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レバノンは、ヒズボラから自国を救う英雄を必要としている

レバノンのティレで行われた選挙集会で、ヒズボラ指導者のサイード・ハッサン・ナスラッラー氏の支持者が旗を掲げる。(ロイター)
レバノンのティレで行われた選挙集会で、ヒズボラ指導者のサイード・ハッサン・ナスラッラー氏の支持者が旗を掲げる。(ロイター)
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19 Jul 2022 04:07:04 GMT9
19 Jul 2022 04:07:04 GMT9

レバノンのテロ組織ヒズボラの指導者であるサイード・ハッサン・ナスラッラー氏は先週、米国および中東での主要な同盟国に対して新たな警告を発し、レバノン国家とその国民に災いをもたらすかもしれない、来るべき戦争の可能性を示してイスラエルを威嚇した。

テレビ演説で彼は、7月2日にイスラエルの地中海沿岸のカリシュ・ガス田への無人機攻撃を試みたが、これはほんの始まりに過ぎないと述べた。「この方程式を書き記せ。我々はカリシュと、カリシュの先にあるすべて、そしてその先にあるすべてに至るだろう。もしレバノンが石油とガスを採掘して自国を救う権利を行使することを阻みたいのなら、誰も石油とガスを採掘できなくなる」と、ナスラッラー氏は述べた。

彼は軍事行動が、石油・ガス資源の権利を得るためのレバノン側の唯一の選択肢になると強調した。「今日の抵抗組織(レジスタンス)の実力は過去に例を見ないものであり、闘志はかつてないほど高まっている。我々は、陸、海、空における様々な能力を有しており、これらすべての選択肢を使う可能性が開かれている」と述べた。

この民兵組織の指導者の脅しはレバノン国内の分裂を拡大させ、彼の言葉が国民の総意と合致しないことから、まもなくレバノンの街角で紛争を引き起こす可能性が高い。ナスラッラー氏が無人偵察機と脅迫を送る一方で、レバノンとイスラエルの間では、米国の仲介により海上国境を決定するための交渉が続けられている。

いつものように、ナスラッラー氏は民兵の洗脳を強め、テヘランの恩人を喜ばせるために彼がいつも「大魔王」と表現する米国に非難の指をさす機会を用いた。ナスラッラー氏は、ジョー・バイデン米大統領の中東訪問と、彼のイエメンやウクライナに関する行動を批判した。

また、米国がイエメンに対して侵略行為を行い、地域諸国を道具として利用していると非難し、バイデン大統領なら簡単に戦争を終わらせ、包囲網を解除することができると力説した。

しかし、彼の激しい演説のわずか1日後、米国国務省は声明を発表し、レバノン・イスラエル交渉を促進するための米国の取り組みを改めて表明し、解決に向けて前進する唯一の方法は外交であることを強調した。「当政権は、レバノンとイスラエル、およびその地域により大きな安定と安全、繁栄をもたらす可能性を秘めた最終的な決断を下すための当事者たちの協議と開かれた精神を歓迎し、解決は可能であると信じている」と、声明は読み上げられた。

レバノンがナスラッラー氏とそのテロ政党を排除しない限り、平和、安全、希望は広がらないだろう。

ダリア・アル・アキディ

ナスラッラー氏がイスラエルに戦争を仕掛けたのは、イランの支援を受けたヒズボラが2人のイスラエル兵を誘拐し、テルアビブに軍事行動による対応を迫った2006年に遡るが、その代償はレバノン国民が支払ったものであった。彼のその身勝手さ、愚かさ、外国勢力への忠誠心により、1200人以上の死者を出し、建物や、橋、道路などのレバノンのインフラを破壊し、発電所を混乱させることになった。

しかし、この親イラン派の民兵組織指導者は、2022年は2006年とは全く異なるということを思い知るべきである。イスラエル軍は、戦闘機や、誘導ミサイル、無人機、潜水艦、軍用巡洋艦など、レバノンのような小国を一掃できるほどの装備を備えているのだ。

歴史、科学、文化、芸術が豊かなこの国は、いつまで自国民の血で手を染めた人物の人質であり続けるのだろうか。レバノン政府はいつまでナスラッラー氏の惨劇について黙っているのだろうか。

ベイルート港の爆発事故の犠牲者の血はまだ乾かず、傷の痛みも消えてはいない。

ヒズボラとその指導者の殺人、テロ、外国に対する敵意の責任を追及しようとする勇敢なレバノン人は1人もいないのだろうか。

そして何より、国際社会と人権団体は、この美しい国で起きていることからいつまで目をそらすつもりなのだろうか。

レバノンがナスラッラー氏とそのテロ政党を排除しない限り、平和、安全、希望は広がらないだろう。そしてその時初めて、レバノンの生活を愛する人々は、楽観さと野心に満ちた声を1つに合わせて、偉大な音楽家、故ワディ・エル・サフィの有名な歌「レバノン、天国のかけら」を唱えることができるのだ。

  • ダリア・アル・アキディ氏は、安全保障政策センターのシニアフェロー。

ツイッター:@DaliaAlAqidi

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