Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

サウジ・イラン合意は新時代の前兆となるか

Short Url:
16 Mar 2023 08:03:06 GMT9

サウジアラビアとイランが、7年間の国交断絶と長年の対立を経て、外交関係再開で合意したことは、地域全体そして世界に希望をもたらした。

外交関係の正常化が、緊張緩和および対話と外交による紛争解決への第一歩となることを多くの人が期待している。しかし、この地域大国間の国交再開がイランの地域政策に重大な変化をもたらす可能性はどれほどあるのだろうか。今回の合意は、結局イランの地域的行動を変えることができなかった過去の取り決めとどの程度異なるのだろうか。

サウジアラビアと他の湾岸協力会議(GCC)諸国は、イランとの紛争に対処するには外交が望ましいと一貫して強調しており、最近では、リヤドのGCC本部で開かれたイランに関するGCC米国ワーキング・グループの会合後、2月15日に発表された声明でそのように主張している。このグループは、イランの核計画、弾道ミサイルや無人機、地域活動などに関して、イランに対する米国とGCCのアプローチを調整するために2015年に設立された。

サウジアラビアおよびGCC全体とイランの間の外交の試みは、これまでにも何度か行われてきた。その中には、他と比べてより持続的で成功したものもあった。

アクバル・ハーシェミ・ラフサンジャニ大統領時代(1989~1997年)には、サウジアラビアとイランは広範な外交に従事し、対話の共通の基盤を確立し、地域の緊張緩和と2国間の親善に寄与した。

その進展に基づき、モハマド・ハタミ大統領時代(1997~2005年)には、サウジアラビアとイランの間で、1998年5月に署名された「経済、貿易、投資、技術、科学、文化、スポーツ、青年の分野における協力のための一般協定」と、2001年4月に署名された「安全保障協力協定」の2つの協定が締結された。

2007年12月、マフムード・アフマディネジャド元大統領はGCCの年次サミットに招待され、そこで融和的な演説を行った後、最初の任期中に数回の外交を行った。しかし、イランの地域政策は、2009年に始まったアフマディネジャド元大統領の2期目に大きく変化し、より攻撃的で干渉的なものになった。2期目は、「緑の革命」として知られている、流血の事態に発展した、不正選挙を非難する抗議行動と告発で始まった。2人の野党候補を含め、多くの人が死亡・負傷し、逮捕された。

国内での激しい反発と政権の正当性に対する異議に直面していた当時のアフマディネジャド強硬政権は、2011年初頭のいわゆる「アラブの春」の蜂起を利用した。シリアでは、イスラム革命防衛隊、特にコッズ部隊の指導の下、レバノン、アフガニスタン、イランから宗派の民兵を動員し、平和的な反対運動を武力で抑圧するアサド政権を支持した。イランは他の地域でも同様の戦術をとり、ある時期にはアラブの4つの首都を支配していると豪語していた。

中国の役割は、国交回復後の次のステップの成功に貢献する可能性のある新しい要素だ。

アブデル・アジーズ・アルワイシェグ博士

ハッサン・ローハニ大統領時代(2013~2021年)、GCCはそれでも外交の試みを続け、イランと実質的なやり取りや会議を行い、対話の基礎として国際法と国連憲章を重視することを含む、関与のためのより信頼できる新しいルールを確立することを目指してきた。

イブラヒム・ライシ現大統領の下、GCC加盟国は、オマーンとイラクでのサウジアラビアとイランの会談を含め、同じ目的で議論を続け、今月10日の北京での合意発表への道を開いてきた。

北京会談のサウジアラビア代表であるムサエド・ビン・ムハンマド・アル・アイバン国家安全保障顧問による合意発表後の声明では、この合意がイランとの善隣関係、地域と世界の安全と安定の強化、そして意見の相違を解決するための「対話と外交の原則」の採用につながることへの期待が表明された。

サウジアラビアは、この合意が、国家の主権の尊重や内政不干渉を含む「国連憲章とイスラム協力機構憲章の原則と目的、および国際条約と規範」へのコミットメントに基づく新たな章の始まりを告げるものになることを明確に望んでいる。

このように、GCCや他の加盟国がそれまでに発してきたメッセージには明確な継続性があり、国際法や地域の国家間の関係に関する条約と慣習に特に重点を置いてきた。

サウジアラビアは、この合意が建設的な対話の維持に役立つことに期待を示している。

直接、あるいは地域の代理者や協力者を通じて長年にわたりサウジアラビアに対し敵対行為を行ってきたイランが、サウジアラビアとの外交再開に突然シフトした理由はたくさんある。サウジアラビアは過去数年間、何百回ものミサイル攻撃や無人機による攻撃を受けてきた。都市、空港、石油施設は、そのような攻撃の頻繁な標的となった。欧米の制裁は、イランが無制限に拡大する能力を制限することに貢献し、また、地元の不安もその心変わりの要因となった。強硬派が手を広げ過ぎたことで、イラン政府の政策によって打撃を受け、貧困に陥ったイランの住民を養うことができなくなっていた。

GCCの防衛軍や、米国の第5艦隊、統合海上部隊を含む多くの湾岸諸国の広範な軍事的プレゼンスも、イランの軍事的選択肢を減らしていた。

他のGCC諸国とイラクによる外交努力も、両国が関係再開に至るのを後押しした。

しかし、この突破口を開く上で、習近平国家主席と王毅氏ら最高顧問の個人的な関与を通じて、中国が果たした役割は大きかった。

双方は、将来における中国の「継続的かつ前向きな」役割への期待を表明した。その役割こそが、国交回復後の次のステップの成功に貢献する可能性のある新しい要素である。中国はサウジアラビアとイランの両方と緊密な関係にあり、非常に目に見える形で外交的威信を賭けている。

今後数週間から数カ月の成功は、イランが国際的に受け入れられている国家行動の原則に従って、地域政策をどれだけ変更するかによって測られることになる。たとえば、イランは、イエメンに武器を送るのを止め、イエメンの法律と憲法、および国連決議に従って、イエメン人が交渉の場で意見の相違を解決できるようにするだろうか。

レバノンでは、何カ月にもわたる遅延と、武力と脅迫によってイランとヒズボラの支持者を大統領に据える試みの後、議会による新しい大統領の選出を許可するだろうか。

イラクでは、イラク領土と対ダーイシュ国際有志連合に対するミサイルや無人機による攻撃を止めるだろうか。

このように多くのことが成功の指標となるが、オブザーバーやキープレーヤーは今後、イラン政府が先週北京で交わした約束を果たすかどうかに注目していくことになる。

アブデル・アジーズ・アルワイシェグ博士は、 GCC政治・交渉担当事務次長で、アラブニュースのコラムニスト。本記事で述べられている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を代表するものではない
Twitter: @abuhamad1

特に人気
オススメ

return to top