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ロシア・ウクライナ戦争:欧州の指導者は自国民のことを考えて戦争を止めるべきだ

ハルキウで破壊された建物の前を歩く人々。2月24日、ロシア・ウクライナ戦争は開始から1年を迎える(File/AFP)
ハルキウで破壊された建物の前を歩く人々。2月24日、ロシア・ウクライナ戦争は開始から1年を迎える(File/AFP)
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25 Feb 2023 01:02:33 GMT9

ロシア・ウクライナ戦争は今週、急展開を迎えた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月21日、ロシア連邦議会で演説し、西側諸国がウクライナを利用してロシアを標的とし、「局地的紛争を世界規模の対立に作り変え」ようとしていると非難した。これとほぼ時を同じくして、アメリカのジョー・バイデン大統領はウクライナを電撃訪問し、その後ワルシャワでポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領と会談した。バイデン氏はプーチン氏の発言に対しては、ウクライナ支援を強化するという従来の立場を繰り返した。

また、ウクライナを支持する欧州各国も妥協はしないという公的立場を堅持し、アメリカによる政治的、道義的、および兵站面での支援と合わせて、ウクライナへの装備と最先端兵器の供給を強化している。

戦争開始から1年を迎えた現在、西側諸国はこの危機に論理的かつ現実的視点から対処するべきである。戦火に油を注ぐのではなく、協力して平和に向けた努力をすべきだ。戦争の影響は、戦地をはるかに超えてヨーロッパ各国に広がっており、そこに暮らす人々の安全を脅かしている。

ドイツのケルン経済研究所が先週発表した報告書は、2023年末までにウクライナ戦争によってドイツ経済が被る損失は6,000億ユーロ(6,360億ドル)に相当するとの結論を出している。最新のドイツのGDPに関する統計によると、エネルギー価格の40%の上昇に加え、国民1人当たりの損失は2,000ユーロに達する見込みである。ヨーロッパ一の経済大国であるドイツが戦争によってこれほどのコストを支払っているのだとすると、他のヨーロッパの国々の国民はどうなってしまうのだろうか。

したがって、私はEU加盟国およびイギリスの指導者たちに対し、針路を反転させるよう呼びかける。もし現在の路線を進み続けるなら、自国の経済と国民に深刻なリスクと破滅的な結果をもたらすことになるだろう。ウクライナの人々にも、自国や自国民にも大きな犠牲を強いる、外交上の思惑に駆り立てられた戦争の火に油を注ぐことに加担してはならない。

今になって振り返れば、事態を予期してロシア・ウクライナ両国間の危機への解決策を探るための国際的な枠組みを実現させ、損害を最小限に抑え、無辜のウクライナ国民が現在経験しているような惨めさや住む家もない状況を避けることは可能だったかもしれない。だがそのためには、紛争当事者双方の懸案事項を聞き取るとともに、スウェーデンとフィンランドの加盟を認めてNATOを拡大するといった挑発的な行動は避けるべきであった。

戦争に勝者はおらず、最大の敗者と言えば火消しに奔走せず紛争に肩入れする者たちなのだ。

ハラフ・アフマド・アル・ハブトゥール

言うまでもなく、これらの挑発的行動はロシアという熊を怒らせ、その結果ロシアは自国の安全と主権に対する権利だと考えているものを守るために努力を惜しまず、戦略および通常核兵器を含むあらゆる手段を用いるだろう。見通しは明るいとは言えない。攻撃の応酬が続けば、世界規模の核戦争に発展する可能性もある。

よって、私はEU加盟国およびイギリスの指導者たちに対し、戦争が一般に自国と世界にもたらす負の影響から学ぶよう呼びかける。戦火を逃れてウクライナを出た人の数は800万を超えた。失業率が上昇し、燃料や電気、食糧といった必需品の価格が急騰する中で、ヨーロッパの人々の生活はパニックに陥っている。

この冬は平年と比べて暖冬だったため、ヨーロッパ各国の人々は幸運であった。暖房の需要が減ったため、エネルギーへの出費を抑えることができた。昨年、エネルギー価格はロシアが欧州向け石油・天然ガスの輸出をカットしたことで未曽有の水準にまで高騰した。欧州の指導者たちは、自分たちの究極の責務は自国民のまっとうで安全な生活を保障することであって、その安寧を脅かすことではないと気づかないのであろうか。彼らは有権者に対し、国民の命運がロシアとウクライナ戦争の前線で決定されてしまう状況を、どう正当化するのだろうか。

最悪のシナリオとして、欧州のすべての国家は世界中で悲惨な結末をもたらすだろう破滅的な第3次世界大戦に突き進む準備はできているのだろうか。戦争が2年目に突入し、我々の最大の懸念はそれがさらにエスカレートして手に負えなくなり、言語を絶するような帰結を生むことである。その時には、もはや取り返しはつかない。

この文章は、EUとイギリスの首脳に宛てた公開書簡である。あなた方は自国民と故郷の利益のために働くべきだ。彼らの苦しみを見てほしい。国民の資産と国の資金を外交議題につぎ込むのは終わりにしなさい。戦争終結が、最優先課題であるべきだ。軍事物資を供給し、一方の肩を持つのではなく、ロシアとウクライナの和解と合意の追求に最大の努力を捧げるべきだ。紛争を加速させ過ぎれば何が起きるかを考えてほしい。その結果、努力が裏目に出て真っ先に自分たちがすべての損害を引き受けることになるかもしれないのだ。

ヨーロッパ諸国民は、人道的感情と他者への思いやりを持って踏みとどまっているものの、悲惨な経済・生活状況の重荷にその足元はふらついている。あなた方政治家が馬鹿げた政策を追求している間、彼らはずっと沈黙を守るだろうか?責任ある指導者は、何よりもまず自国民の利益と快適さのために努力しなければならない。そのような指導者は、自分の冒険や過ちのつけを自国民に払わせるようなことはしないだろう。

今日、あなた方は自国の利益より、他国の利益を優先している。平和の草分けとなり、あなた方を攻撃し、破壊しようとする者たちの前に立ちはだかる堅固な壁となるべきだ。戦争により、予想をはるかに上回る破壊が起きただけでなく、すでに数万人が犠牲となり、罪のない数百万人が住む場所を失ったのだ。

あなた方に呼びかける、ロシア・ウクライナの真摯で長期的な和解のために努力してほしい。両国ともこれを歓迎すると私は確信している。戦争に勝者はおらず、最大の敗者と言えば火消しに奔走せず紛争に肩入れする者たちなのだ。

  • ハラフ・アル・ハブトゥール氏はアラブ首長国連邦の優秀な実業家であり著名人。国際政治関係への洞察、慈善活動、平和を促進する取り組みで知られている。外国で長年にわたって自国の非公式アンバサダーとして活動してきた。
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