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NATOの未来への新たな道筋を描くチャンス

NATOの戦闘手順の確立を目的とした黒海での訓練に参加するルーマニア海軍の兵士たち。(AFP)
NATOの戦闘手順の確立を目的とした黒海での訓練に参加するルーマニア海軍の兵士たち。(AFP)
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25 Jun 2022 07:06:07 GMT9
25 Jun 2022 07:06:07 GMT9

NATOにとって極めて重要な時期に、加盟国の首脳が来週マドリードで会議を開く。2月のロシアによるウクライナ侵攻と昨年のアフガニスタンでのNATOの敗北と撤退以降、初めての首脳会議となる。

今回の首脳会議の主な焦点はウクライナになるだろう。ロシアによる侵攻は大西洋共同体の地政学的風景を完全に変えた。この侵攻の結果が完全に実感され理解されるのは何年も先になるだろう。NATOは、侵攻の影響に対処するための、また将来の新たな安全保障上の課題に備えるための措置を取ろとするはずだ。

また、欧州の脆弱な安全保障状況を考慮すると、NATOに加盟する30ヶ国にとって結束と団結を示すことが非常に重要となるだろう。ロシアとの間に良好な経済関係を持っている一部の国がNATOが進む道の上にいくつかのデコボコを作ってはいるが、NATO加盟国は概ねロシアへの対応において団結している。

侵攻が激化する中、4つの問題が首脳会議の議題の中心となるであろう。

第1かつ最重要の問題は、東欧へのさらなる侵攻を阻止しつつウクライナを支援する方法に関する合意だ。ロシアによる侵攻以降、NATO加盟国の多くが武器・弾薬の提供に乗り出し、NATOの側面を強化するために東欧に軍事力を展開している。

しかし、加盟国によって積極性に差がある。ポーランドとイギリスは数十億ドル相当の装備をウクライナに提供している。エストニアなどの小国は人口あたりで言えば武器や軍事支援の最大の提供国だ。しかし、欧州最大の経済大国であるドイツは、軍事支援に関しては期待にあまり応えていない。今回の首脳会議を機に、ウクライナへの武器・弾薬提供の拡大に関して、またNATOの東側の強化のための新たな措置に関して、NATO加盟国からのより具体的な約束を確保することが期待される。

NATOは他のどの組織にも増して、欧州および大西洋共同体の民主主義・平和・安全保障の促進に貢献してきた

ルーク・コフィー

第2の注目点は、2010年以来となるNATOの新たな「戦略概念」の発表だ。ロシアによるウクライナ侵攻がなければ、これが今回の首脳会議のビッグニュースだっただろう。「戦略概念」は、NATOの将来的な役割を導く最重要の政策文書だ。現在の版は酷く時代遅れになっている。過去12年間、いわゆるアラブの春とその余波、NATOのリビア介入、アフガニスタンでの敗北、ロシアによるウクライナ侵攻、ダーイシュの台頭、中国の台頭、そして新型コロナなど、大きな地政学的危機が発生している。2010年の「戦略概念」では、これらの問題のいずれも意味のある形では取り上げられていない。40ページもあるが、「パンデミック」や「中国」などの言葉は登場しない。当然、新たな文書ではロシアが主な焦点となるだろうが、中東への関与や中国などの他の問題がどのように扱われるかも同じくらい興味深いところだ。

第3の問題はスウェーデンとフィンランドによるNATO加盟申請だろう。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、北欧の両国はNATO加盟を正式に申請した。これは欧州の安全保障情勢における歴史的な瞬間だ。両国には強固な軍事力と、NATOのパートナー国として数十年にわたって活動してきた経験がある。歴史的・政治的な理由により軍事的には非同盟を維持していたが、NATOとのパートナーシップは現在、非加盟国の中では最も緊密で、その緊密な関係には数十年の歴史がある。しかし、トルコが両国の加盟申請の支持をためらっている。新規加盟には全会一致の承認が必要だ。トルコは、不法なクルド人分離主義組織であるPKKのメンバーがスウェーデンで保護されていることに対して正当な懸念を抱いている。この問題は最終的には解決される可能性が高いが、時間を要するだろう。水面下で積極的に議論が行われることが望まれる。

第4に、いつも通り支出が議題に上るだろう。各加盟国の強さがそのまま、政府間安全保障同盟としてのNATOの強さとなる。2014年にウェールズで開催された首脳会議では、各加盟国が2024年までにGDPの2%を国防費として支出することが再確認された。それ以降、NATOの防衛費は着実に上昇した。2014年のロシアによる最初のウクライナ侵攻以降は特に増加している。2021年には、GDPの2%を国防費に支出するという目標を8加盟国が達成した(2014年には3加盟国のみだった)。ロシアによる侵攻が警鐘となり、さらに数カ国のNATO加盟国が近く目標に達することが見込まれる。

1949年の創設以来、NATOは他のどの組織にも増して、欧州および大西洋共同体の民主主義・平和・安全保障の促進に貢献してきた。NATOが、苦境にあるウクライナを支援しつつ、21世紀の課題に対処できるようにすることが、首脳会議の主な課題になるだろう。

マドリードで開催される首脳会議は、NATO加盟国の首脳に未来への道筋を描く重要なチャンスを提供する。このチャンスを無駄にしてはならない。

  • ルーク・コフィー氏はヘリテージ財団ダグラス&サラ・アリソン外交政策センターの所長。ツイッター:@LukeDCoffey
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