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極右の宗教的国家主義者、イスラエルで実権掌握に近づく

2022年5月29日、旧市街で「エルサレム・デー」を迎える極右ユダヤ人グループ「ラハファ」(Lehava=炎)のデモ参加者ら。(AFP)
2022年5月29日、旧市街で「エルサレム・デー」を迎える極右ユダヤ人グループ「ラハファ」(Lehava=炎)のデモ参加者ら。(AFP)
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01 Aug 2022 12:08:56 GMT9
01 Aug 2022 12:08:56 GMT9

イスラエルが不安定な政治環境に置かれる中、11月の同国の選挙結果について議論し、予測することは、暑い夏の日に時間をつぶす一つの方法となる。多くの人々は、涼しく過ごすこと、パンデミック後初の海外旅行で混雑した空港を動き回ること、そして制御不能になりつつある生活費高騰の危機を乗り切ることで頭がいっぱいなのだ。

それでも、選挙戦の初期段階の今であっても、世論調査には少なくとも一つの憂慮すべき現象が一貫して見られる。それは、強いファシスト的傾向を持つ偏屈者としか言いようがない不愉快な人物らが率いる、超宗教的ナショナリズムの台頭である。

ベザレル・スモトリッチ(Bezalel Smotrich)氏が率いる宗教的シオニスト党は、直近の国政選挙以前から、イタマール・ベン・グヴィール(Itamar Ben Gvir)氏のカハニスト(Kahanist)運動体であるオツマ・イエフディット(Otzma Yehudit)勢力を取り込んできており、次期クネセト(イスラエル国会)での議席数は現在の6議席から2倍以上の13議席に増えそうなのである。

現首相派のグループが全120議席中17議席しかなく、その前任首相派のグループもわずか7議席しか有していないイスラエルの現状からすれば、この結果は今後数年の国の方向性に多大な影響を与える可能性がある。宗教的シオニスト党に関して言えば、イスラエルの民主主義やグリーンライン両側のパレスチナ人との関係にとっては悪い知らせとなる。

選挙戦は始まったばかりであり、国民は世論調査を利用して、リクードを中心とした他の政党に対し、もっと右に寄って、スモトリッチ氏とベン・グヴィール氏のスタンスに近づいてほしいというメッセージを送っているのかもしれない。

とはいえ、ベン・グヴィール氏の人種差別や同性愛嫌悪の発言が正当化され、人々が無記名投票で彼らに投票するにとどまらず、彼らのひどく不快な思想への支持をあからさまに堂々と表明していることも、極めて憂慮すべき兆候となっている。さらに悪いことに、世論調査では、ベン・グヴィール氏とスモトリッチ氏との政治思想的な違いは紙一重ではあるものの、もしこの2人のうちより過激とされるベン・グヴィール氏が党首であれば、投票所での同党の存在感がより増すことも浮き彫りになってきている。

宗教的シオニスト党における両氏の要素は、いずれも人種差別と偏見としてにじみ出ている。例えば2016年、スモトリッチ氏は、産科病棟でユダヤ系女性とアラブ系女性を隔離する考えを支持するとツイートした。自分の妻がパレスチナ人女性と産科病棟を共有した後、「私の妻が、あと20年もすれば、自分の子供を殺すかもしれない赤ん坊を生んだばかりの人の隣に寝たくないと思うのは当然のことだ」と書き込んだのだ。

スモトリッチ氏の歪んだ論理に従えば、彼は妻を一人部屋に滞在させるべきだった。なぜなら、ひょっとすると妻の隣のベッドの女性は、その宗教、国籍、民族が何であれ、殺人者だけではなく、強姦魔、銀行強盗、詐欺師、または将来汚職で起訴される首相を産むかもしれないからだ(もっとも、スモトリッチ氏は、後者と連合政権を共有しても問題ないだろうが)。

