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ロシアへの傾倒を強めるイラン強硬派

ロシアのラブロフ外相とイランのアミール・アブドラヒアン外相。2022年3月15日、ロシア・モスクワ。(ロイター)
ロシアのラブロフ外相とイランのアミール・アブドラヒアン外相。2022年3月15日、ロシア・モスクワ。(ロイター)
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21 Jul 2022 05:07:30 GMT9
21 Jul 2022 05:07:30 GMT9

イラン政権とロシアとの軍事協力はイラン外交の重要な柱の1つであり、同政権が中東地域で孤立化し、圧力に直面するたびに、この協力関係が強化されている。

米国は先週、ミサイル発射が可能な最新型を含む数百台の無人航空機(UAV)をイラン政府がロシアに提供する計画があると発表している。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)によると、先月ロシアの代表団がイランの兵器搭載型無人機を検証するためにイラン中部の飛行場を数回にわたって訪れたという。

サリバン氏がCNNに「イラン政府がロシアに、武器搭載可能なUAVを含む数百機のUAVの提供を準備しているという情報を持っている。我々は、ロシアの公式代表団が最近、イランの攻撃用UAVの見本を受け取ったと見ている。我々は、ロシア政府代表団が6月に視察したイランのUAVを映した画像を公開する。この画像は、イランの攻撃可能なUAVの取得にロシアが継続的に関心を寄せていることを示唆している」

イランは、ロシア・ウクライナ戦争を悪化させることで政府に対する国民の怒りを増幅し、米国や中東の他の国々からの圧力も高まることになるため、このことを内密にしようとしたのだろう。同様に、ロシアも、政府がイランから無人機を購入しようとしているこことは、世界的な軍事大国としての自国のイメージにマイナスの影響を与える可能性が高いため、公表を避けたかったのだろうと考えられる。

イラン政権がロシアとの軍事協力を秘密裏に進めようとしたのは今回が初めてではなく、特に他国で進行中の戦争に関連する場合にその傾向がある。例えば、2016年には、イランは反政府勢力の支配下にあったシリアのある地域への攻撃のためにロシアがハマダン空軍基地を使用することを密かに許可した。そうすることでイランの指導者たちは自国の憲法の重要な条文に違反した。「イランに外国の軍事基地を設置することはそれが平和目的であっても禁止する」。第二次世界大戦以降、イランの国土を軍事活動の拠点とした外国勢力は他になかったので、これはイランの国民にとって驚きであった。

また、ロシアとイランは、中東地域における自国の利益を追求するためにそれぞれの軍事力を用いてきた。 例えばシリアでは、ダーイシュと反政府勢力に両国の利益が脅かされたとき、ロシアは空爆に頼り、イランのイスラム革命防衛隊とヒズボラなどの代理組織が、軍の前進に必要な地上戦力を提供した。

イランの強硬派とロシアは、中東地域の米国の外交政策に対抗し、頓挫させるという共通の目的を持つ。また、ロシアは、イランの強硬派(最高指導者ハメネイ師やイラン革命防衛隊幹部など)を他の政治陣営よりも重視しているようだ。理由は、彼らは西側と和解してロシア政府の世界的影響力を損なう可能性が低いからだ。

さらに、イラン強硬派とロシアは現在大きな圧力にさらされているためこれまで以上にお互いを必要としているようだ。イランは貿易を拡大し、米国の制裁を回避したい。ロシアは2月のウクライナ侵略後欧米から激しい制裁を受ける中、再び主導権を握りたいのだろう。イランとの緊密な関係はロシアの中東への影響力を拡大し、欧米の制裁解除を促すのに利用できる影響力をもたらす。

一方、ロシアとイランの間にはいくつかの相違点と競合関係もある。ロシアの主な懸念は、欧米がイランの石油・ガス部門を利用して(ロシアへの)エネルギー依存度を恒常的に低下させるのではないかということだ。イランはガス市場でさらに大きなシェアを求めており、欧米との提携を歓迎している。

ロシアとイランは、それぞれ世界第1位と第2位のガス埋蔵量を誇っている。イランと欧米の関係が改善されれば、旧ソ連諸国がイランにとってより良い石油購入の選択肢となる可能性があり、ロシアのイラン向け輸出(主に石油)を危険にさらすことになる。しかし、今のところ、イラン政権は賢くカードを使っている。欧米とロシアを互いに対立させることで、イランは中東地域の支配を進めようとしているのである。

欧米とロシアを互いに対立させることで、イランは中東地域の支配を進めようとしているのである。

マジッド・ラフィザデ

結論として、ロシアとイランの軍事的・政治的関係は中東における利害の合致と米国に対する反感の共有により、今後ますます拡大することが予想される。しかし、エネルギー分野での競争など、制限要因もある。また、ロシアはイランのライバルである他の地域大国との関係を壊したくない。そしてそういった国々との関係を守ることは、イラン政権とロシアの間に今後も障害を生じさせることになる。

  • マジッド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学で教育を受けたイラン系アメリカ人政治学者である。ツイッター:@Dr_Rafizadeh
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