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エジプトでのCOP27にチャールズ国王を出席させないことが間違いである理由

チャールズ国王は、環境保護活動に対する真摯かつ熱烈な支持者である。(AFP)
チャールズ国王は、環境保護活動に対する真摯かつ熱烈な支持者である。(AFP)
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05 Oct 2022 11:10:24 GMT9
05 Oct 2022 11:10:24 GMT9

先月、新しい国家元首と政府の長が立て続けに誕生した英国で、バッキンガム宮殿とダウニング街の間で憲法をかかわる問題が発生するのは必然だったのかもしれない。しかし、英国の2つの権力を二分すると思われる最初の問題が、気候変動であったことは残念だ。

11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催される気候変動会議COP27に、リズ・トラス首相がチャールズ国王に出席しないよう命じたことは、英国のメディアで大きく報道された。

トラス首相の事務局は当然、首相は国王に「命令」する立場にないことを指摘し、王室の表向きの説明では、国王がトラス首相の「助言」を受け入れて出席しないことに決めたことになっている。

この就任早々の対立の引き金となったのは、トラス首相が無意識のうちに強い君主制反対者だった大学時代に立ち返ったからかもしれない。あるいは、一部のアナリストが考えるように、関係の早い段階で、国の主導権を握るのは自分だという明確な線引きをしようとする首相の強い意志だったかもしれない。

いずれにせよ、チャールズ国王がその関心事である地域で開催される、その関心事である問題に関する、その関心事であるイベントへの参加を止められたのであり、それは間違いであるという事実は変わらない。

気候変動は、現実的で差し迫った脅威だ。英国ではこの夏6月、7月、8月の3回にわたって破壊的な熱波に見舞われたばかりだ。気温は観測史上初の40.3度を記録し、山火事の発生件数が200%増加、気象庁は非常事態を宣言し、3人が溺死した。これらはすべて気候変動に起因している。

チャールズ国王にふさわしい役割であるにもかかわらず、また、アラブ諸国や他の国の指導者に働きかけて、支持を得る新たなルートとなり得たにもかかわらず、国王に権限を与えない選択は、外交上の洗練と自信の欠如の両方を示している。

ファイサル・J・アッバス

英国の君主は政治に関与しないしきたりであるが、気候変動は政治を超えた問題だ。当時皇太子であったチャールズ国王は昨年、グラスゴーで行われたCOP26の開会式で演説し、亡き母エリザベス女王もスピーチを行ったばかりだ。昨年11月、英国政府の承認を得てエジプトを訪問したチャールズ皇太子は、アブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領とCOP27について話し合った。当時は許されていたのに、なぜ今駄目なのか?

生涯を通じてチャールズ国王は、環境保護運動や気候変動問題への対応策を真摯かつ情熱的に支持してきた。それだけではない、国王は、世界の多くの国々がその周りに団結できる人物でもあるのだ。少なくともアラブ諸国を代弁でき、湾岸諸国の王族と深い絆を持ち、イスラム教とアラブ文化への理解で広く尊敬を集めている。

世界中の何10億もの人々に見守られた、先月行われたエリザベス女王の国葬は、英国王室がいかに国のソフトパワー、イメージ、文化において重要であるかを示す典型的な例となった。一方、サウジ・グリーン・イニシアティブや中東グリーン・イニシアティブなどの取り組みにより、これまであまり環境問題に注目して来なかった地域でも、明らかに変化への機運・関心が高まり、資源が集まっている。

英国は、EU離脱の影響から始まり、新型コロナ感染症の大流行、ウクライナ戦争、そして生活費の高騰と続いた一連の打撃から回復しようとしているところだ。チャールズ国王にふさわしい役割であるにもかかわらず、また、アラブ諸国や他の国の指導者に働きかけて、支持を得る新たなルートとなり得たにもかかわらず、国王に権限を与えない選択は、外交上の洗練と自信の欠如の両方を示している。

英国らしくないことではないか?

  • ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長である。

Twitter: @FaisalJAbbas

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