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なぜ「グリーン」が新たな主流となるのか

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06 Jan 2020 12:01:52 GMT9
06 Jan 2020 12:01:52 GMT9

壊滅的な結果をもたらす気象現象が増加している。例えばカリフォルニアやオーストラリアの山火事、大西洋沿岸のハリケーン、太平洋沿岸のスーパー台風、アフリカの広大な地域の干ばつによって多くの命や財産が失われている。 

これに保証を支払わなければならない保険会社は、保険契約を結ぶ業界や投資する業界をますます選別するようになっている。石炭は追いやられ、石油やガスも厳しい目が向けられている。欧州投資銀行などの国際的な事業者は、すでに炭化水素事業を融資対象から除外している。

 

マドリードで開催された国連の気候変動枠組条約締約国会議では、合意を得ることができず、世界最大の経済大国が不在の状況で、炭素価格の枠組み合意に達することがいかに難しいかが示された。2018年、ドナルド・トランプ大統領は気候変動に関するパリ協定から離脱すると発表している。

若者とその考えに共感した親たちは気候変動への無関心を危惧するのも当然だ。17歳のスウェーデン人活動家グレタ・トゥンベリさんは数百万人の若者を刺激し、毎週金曜日に学校に行く代わりに共に環境のために抗議しようと呼びかけている。昨年、環境団体「エクスティンクション・リベリオン」の運動がいくつかの大都市を麻痺させた。

団体はこの問題を選挙にも波及させた。最近の欧州の選挙では、グリーンアジェンダが他の多くの関心事のトップになっている。スイス、オーストリア、スウェーデンでは緑の党の波が議会に押し寄せ、地方選挙でも躍進した。既存の大政党はすぐさま緑の外套を身に着けた。バイエルン・キリスト教社会主義同盟の超保守的な指導者マルクス・ゼーダーが木を抱く姿が、集合的な記憶に染みついているに違いない。彼はここぞとばかりに新たなグリーンアジェンダを掲げ、首相の座もそう遠くはなさそうだ。欧州委員会の委員長に就任したウルズラ・フォン・デア・ライエンは、2050年までに欧州を初の「気候中立大陸」とするべく「グリーンディール」を掲げて話題をさらった。

それ故、9月にセバスティアン・クルツがオーストリア議会選挙で勝利した後、ヴェルナー・コグラー率いる緑の党と連立を組むことを選び、首相に返り咲くことにも驚きはない。

マドリードで開催された国連の気候変動枠組条約締約国会議では、合意を得ることができず、世界最大の経済大国が不在の状況で、炭素価格の枠組み合意に達することがいかに難しいかが示された。

コーネリア・メイヤー

この2つの政党の掲げるアジェンダはかけ離れているように見える。クルツの率いるオーストリア国民党 (OVP) は移民政策の厳格化を掲げ、企業優先、保守的な価値観を表明している。緑の党は左寄りで、主な議題は気候変動、環境保護、そして社会的公正だ。

OVPは閣僚13人中10人を抱え、明らかに連立の有力なパートナーだ。それにもかかわらず、新政権のアジェンダには、オーストリアを2040年までに気候中立国にすることを目標とする気候変動パッケージが含まれている。これはEUやイギリスの目標より10年早い。公共交通機関は電気に移行し、空の旅にはある程度の税金がかけられ、産業にはまだ詳細が未定の気候税が課せられる。ただし、ビジネスの議題は大部分がOVPの政策に影響を受ける。その代わり、緑の党は運輸、環境、エネルギー、技術、イノベーションのために新たに創設された強い権限を持つ省庁を獲得した。これは元環境活動家のLeonore Gewesslerが担当する。OVPのアジェンダは移民アジェンダでも勝利した。新政権は2019年5月に国会で可決された14歳以下の少女が学校でヒジャブをかぶることを禁止する制度を実施する。譲歩として、緑の党は統合省を持っている。この保守的な緑の党との連立政権は驚きもあるかもしれないし、その気候変動パッケージにはまだ穴や矛盾があるが、地域レベルでは先駆的だ。同連合は2013年からチロル州で、2014年からフォアアールベルク州で運用を始めている。

ドイツでも緑と黒(緑の党とキリスト教民主同盟)の連立はあり得ない話ではなくなってきている。緑の党の党員数は1990年から2000年初めにかけて変化した。それは連邦政府で社会民主党のゲアハルト・シュレーダー首相の下で初めて政権を握った頃だ。「ラテ・マキアート・クラス」と呼ばれる豊かで社会的関心を持つドイツ人は、10代の子どもたちが心配していることと同じように、緑の党とその政策にますます傾倒している。社会民主党の緩やかな崩壊と、彼らが左に流れていくさまは、有権者のまったく新しいトランしぇを解放し、緑の党が恩恵を受けるように見える。

I環境は、特に欧州では主流になっている。この流れに飛びついているのは若者だけではなく保険会社や他の業界も同じだ。気候変動への懸念だけでなく、冷静な経済的利益を求めて。流れはエコに向かっている。今後数年間はその状態が続く見通しだ。

  • Cornelia Meyerはビジネスコンサルタント、マクロエコノミスト、エネルギーの専門家です。Twitter: @MeyerResources
 
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