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コロナウイルスの経済的影響 数ヶ月にわたって続く見込み

中国・湖北省中部の武漢にあるウォルマートの店舗入口で、客の体温を測る従業員。(AP)
中国・湖北省中部の武漢にあるウォルマートの店舗入口で、客の体温を測る従業員。(AP)
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04 Feb 2020 09:02:16 GMT9
04 Feb 2020 09:02:16 GMT9

世界保健機関(WHO)は木曜日、コロナウイルスの発生について、公衆衛生上の緊急事態であると宣言した。月曜日現在で14,300件以上の症例が確認されており、少なくとも361人が亡くなっている。これによって感染者数はSARSのそれを超えたが、これまでの死亡率は2~3%であり、SARSよりもかなり低い水準に留まっている。

中国政府は、1,100万の人口を抱える武漢市とその周囲の諸都市の封鎖を見事にやってのけた。コロナウイルスは当初、人々が家族に会うため遠くに出かける中国の春節を直撃した。おそらくはこのことで、病気が国中に拡散することとなった。現在では、すべての省で患者が確認されている。これまでに、海外への拡散は抑制されている。日本、タイ、オーストラリア、シンガポール、台湾、韓国では最も多くの患者が確認されており、その数は10人から20人程度となっている。

人間に起こる悲劇的事態に加え、経済的な影響は本物である。月曜日、春節のお祝い以来はじめて中国市場が開き、8%弱低下した。香港市場は先週6.5%低下し、月曜日に少しだけ回復した。

2003年のSARS発生は中国の経済成長を2%押し下げたが、コロナウイルスの影響はさらに大きくなると予測できる。中国は当時、今ほど世界経済と結びついていなかったからだ。2018年、中国の貿易額は25兆ドルに少し足りない程度であった。中国はグローバルなサプライチェーンに統合されており、とりわけそれは自動車やテクノロジー産業において顕著だ。ひとつの例として、AppleのiPhoneのほとんどすべてが中国で製造されている。世界の500大企業のうち300社が、今回の発生の中心となった武漢市で営業を行っている。

中国では数千の国内線や国際線のフライトが欠航となった。ロシアは、中国との間で政治的・経済的な関係改善を享受しつつあったが、4,200キロメートルに及ぶ中国との国境を封鎖した。中露の貿易額は1,000億ドルに及んでおり、これは2024年には倍増すると見込まれている。ロシアは依然として石油やガスをパイプライン経由で輸出しているが、その他の貿易は実質的に停止している。

世界経済は、周囲との関係を断つ世界第二の経済大国の影響を体感することになるだろう。この影響は、航空業界や観光業界に留まらない。中国はグローバルに結びついたサプライチェーンの要であり、そのことはコロナウイルスの影響が世界中の製造業で数ヶ月にわたって感じられるだろうということを意味する。

原油価格に大きな連鎖反応があるのは、人々が旅行をやめ、モノが生産・運搬されなくなるときだ。ブレント原油の価格は1月6日時点の1バレルあたり68.9ドルから、月曜日のヨーロッパ市場の午前中の取引では56.2ドルにまで暴落した。これは、通常は価格に上方圧力を与えていたであろう同期間中のリビアの原油生産量の激減に鑑みると、大きな減少である。

中国はグローバルに結びついたサプライチェーンの要であり、そのことはコロナウイルスの影響が世界中の製造業で数ヶ月にわたって感じられるだろうということを意味する。

コーネリア・マイヤー

ウイルスが抑制されず、旅行や貿易が再開しない限り、見通しは暗いままだ。情報源によって変動するが、専門家らは中国の精製所の稼働が10〜40%少なくなると見込んでいる。S&Pグローバル・プラッツ・アナリティクスによると、世界の石油需要は今後2〜3ヶ月にわたって20万BPD(1日あたりバレル)程度低下する可能性があるという。これは、2020年の推定成長需要の15〜20%に等しい。

コロナウイルスの発生は、米国と中国が通商交渉の第一段階を終えた直後に始まった。これは、大いに必要とされていた小休止をもたらすものと思われた。米中貿易戦争は、中国の成長統計や石油価格に不利な影響を与えた(コロナウイルス発生以前、中国経済は2020年に6.1%成長すると予測されており、これは30年間で最低の成長率となっていた)。

OPECは石油価格の急激な低下を憂慮している。

サウジアラビアは、OPEC加盟諸国と10カ国の非OPEC加盟国ながら友邦である諸国とで構成される、OPEC+会議の前倒しを望んでいた。この会議は、OPECが昨年12月に決定した170万BPDの生産カットをどう進めるかについて議論するもので、3月初頭の開始が予定されており、3月31日まで続く。

OPEC+は2016年12月から、市場が逼迫したときも供給過剰に直面したときも、市場を均衡させることに大いに成功してきた。現在の状況は、きっと協議の十分な理由となる。アナリストの中には、OPEC+は石油価格を安定させるためにさらに50〜100万BPDの生産カットの実行が必要になるだろうと推定する者もいる。コロナウイルスに関する懸念は、今後数週間にわたって無くならないであろうし、その経済的な影響は少なくとも数ヶ月続くであろう。

  • コーネリア・マイヤーは、ビジネスコンサルタント、マクロエコノミスト、エネルギー専門家。Twitter: @MeyerResources

免責事項:本稿の著者が述べる見解は著者自身のものであり、必ずしもArab Newsの立場を反映しているものではありません。

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