民主主義の価値観を尊重する国であれば、スモトリッチ氏の発言は、公職に就く資格はおろか、選挙で選ばれる人物の資格も失うに十分である。

今のところ、宗教的シオニスト党が選挙に勝つことはできないにしても、次の連立政権を作る上で極めて重要な存在になるかもしれない。

ヨシ・メケルバーグ

極右勢力は政治の主流派になりつつあり、そのメッセージ力をより洗練されたものにしてきている。1980年代に最大級の偏屈者とされた精神指導者メイル・カハネ氏が追放された後、極右はその動機を隠すことを学んだ。人種差別主義の直接的な暴言や、アラブ人やリベラル左派の意見を持つ人々がせいぜい二流市民になってしまうような、最も過激なユダヤ国家を押し付ける上で最後の障壁とみなされる高等裁判所の独立性を破壊したいという率直な願望の表現を和らげるようになったのだ。

このシオニズムの一派にとっては、イスラエルの主権に関する限りにおいてグリーンラインは存在しない。パレスチナ人はそのことを唯々諾々と受け入れるか、またはその重大な結果に直面するかのどちらかである。

自国の民主的な構造とプロセスの破壊に向けて突き進む他の新興ファシスト運動と同様に、彼らは権力を握る前に、支持者には十分に明確であるが、違法性の一線を越えない暗号的用語で話すことを学びつつあるのだ。例えば、「アラブ人に死を」という詠唱は「テロリストに死を」に置き換えられたが、彼らの頭の中では、これらのスローガンは交換可能なのだ。彼らが仄めかす「あれだよ、あれ」の言語領域では、支持者はその隠された意味を完全に理解しているのである。

皮肉なことに、ベン・グヴィール氏は現在の国会議員の中で唯一、有罪判決を受けた者である。彼は常にアラブ・パレスチナ系議員がテロを支援していると根拠なく非難しているが、彼こそがテロ組織支援と人種差別扇動の罪を問われ有罪判決を受けた。「アラブの敵を追放せよ」という看板と、「ラビ・カハネ(Rabbi Kahane)は正しかった。アラブ系国会議員は第五列(スパイ)だ」と喧伝するポスターを持っていたのだ。

さらに、彼はイツハク・ラビン元首相に対する扇動で重要な役割を果たした。1995年11月にラビン首相が暗殺される数週間前、ベン・グヴィール氏は初期のテレビ出演の際、同首相の車から盗んだ高級車キャデラックのエンブレムを振り回しながらこう自慢している。「我々は彼の車のところに行った。今に彼のところにも行くだろう」

これだけでは十分ではないかのように、ベン・グヴィール氏は、ヘブロンのイブラヒミ・モスクで29人のイスラム教徒の礼拝者を冷酷に殺害したテロリスト、バールーフ・ゴールドシュテインを恥ずかしげもなく崇拝しているのである。また、ベン・グヴィール氏は、エルサレムのシェイク・ジャラー地区でも行っているように、地元のパレスチナ人との緊張を煽る機会を決して逃さない。

今のところ、宗教的シオニスト党が選挙に勝つことはできないにしても、次の連立政権を作る上では極めて重要な存在になるかもしれない。その政治思想に賛同する政治家が、内務省や司法、教育、治安の各担当省を司ることを想像してみるといい。彼らが、アラブ系市民をさらに疎外したり、司法や教育制度を政治的に利用するための執拗な努力を強化したり、自由民主主義を信じる人々を悪者にしたりする法律の制定を要求する状況を想像してみてほしい。

恐怖を煽っているのではない。これは、宗教的シオニストの指導者たちが長年にわたって実際に公言してきたことであり、悲しいかな、イスラエルの政治と社会が現在、進んでいる方向性でもあるのだ。

・ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係学教授で、チャタムハウス中東・北アフリカ(MENA)プログラムのアソシエイトフェローを務める。国際的な活字メディアや電子メディアに定期的に寄稿している。ツイッター: @YMekelberg

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