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イスラエルの噓と偽善に国際刑事裁判所が突き付ける真の脅威

オランダ、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)。(AP)
オランダ、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)。(AP)
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02 Jan 2020 06:01:02 GMT9
02 Jan 2020 06:01:02 GMT9

イスラエルは長らく、国連安保理の場で米国のもつ拒否権を笠に、みずからの行いに対する糾弾をかろうじて封じ込めてきた。

イスラエル批判は許されなかった。これは、イスラエルによる残虐行為、戦争犯罪、キリスト教徒やイスラム教徒への差別はあくまで「自国防衛」のためとする、いけ図々しいまでの偽善を一貫させ、反ユダヤ主義なる当を得ぬ主張を永続化させるためだ。

かつては力のあった国連も今は、官僚的で歯の抜けたライオンに等しい。空疎な文言が飛び交い倫理は機能せぬ晴れがましい場となりはてた。国連で法の支配などと言えば笑われる。正義は潰えた、と言うのと同義だからだ。

が、国連は国際刑事裁判所(ICC)ではない。ICCは先月、戦争犯罪のかどでイスラエル調査に入ると発表、このためイスラエルは動揺を隠せぬのだ。イスラエル指導部の有罪判決もありえるうえ、アメリカがいくらカネを積もうと、政治的な文言を弄しようと、国連の拒否権を振りかざそうと、ICCの起訴がおよぼす影響を回避することはできない。

ICCは政府間組織であり国際法廷だ。オランダ・ハーグに立地する。ICCには、「ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪」のかどで個人を訴追する独立した司法権がある。これら罪状はすべてイスラエルが非難されている罪状であるが、米国および主流マスコミの擁護によりこれまでは法の目をかいくぐってきた。

米国はイスラエルを人権侵害、人種差別、暴力的な残虐行為のかどで譴責しようとする国連決議に拒否権で対抗はできる。が、ICCからイスラエルを守る力はない。そこでは法の支配は現実のものだからだ。

イスラエルが訴追を受け有罪を宣告される場合、自分たちがパレスチナ人にしてきた同じ扱いを今度は自分が受けるのだと、当然自覚するだろう。

レイ・ハナニア

ICCが国家に代わり法の支配を執行することはない。が、犯罪的違法行為や残虐行為の訴追を拒む国家に対しては権限を有する。

ICCには犯罪を調査しその真相を明るみに出す権限がある。また、そうした罪をおこなった個人を訴追し、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪をおこなった者を裁判にかける権限も有する。

イスラエルがICCの令状を承認せずICCの規程に署名していなくても問題はない。このやり方は、たとえば核兵器の監視をおこなう国際原子力機関(IAEA)といったその他の重要な権限をもつ機関の統制を避けるためにイスラエルが取ってきた計略だ。イスラエルは世界最大の核軍備を保有する国に数えられるが、IAEA加盟国ではないためだれも査察できない。

ICCの主任検察官であるファトゥ・ベンスーダ氏は先月、イスラエルが国際法を侵害し犯罪に手を染めているとする嫌疑の捜査に入ると発表した。これらはすべて、東エルサレムおよびヨルダン川西岸の占領に端を発するものだ。

国際法では、紛争にともない領地を占領した国家は、元の住民を移住させたり酷薄に扱ったりしてはならない。個人資産を没収したり、占領にともない利便性の出た土地を併合することもできない。イスラエルは資産・土地・権利といったものを人々から奪い、またそれら資産・土地・権利を他者へ譲渡している。これらはすべて宗教がらみだ。

ICCの発表に対しイスラエルは、これまで受けた非難と同様のやり方で対した。すなわち、告発した者を口汚く罵るやり方だ。イスラエル指導部とメディアはICCは反ユダヤ主義であると難じ、その嫌疑については「無礼千万、理屈に合わず、法にも悖る」とこき下ろした。

イスラエルの常套手段はもうひとつある。つまり、ほかにも残虐行為などはあるのに、イスラエルだけが不当にいびられ、言挙げされているとする主張だ。この場合、パレスチナ人の残虐行為は無視されているではないか、と言いたいわけだ。イスラエルは、自国以外は平等な基準に縛られていないとすることで、自国の犯罪行為に関して取り沙汰されるのを回避し、関心をよそへ向けようとする。米国および偏向した米主流メディアからも助けてもらえる。

パレスチナ人が米国の司法制度について使う議論も実はこれとそっくりそのままだ、というのは何とも皮肉な話だ。米国司法は、パレスチナ人やパレスチナ人団体への訴訟申し立ては何十件と認めているが、イスラエル人やイスラエル人団体に対しては似たようなケースでも却下している。

が、今回はこうした議論は当てはまらない。ベンスーダ氏はすでに、ハマスやパレスチナ人による残虐行為の疑いも調査すると述べているからだ。

ICCが両方について調査をするとしても同じ結果になるとは限らない。パレスチナ人は被占領民であり被抑圧民だ。彼らは、イスラエル軍による無法や差別から逃れられる身の上ではない。イスラエルにはキリスト教徒やイスラム教徒を差別する66の法律があり、これを助長する。

イスラエルが訴追を受け有罪を宣告される場合、自分たちがパレスチナ人にしてきた同じ扱いを今度は自分が受けるのだと、当然自覚するだろう。

もしそんなことが起きるなら、これは多としたい。天網恢々、と言うではないか。

レイ・ハナニア氏は、実績ある元シカゴ市報道局政治部記者でコラムニスト。連絡は個人サイト(www.Hanania.com)まで。Twitterアカウント:@RayHananania

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