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ガーセム・ソレイマニに: 殺戮は終わりを迎えるか

イランの最高指導者アリー・ハメネイ師、革命防衛隊司令官らとの会合に臨むガーセム・ソレイマニ = 2016年テヘラン(AP/資料写真)
イランの最高指導者アリー・ハメネイ師、革命防衛隊司令官らとの会合に臨むガーセム・ソレイマニ = 2016年テヘラン(AP/資料写真)
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04 Jan 2020 12:01:29 GMT9
04 Jan 2020 12:01:29 GMT9

結局、彼の生き様はそのまま死に様となった。今回暴力と殺戮の手を下したのは、彼自身ではなかった。

金曜日未明、ガーセム・ソレイマニはバクダッド国際空港で米軍の空爆に遭い殺害された。この出来事の意義の大きさは言うまでもない。アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンや、イスラム国の指導者アブバクル・バグダディの殺害にも十分匹敵するものだ。ソレイマニは2人の殺人者と同様、中東を含む広い地域で、死と破壊をもたらしてきた。そして2人と同様、自身の凶行が注目を集めれば集めるほど喜んでいた。

だがソレイマニの場合、最初からそうではなかった。彼は少なくとも15年間、イスラム革命防衛隊の対外作戦部隊であるコッズ部隊の司令官として、陰でイランの汚れ仕事に従事し、ナイーブな人々に対して、イラン指導者や革命思想の有害な影響を広めていた。そして約5年前、彼は自分への評判に自信を持ったらしく、本性を現すようになった。傲慢で気取り屋、そして権力に酔いしれたソレイマニだ。

それ以来、中東で死や暴力が発生した場所では必ずといっていいほど、ソレイマニの鮮明な写真や凝った映像が撮影されていた。イランの覇権という大義のために募兵された、不運な民兵らの肩に手を回すソレイマニの姿があった。これらの民兵は、レーニンが「役に立つ馬鹿」と呼んだ部類の人々だ。

血に飢えたソレイマニの虚栄心のために、中東が払った代償はあまりに大きかった。サダム・フセイン政権の崩壊後、泥沼に陥ったイラクでは、ソレイマニが訓練した民兵による何千回もの攻撃で、数百人の多国籍軍兵士が殺害されている。つい最近には、イランの息がかかったイラク政府の汚職と無策に対し、イラク国民が街でデモ活動を行った際、アラブニュースの報道にもあった通り、ソレイマニはバグダッドに飛び立っている。彼は暴力的な取り締まりの陣頭指揮に立ち、その結果、450人以上の非武装のイラク民間人が殺害された。

シリアで自国民を弾圧するのに支援を必要としていたバッシャール・アサドが頼ったのも、当然ソレイマニを筆頭とするコッズ部隊、そして隣国レバノンの悪名高いヒズボラだ。ヒズボラの民兵もソレイマニの訓練を受けていた。ソレイマニの手により、50万人のシリア人が血を流しただけでなく、数百万もの人々が、いつ家に帰って家族と再開できるのか、見通しすらつかない状況に陥っている。

ソレイマニの加担がなければ、イエメンのフーシ派民兵は、とうの昔に北部の拠点に帰還していただろう。しかし、武器と装備を手に入れ軍事訓練を受けたフーシ派は、勝ち目のない戦いを継続し、イランが供給した部品で作ったミサイルで、サウジアラビアの民間人を標的に攻撃を加えている。

ガーセム・ソレイマニに同情の余地はないのだ。犯した罪から逃れることも、ベッドで看取られることも、無理なことは承知していたはずだ。では、ここから学べる教訓とは何で、今後私たちはどこへ向かうべきなのだろうか?

ならず者や独裁者のご機嫌取りをしても、良い結果には繋がらないというのが最初の教訓だ。1930年代のヨーロッパ諸国も、それから80年後のオバマ政権も、こうした教訓を見出してはいなかったようだ。制裁緩和によりイラン核開発の抑制を目指すオバマ政権が、結局失敗に終わった2015年イラン核合意を結んだ時期と、ガーセム・ソレイマニの名が世間に知れ渡った時期が一致したのは、偶然ではない。ソレイマニは核合意を勝利と捉えていたのであり、ドナルド・トランプがイラン政府からその勝利を奪い取るため、あらゆる手を尽くしたことは、究極の制裁であった金曜日の空爆も含めて大きな功績であった。

今後の見通しについて、悲観論者の意見はこうだ。イランは報復に出るだろう。事態はエスカレートし、第三次世界大戦が迫っている。だが悲観論者は2つの点を見落としている。第一に、イランはこれまで40年にわたって文明世界との戦争を繰り広げてきた。だが最も被害を受けているのは、他ならぬイラン国民自身だ。第二に、何事も回避しようと思えば回避できる。良識のある人なら戦争など望まない。中東では既に、あまりにも多くの子供たちが戦争の犠牲になっている。サウジアラビア政府が金曜日に出した声明の通り、今は自制すべき時であり、緊張状態を悪化させるだけの行動は控えなければならない。ガーセム・ソレイマニはプライド過多を患っていたが、イランにも同様の症状が見られるときがある。だが今は、プライドを飲み込んで交渉の席に着き、未来へ向けた合意を結ぶ時だ。イランが尊厳を保ちながらも、平和と和解の精神を受け入れ、国際社会での地位を取り戻すことができるよう、一致点を見出さなければならない。

Twitter:@FaisalJAbbas

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