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イランの民兵組織がデモに集まる人々をいまにも殺害をしている

テヘランの抗議行動に集まった人々。 (AFP/File)
テヘランの抗議行動に集まった人々。 (AFP/File)
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07 Nov 2022 03:11:38 GMT9
07 Nov 2022 03:11:38 GMT9

イラン政府は9月中旬に風紀警察の拘束中に若い女性が死亡したことをきっかけに始まった抗議行動の鎮静化を期待していた。しかし、この賭けは実を結ばなかった。抗議行動はこれまで以上に多く激しくなっている。鎮静化どころではなく拡大が続いている。

イランの若者たち、とりわけ女性たちは新たな世界の可能性を見いだしつつある。当局は脅しをかけ、何百人もの人々を殺害しているが、それでも人々は屈していない。

年老いたイランの聖職者エリートとイスラム革命防衛隊(IRGC)はもっと残忍な行動に打ってでる時が来たと考えているようだ。この動きはある警告から始まった。

IRGC司令官のホセイン・サラミ大将はこの抗議行動を「暴動」と称しているが、先週土曜日、「それも今日で最後だ」と述べた。この発言とは別に、主要都市の屋上に写る狙撃銃で武装したIRGC将校の写真が出回りはじめた。「国家の敵」を狙い撃ちにする準備ができたということらしい。

過去との類似性は疑いようがない。次に起こることはほぼ間違いなく必然だ。

過去10年間、イラン政権は中東全域に狙撃兵や暗殺者を送り込み、反体制派の人々を殺害してきた。

2009年の大統領選の不正疑惑に伴う抗議デモの際もそうだった。2019年に厳しい経済状況に抗議する大規模なデモが発生した際も再び同じことを行った。

イランは国外でも、特にイラクで同じことをしてきた。バグダッドやバスラでデモ中のイラクの若者を狙撃した犯人について、イラクの首相は「イラク政府は把握してはいたものの、自国兵士ではなかった」と認めざるを得なかったことがある。狙撃犯はイランの民兵組織の構成員だったのだ。

これからひどいことが起こるだろうが、デモ参加者の勇気に比べれば大したことはない。

アジーム・イブラヒム博士

新たな各報道で、こうした事件に一連の政治的な関連性があることがより鮮明になってきた。ニュースサイト「イラン・インターナショナル」はイランの民兵組織のイラク人戦闘員がイラン本国に移動を始めたと報じた。抗議行動をとっている若者の弾圧を支援するのが目的だ。最大150人の戦闘員がバグダッドからテヘランに空路で入国したという。

同サイトによれば、この民兵組織の戦闘員たちはハッシド・アル・シャビとカタイブ・ヒズボラの構成員とのことだ。前者は人民動員部隊(PMF)としても知られておりダーイシュと戦うために育成された民兵ネットワークで、イランの影響力が支配的でIRGCが主導する武装集団だ。後者はイラク国内で特に勢力を誇り暴力的なイランの民兵組織だ。こうした民兵組織の起源はIRGCの地域政策にある。民兵はイラン人将校が指揮し、戦場ではイラン政権の軍事物資を利用している。

こうした勢力のイラン本国への移動は、いま何が起きているのかを示す明確なシグナルだ。イラン政権は国外で民兵組織のスポンサーをしてきたが、それが現行体制を支えるための武力として持ち込まれつつあり、それは現行政権の暴力の歴史を裏付けるものに他ならない。

こうした民兵組織は以前から反体制派の弾圧に関与してきた。彼らはイラクとシリアでその残酷な戦術を磨き上げた。彼らは恐怖が有効な者には脅しをかけて押さえつけ、市民社会のリーダーは暗殺目標にする。

多くのイラクの若者たちは2020年にバスラやバグダッドでバリケードを築いたとき、自分たちが殺されるかもしれないとは思っていなかったが、民兵組織側の考えは違った。戦闘員たちはイラン政権の地域政策への反対派やデモ参加者を殺害する準備ができている。イラン国内で最高指導者の命令で人を殺害することに躊躇はないだろう。

イランでの抗議行動は崖っぷちに立たされている。政権は抗議行動を単なる一過性のものではなく、自らの生存を脅かす存在としてとらえ始めている。政権は必要な脅しをかけてきた。となれば次に来るのは武力行使だ。

これに耐えるのは容易ではないだろう。すでに何百人ものデモ参加者が殺害されたが、悲しいかな、さらなる死が待っている。民兵は単に威嚇のためだけにイランに配備されているのではない。抗議行動の関係者を殺害するために連れてこられたのだろう。

それが現実のものになる前に世界はこのことを理解しなければならない。暴力が発生しても混乱と大規模な抗議の中でかすみ、無視したり忘れたりするのは簡単かもしれない。一連の出来事の背景がひも解かれ、事実が確定されるまでには時間がかかるだろう。しかし、イランの外にいる私たちは政権のプロパガンダと嘘を見抜く準備をしなければならない。

イラン政権は大規模な武力行使の準備を進めている。目をそらさないのはオブザーバーの義務だ。そして、時が来たら、イラン指導層がいま準備を進めている、権力の座にとどまろうとする破滅的な賭けともいえる犯罪の代償を払わせなければならない。

イランの抗議活動に立ちはだかるのはこのようなことなのだ。デモ隊が楯突こうとしている政権の暴力的な性質だ。これからひどいことが起こるだろうが、デモ参加者の勇気に比べれば大したことはない。全世界も同じように勇気を示すべきだ。

  • アジーム・イブラヒム博士は、ワシントンD.C.のニュースラインズ・インスティテュート・フォー・ストラテジー・アンド・ポリシーで特別イニシアティブのディレクターを務めている。著書に “The Rohingyas: Inside Myanmar’s Genocide” (ロヒンギャ~ミャンマー虐殺の内実)(Hurst, 2017)がある。ツイッター:@AzeemIbrahim
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