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サウジアラビア皇太子によるフランス訪問の地政学的重要性

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28 Jul 2022 06:07:49 GMT9
28 Jul 2022 06:07:49 GMT9

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下によるパリ訪問は、中東が最近経験していた一連の例外的な外交行事に終止符を打つ重要な出来事である。

数日後には、ジョー・バイデン米大統領によるテルアビブや、エルサレム、ラマッラー、リヤド、ジェッダへの訪問があった。この訪問に対抗して、テヘランでロシアや、イラン、トルコの大統領との会談が行われ、その後、兄のシェイク・ハリーファ殿下の死後、UAEの大統領となったシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン皇太子殿下がパリを訪れている。

これら全ての外交的な騒動から、すでにいくつかの結論が導き出されている。その件に関して、言い残したことがある。例えば、パレスチナの問題は、もはや中東の優先課題ではないことは明らかである。もちろんサウジアラビアは、イスラエルを公式に承認する前に、パレスチナに独立国家を建設することに依然として強く賛成している。

むしろ、アラブ諸国との間でイスラエルを即時相互承認することを目的としたアブラハム合意の進展が議題となっている。

大きな新事実は、2015年にウィーンで締結されたイラン核合意が暗黙のうちに破棄された可能性が非常に高くなったことである。2021年夏、ドナルド・トランプ前米大統領が離脱した協定に復帰するために、米国の主導で交渉が始まった。関係者らは、誰もが納得する合意に至るかに見えた。

しかし、イランで新たに選出されたイブラヒム・ライシ大統領が協定に反発していることなど、障害が増えた。アメリカ人の間では、テヘラン政府が何としても話題にしたくないイランのミサイルの問題に関して意見が割れている。

イスラエルはウィーン協定に当初から根強く反対しており、ロシアはウクライナ紛争で忙しいため、前向きな決定を促すようなことは何もしてくれないだろう。このような状況下で、13日にジョー・バイデン大統領が中東に到着し、「米国は、来ることのないテヘランからの回答をいつまでも待つつもりはない」と宣言したのである。

新しい中東の姿が見えてきた。アメリカ大統領の努力も虚しく、アメリカはもはやかつてのような中東の保護者的存在ではない。信頼が欠けているのだ。

逆にロシアは、シリアでの悲劇の際にワシントンが失った、尊重されるべき地域の大国という席を代わりに埋め、その地位を確立している。トルコがこの地域で最も活発な勢力の1つとなり、イランが基準となる大国となり、そして明日には核保有国になっているかもしれない。昨日のパキスタンのように公に、あるいは密かに。

連合や永続的な同盟の概念はもう過去のものである。それは、アングロサクソン人が「包括的な外交」と呼ぶものの賜物だ。誰もが常に他者と交渉する何かを持っているが、誰も誰かに完全に依存することはできない。

アメリカ大統領の努力も虚しく、アメリカはもはやかつてのような中東の保護者的存在ではない。信頼が欠けているのだ。

エルヴェ・ド・シャレット

このことは、意外な結果をもたらすことがある。トルコのエルドアン大統領は、シリア北部に入植し、クルド労働者党(PKK)と連携するクルド人民防衛隊(YPG)を追い出すという計画への支援を得ようと考えてテヘランでのサミットに臨んだが、ロシア人とイラン人の反対に遭った。

その計画はアメリカや、ヨーロッパ、シリアからも歓迎されていないため、エルドアン大統領はより良い日を待つか、より控えめな目標で満足する必要があるだろう。

このような日々の外交にも欠点がある。テヘランに事実上の大国としての地位を与え、近隣諸国を不安に陥れながら、ゆっくりと、しかし確実に進行している核開発計画を放棄させる手段を、今日誰も持ち合わせていないのだ。

バイデン大統領はサウジアラビアの皇太子に招かれ、ヨルダン、エジプト、イラクが参加した湾岸協力会議の場で、地域の安全保障の新しい構造のアイデアを打ち出した。

彼の話は丁寧に耳を傾けられたが、若干の懐疑的な見方をされた。しかし、誰もがもはや漠然とした形の同盟など存在しないことを知りながら、そこから得られるものを得ることになる。この中東外交の一連の流れの間に何が起こったか。決定事項はほとんどなかったが、不安定な世界であることは広く認識されている。

今度は、サウジアラビアとフランスの番である。19日のムハンマド・ビン・ザーイド皇太子殿下によるパリ訪問や、22日のアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領のエリゼ宮でのサプライズ昼食会に続き、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が27日にフランスの首都に到着する。

これは、安全保障理事会の加盟国首脳の1人による初の公式レセプションである。したがって、すでに互いを知っており、有益なつながりを築くことができた2つのパートナーにとって、有意義なイベントとなる。

現在中東で繰り広げられている複雑な駆け引きにおいて、このイベントは、一方は湾岸・中東のアラブ諸国を代表し、もう一方はEUの最も有力な国を代表して、全面的に関与しようとする意思を確認する手立てなのである。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は間違いなく彼が期待しているもの、つまり、彼の役割と彼自身の国際的認知をパリで受け取ることになるだろう。

マクロン仏大統領は、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた事態の深刻さは、単なる地域紛争によるものではなく、独自の役割を持つ欧州が理解し、支援しなければならない世界規模の紛争によるものであることをムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下に納得させるよう努めるに違いない。

石油輸出国機構(OPEC)の範囲では、サウジアラビアが主導的な役割を果たし、原油生産量と市場価格に影響を与えることができる。同様に、11 月にインドネシアで開催されるG20会合でも、サウジアラビアの声は重要であり、正しい方向へと影響を与える必要がある。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下としては、米国から半ば無視されている、この地域が経験している不安定な局面において、イランの脅威に直面する可能性を含め、フランスと欧州が確実にサウジアラビアの側に立つように努めるだろう。

中東で影響力と配慮を高めているマクロン大統領は、最近のバグダッド会議のような地域会議の構想を打ち出し、イランとサウジアラビアの代表団が可能なロードマップの策定を含む協議のための具体案を進められるようにする予定である。

マクロン大統領は最近、ウィーン合意がイランの革命防衛隊(パスダラン)によって投げ出される前に実施するべきイニシアチブとして、地域会議の構想について話した。サウジアラビアはこのプロジェクトの決定的な要素になる可能性がある。また、シリアについて話すことも非常に有益で、リヤドがパリに有益な位置づけを与えることができるテーマである。

2022年3月に『フォーリン・アフェアーズ』(Foreign Affairs)誌が掲載した「中東はポスト・アメリカの秩序を求めている」という見出しは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下とエマニュエル・マクロン大統領のパリ会談の真の主題になる可能性が十分にある。

*エルヴェ・ド・シャレット氏は元外務大臣、住宅大臣。サン・フロラン・ル・ヴィエイユの市長、メーヌ・エ・ロワール県副知事も務めた。

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