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西側諸国と日本、ウクライナ戦争後に備えて関係強化へ

2023年1月31日、東京で共同記者会見を行うNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(左)と日本の岸田文雄首相。(AFP通信)
2023年1月31日、東京で共同記者会見を行うNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(左)と日本の岸田文雄首相。(AFP通信)
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06 Feb 2023 03:02:59 GMT9
06 Feb 2023 03:02:59 GMT9

今週のニュースでは、米国の債務上限問題、ウクライナでのロシアによる新たな攻撃の可能性、EUの新しいグリーン成長計画などが話題の中心になっている。

しかし、世界からの注目をほとんど浴びることがなかったものの、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が日本と韓国を訪問していたことも非常に重要な出来事である。

韓国訪問の行程も重要だったが、日本への訪問は特に注目に値するものだった。ストルテンベルグ事務総長は今週、日本が安全保障に新たに注力することは、日本が「平和のため」の「より良い」パートナーであることを意味すると述べた。そして日本による防衛費の倍増計画は、不安定な世界情勢の中で安全保障への関与を強化するという同国の決意を反映していると賞賛した。

日本は長い間、米国と非常に緊密な軍事的関係を築いてきた。しかし、潜在的に特に重要なのは、東京と欧州の結びつきが安全保障の面で発展していることである。

先月、岸田文雄首相によるフランス、イタリア、英国への訪問は、ウクライナ戦争後の安全保障関係の重要性を浮き彫りにした。欧州と日本の一部の政治家は、以前なら二者間の同盟は必要ないものと考えていたかもしれない。ところが現在、それは次第に不可欠なものと考えられるようになってきている。

ロシアと中国の結びつきが深まっていることは、日本と欧州の両方が懸念している。一方で、2017年から2021年にかけてのトランプ大統領就任は、米国がかつてのように信頼性の高い同盟国とは限らないことを示した。特に、来年の大統領選挙にドナルド・トランプ氏が立候補し、恐らくは勝利する可能性があることを考えれば、なおさらである。

さらに、東京と欧州の首都はこれまで、2019年の日EU包括的経済連携協定を含め、その関係を経済中心に捉える傾向があったが、これは変わりつつある。日欧の連携関係は、先月の安全保障問題をめぐる議論で明らかになったように、より広範な戦略的文脈で捉えられるようになっているのである。

日欧関係にとっては安全保障の問題がますます肝心になってきているが、経済や産業の問題も依然として非常に重要である。

アンドリュー・ハモンド

岸田首相の訪問中、日本と英国は、自衛隊と英軍の互いの国への配備を可能にする新しい「円滑化」協定に署名した。これは1902年以来、この二国間で結ばれた最も重要な軍事協定と評されている。

フランスでは、岸田首相がエマニュエル・マクロン大統領と議論した重要な議題には、ウクライナでの戦争や、パリが外交の優先軸にしようとしているインド太平洋地域における日仏の安全保障関係の強化が含まれた。

日本の民生用原子力産業ですでに活躍しているフランスは、日本の軍事産業における存在感を強めようと計画している。日本は最近、防衛予算を大幅に増額すると発表したのである。

一方でイタリアのジョルジャ・メローニ首相は、日本との新たな「戦略的パートナーシップ」の構築を目指していると表明した。安全保障面では、イタリアは最近、英国、日本と共同で人工知能を搭載した新型戦闘機の開発に着手した。

岸田首相は先月、もう1つのG7欧州加盟国であるドイツを訪問していない。だが、オラフ・ショルツ首相も親日派であることに疑いの余地はない。ショルツ首相は最近、就任後初のアジア公式訪問先に日本を選んだのは、ベルリンと東京の緊密な関係を考えれば「偶然ではない」と認めている。

日欧関係にとっては安全保障の問題がますます肝心になってきているが、経済や産業の問題も依然として非常に重要である。米国のインフレ抑制法に懸念を抱く欧州と日本は、エネルギー関連の安全保障や協力を含む多くの分野で連携を強化している。

昨年12月にEUと日本が結んだ水素に関する協力協定は、この分野における両国の強みを明確に示すものだ。それは、欧州特許庁と国際エネルギー機関が先月発表した共同研究でも明らかになった。水素に関連するすべての技術について、2011年から2020年の間に出願された特許を評価したこの研究からは、欧州と日本が世界のトップであることが判明したのである。

ストルテンベルク事務総長の今週の訪問、そして岸田首相の先月の訪問は、日本が2023年のG7議長国を務めることに主に起因する。ウクライナで戦争が続いていることから、欧州は、2023年がポスト冷戦時代においてG7の最も重要な年の1つになると考えているのだ。

冷戦中、G7がソ連に対して西側の経済的、安全保障的対応を調整したように、G7の重要性が増している可能性が高い。西側同盟諸国は、ロシアと中国が加盟するG20をあまり重視しなくなっているからだ。

G7が今年、有意義な成果を生む可能性については懐疑的な意見もある。とはいえこの西側同盟は、これまで危機の時にこそ力を発揮してきた。G7は、米国が金本位制からの離脱を決定した後の地政学的、経済的打撃の余波の中で1975年に発足した。その事実は、今日のような激動の時代にも目的を果たすことができる可能性を示している。

1970年代半ば、G7は当時の重要課題を管理する上で重要な役割を果たし、欧米の政策決定コミュニティへ日本を正式に参加させた。先見性と戦略性のある同様のアプローチが、2023年においても必要とされている。

  • アンドリュー・ハモンド氏は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス付属のLSE IDEASでアソシエイトを務めている。
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