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スモトリッチ氏の新たな役割、イスラエルを併合に近づける

スデロット市の宗教シオニズム党の集会で、イタマル・ベングビール氏、ベザレル・スモトリッチ氏の両国会議員。2022年10月26日(AFP)
スデロット市の宗教シオニズム党の集会で、イタマル・ベングビール氏、ベザレル・スモトリッチ氏の両国会議員。2022年10月26日(AFP)
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20 Jan 2023 04:01:08 GMT9
20 Jan 2023 04:01:08 GMT9

宗教シオニズム党の指導者たちが、連立交渉に準備不足で臨んだことに異論を挟む者はいないはずだ。彼らは自分たちが何を望んでいるのか、恐ろしいほどよくわかっており、西岸地区を併合し、その過程でパレスチナ人に対するユダヤ人入植者の優位を確立することによって、イスラエルとパレスチナ人の対立に対する二国家共存の解決策に終止符を打つという彼らの望みを容易にする条件を、強い信念をもって要求してきた。

この党を構成する派閥の代表者たちは、自分たちの歪んだイデオロギーに最も適した省庁、立法、政策を選んだが、ベンヤミン・ネタニヤフ氏が汚職裁判に直面し、連立を組む他に選択肢がなく、最も弱い立場にいたことをよく認識していたのだ。だから、彼らは自分たちの要求(以前は夢物語でしかなかった要求)を彼に無理やりにでもすべて受け入れるようさせてきた。ネタニヤフ首相は、政府内のこうした超国家主義的なメシア信仰の宗教勢力に全面的に譲歩することが、パレスチナ人や地域、イスラエルの最も親しい同盟国との関係にとっていかに破壊的であるかを十分に理解しているのだが。

彼の失策の中から最も害のあるものを選び出すのは簡単ではないが、ベザレル・スモトリッチ氏を財務省へ任命しただけでなく、国防省の大臣としてヨルダン川西岸地区の民政や、パレスチナ人との調整を担当させたことは、最も有害なことの一つである。

スモトリッチ氏はこの役割の中で、民政局とCOGATと呼ばれる占領地政府活動調整官組織の両方に対する全権を与えられている。このことがいかに無責任で有害であるかを十分に理解するには、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの民政局とCOGATの役割と責任の両方を掘り下げ、スモトリッチが何者でどんなイデオロギーを代表しているかを理解する必要がある。

まず、民生局とCOGATという用語は、最近の変更まで国防省の下にあった組織に当たるもので、西岸地区のパレスチナ人とユダヤ人に関する民間の問題を担当する軍事組織であるため、誤解を招く恐れがある。実質的には、55年以上にわたる軍事占領を促進するためのイスラエル国防軍の支隊である。ユダヤ人入植者にとっては、それらは彼らの存在感を強固にするが、パレスチナ人にとっては、イスラエルの軍隊を後ろ盾とする支配の道具である。

これらの政府機関は、土地管理、建築許可と建設、環境問題、その他ヨルダン川西岸に住むすべての人々の日常生活に影響を与える多くの自治体内の問題などに対して、ほぼ全権を握っているのである。さらに、COGATは労働許可証やその他のライセンスを管理しており、イスラエルは移動の自由というか、その欠如をコントロールし、イスラエル国内で生計のために働くことを許可したり禁止したりすることができるのである。

新政府の焦点は、パレスチナ人の家であれ、違法なユダヤ人居留地であれ、家屋取り壊しに関するこれらの組織の権限であることは間違いないだろう。そして、スモトリッチ氏がどの家を取り壊し、どの家を建てたいかは、かなり明らかである。

しかし、行政の仕組みを変えるだけでなく、誰にその責任を負わせるかということも問題である。スモトリッチ氏は、彼の名誉のために言えば、自分の意見を隠すような人ではない。そのため、なぜ彼の政治学が彼をこの仕事に最もふさわしくない人物にしているのかを示してきた。最初から、暴力の拡大、入植地拡大へのブレーキの解除、パレスチナ人の人権、市民権、政治的権利へのさらなる制限、あるいはそのすべてを意図していたなら話は別だが。

確かに、スモトリッチ氏は、そこに住むパレスチナ人に市民権を与えずにヨルダン川西岸地区全体を併合しようとする人々の中で最も強硬な人物の一人であり、これはアパルトヘイト体制を正式に制定するとしか言いようのない動きだ。

2005年には、イスラエルの公安庁シン・ベットの監視下に置かれ、イスラエルのガザ撤退をめぐる市民的不服従を組織した疑いで逮捕もされたが、不起訴処分となった。彼は主にアラブ人に対する人種差別的な態度で知られており、その典型的な例として、産科病棟でユダヤ人とアラブ人の母親を分けるよう要求し、非常に偏見に満ちたツイッターの暴言の中で、「あと20年もすれば自分の子供を殺すかもしれない赤ちゃんを産んだばかりの人の隣に、私の妻が寝たくないと思うのは当然だ」と発言していた。最近では、新政府は特定の人権団体に対して「行動を起こす」必要があると発言し、これらの団体を「イスラエル国家の存亡に関わる脅威」とレッテルを貼っている。

民政局やCOGATが占領下のヨルダン川西岸に住む人々に及ぼすことのできる力の結果は、その担当者の性格や、状況の悪化や紛争の激化の危険を考えると、自明となりつつある。これまで何度か、スモトリッチ氏に会い、その人柄や政治を理解しようとした人たちから、「政治的な脚光を浴びない彼は、ずっと現実的で理性的だ」と言われたことがあった。彼の極めてタカ派的で人種差別的なイデオロギーが本物か、日和見的なものかはあまり重要ではなく、本当に重要なのは、彼が公の場でどのように発言し、行動し、現場の状況にどのような影響を与えるかだ、というのが私の考えであった。

彼は産科病棟でユダヤ人とアラブ人の母親を分離するよう求めるなど、アラブ人に対する人種差別的な態度でよく知られている。

ヨシ・メケルバーグ

例えば、イスラエルの完全な支配下にあるエリアCで、すでに立ち退きの危機にさらされているパレスチナ人コミュニティの家を取り壊したり、入植者の入植地を合法化して地元のパレスチナ人との摩擦を増やしたり、治安部隊に圧力をかけて入植者の暴力やその他の違法行為に目をつぶらせたりすることを決めでもすれば、彼の任命はとんでもないことだろう。

スモトリッチ氏の任命で最も気になるのは、イタマル・ベングビール氏の国家安全保障相就任と同様、彼らの総合的な計算では、広範囲にわたるパレスチナ人との対立と流血が必ずしも最悪のシナリオではない、ということであろう。彼らの最良のシナリオは、パレスチナ人が屈服し、イスラエルの新政権のもとで、併合の進展が早まり権利が剥奪されるのが新しい現実であると受け入れることである。

しかし、彼らの政策が武力衝突につながれば、イスラエルは不相応な軍事力を行使することになる。彼らは、それによってパレスチナ人を屈服させる決定的な軍事的結果を期待している。その可能性こそが、何よりもまず、パレスチナ人に対して、そればかりかイスラエル自身と地域の安定に対して、スモトリッチとベングビール氏を邪悪で危険な存在にしている。

ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係論教授、チャタムハウスMENAプログラムのアソシエイトフェロー。国際的な文書や電子メディアに定期的に寄稿している。

ツイッター:@YMekelberg

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