合、その暴力の増加に対抗するために狂乱している。しかし、衝突による死者の大半が実は非ユダヤ人で、ほとんどがイスラエル兵か武装した入植者の狂信者によって殺されていることはさほど心配していないようだ。この紛争における暴力を追跡調査している「欧州地中海人権モニター」は先月、イスラエルが2022年に殺害したパレスチナ人の数は、昨年同時期の5倍に上ると報告した。同国では今年19人のイスラエル人が殺害された。暴力が増加しているとはいえ、先月の時点でイスラエルが殺害した47人のパレスチナ人を下回っているが、イスラエルや親イスラエルの西側メディアにとってそれは重要ではない。

パレスチナ人の殺害はほとんどのメディアにおいて小さなニュースだ。しかし、イスラエルのユダヤ人殺害は反ユダヤ主義がもたらす国家の危機として扱われるのだ。

  • イスラエルが家を破壊し、人種差別的なイスラエル人入植者に土地を与え、どれだけ多くのパレスチナ人を殺害し、国外追放しようとも、パレスチナ人はイスラエルの責任を追及する姿勢をより強固にするだけだろう。

レイ・ハナニア氏は、受賞歴のある元シカゴ市役所の政治記者で、コラムニスト。連絡先は、彼の個人的なウェブサイト Hanania.com まで。Twitter: @RayHanania

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